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第10回〈連載について〉
ゲノム解析結果を出発点とした病態解明や治療法開発
筆者:尾崎紀夫
(名古屋大学 精神疾患病態解明学 特任教授)
ポイント
●「治療法開発」には「病気の原因や病気のしくみを明らかにする」=「病態解明」が重要です。
●病態解明につながるゲノム解析を行っています。
●ゲノム解析の結果をもとに、病態解明や治療法開発をiPS細胞も用いて進めています。
●精神疾患の研究を進めるには、当事者・家族の声が重要です。
▼「病態解明」と「治療法開発」の重要性
前回千人以上の当事者・家族に「どのような研究分野の発展を望んでいるのか」を聞いたところ、最多の2つは、
「病気の原因や病気のしくみ(病態)を明らかにしてほしい」
「新しい治療法を開発してほしい」
だったとお伝えしました。
私達もこの2つの精神疾患研究は特に重要と考えています。
その理由を説明します。
●病気とは
病気は本来、病態、症状、経過、診断方法、治療方法、病変臓器の組織所見が揃って、初めてはっきりと定められるようになります。
たとえば感染症では、細菌やウイルスといった病原体が体内に入り、免疫の力が不十分だと体内で病原体が増えて、症状が現れます。
診断には病原体の有無を調べ、抗生物質などで治療します。
また病原体が増えた部分の臓器所見も確認できます。
●神経梅毒
感染症で、かつて主要な精神疾患の1つだった神経梅毒。
1910年代のドイツでは、精神科病院の10%以上を精神症状を伴う神経梅毒が占めていたようです。
しかし…