第16回〈連載について→コチラ〉
ライフスタイルをもっとアクティブに
筆者:陳冲(チン・チョン)
(山口大学大学院 医学系研究科 高次脳機能病態学講座 助教)
今月号のPOINT
●運動は脳と心の健康を支える重要な要素です。
●運動だけでなく、睡眠や栄養などのライフスタイル全体のバランスが大切です。
●大きなライフイベントやストレスが多い状況でも、運動を生活に取り入れることが健康を保つ鍵です。
この連載では「脳が運動を求めている」というテーマで運動をおすすめしていますが、最大の効果を得るためにはライフスタイル全体を考える必要があります。
▼ライフスタイル全体の重要性
この点について、私の共同研究者であり、一般書『頭を良くしたければ体を鍛えなさい-脳がよろこぶ運動のすすめ』(中央公論新社)の共著者でもある早稲田大学の望月泰博博士の研究を紹介します。
望月博士は運動疫学研究で使用される「等時間代替モデル」を使い、20~79歳の一般住民約2万人のデータを解析しました。
このモデルは特定の時間を他の活動に置き換えて、その健康影響を評価するものです。
望月博士は、運動と睡眠の時間を置き換えた際のメンタルヘルスの変化を調べました(文献1)。
▼幸福度が高いのは
その結果、
睡眠時間が約7.5時間未満の人は、運動するよりも運動の時間を減らして睡眠を増やしたほうがうつ症状が少なく幸福度が高いことがわかりました。
一方、
睡眠時間が7.5時間以上の人は、さらに睡眠を増やすより、運動をしたほうがうつ症状が少なく幸福度が高いという結果が得られました。
この研究から…