第5回〈連載について〉
一人ひとりに合った薬物療法を!
個別化医療の実現にはゲノム解析が必要
筆者:夏苅郁子(やきつべの径診療所)
ポイント
●現在の精神科薬物治療は、一人ひとりの薬の代謝や特性に対応しているとは言い難い
●ゲノム解析により、個人の薬の代謝や効き方を調べることができる
●精神科でも、がん治療のような個別化医療は夢ではない
現在の精神科薬物治療に満足していますか?
皆さんは、現在の精神科薬物療法をどのように考えておられますか?
講演会で「自分が今のんでいる薬は、本当に自分の病気に合っているのか?」と質問されることがよくあります。
初対面の私に聞きたくなるほど、精神科の薬物療法について疑問を持っている当事者の方が多いということがわかります。
私は「人が回復するには、人薬(ひとぐすり)と時間薬が必要」だと思っています。
でも不眠や不安、焦燥感、興奮や妄想などをかかえていては「人薬」に触れることさえむずかしいことがあります。
「人薬」と「時間薬」をじょうずに活かすためにも、「その人に合った薬物療法」(個別化医療)がとても重要だと考えます。
今回は、個別化医療の実現になぜゲノム解析が必要なのかをお伝えします。
なお「ゲノム」とは、個人の遺伝情報を指します。
くわしくは日本精神神経学会のホームページ「こころの病気と遺伝を訊く」を参考にしてください。