第14回〈連載について→コチラ〉
治療プログラムとしての運動療法の現在
筆者:陳冲(チン・チョン)
(山口大学大学院 医学系研究科 高次脳機能病態学講座 助教)
今月号のPOINT
●精神科臨床では、現時点で薬物療法や精神療法を行わずに運動療法のみを推奨する治療ガイドラインはありません。
●比較的軽症の高齢者のうつ病に対しては、運動療法が推奨されています。
●認知症の認知機能障害や日常生活動作の改善に、運動療法が推奨されています。
運動は脳や心にさまざまな効果があることが知られていますが、残念ながらこの連載を書く時点(2024年6月時点)において、実際の精神科臨床では、薬物療法や精神療法を行わずに運動療法のみを推奨する治療ガイドラインは、いまだに存在しません。
▼うつ病
「日本うつ病学会治療ガイドラインⅡ.うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害 2016」(2024年3月1日一部修正)では、
「運動を行うことが可能な患者の場合、うつ病の運動療法に精通した担当者のもとで、実施マニュアルに基づいた運動療法が用いられることがある」としつつ、「まだ確立された治療法とはいえない。運動の有効性については今後も慎重に見極めて行く必要がある」とされています。
◆高齢者のうつ病
一方、日本うつ病学会の「高齢者のうつ病治療ガイドライン」(2023年9月1日一部修正)では、「比較的軽症の高齢者のうつ病に対しては、運動療法の有効性および安全性が示されており、行うことが望ましい」とされています。
しかし…