第9回 (※連載について→コチラ)
精神疾患と身体疾患を同時に伴いやすい遺伝性疾患
(ゲノム情報関連疾患)
著者:尾崎紀夫(名古屋大学 精神疾患病態解明学 特任教授)
※尾崎先生より:当事者・ご家族へ。精神医学研究へのご意見・ご希望をぜひお寄せください。
http://prenatal.nupsy.jp (ログインID:nagoya-u パスワード:sk25ugsk を打ちこんでログインしてください)
▼今回のポイント
◦特定のゲノム情報があると、同時に精神疾患と身体疾患になることがある
◦22q11.2欠失は、同時に精神疾患と身体疾患になりやすい(統合失調症の0.5%)
◦検査により得られたゲノム情報を、診療に活かすことができつつある
◦ゲノム情報を起点に精神疾患と身体疾患の発症メカニズム解明と治療法の開発研究を実施している
(22q11.2欠失の読み方:「にじゅうにきゅーいちいちてんに」けっしつ)
▼特定のゲノム情報による精神疾患と身体疾患の合併
前回(2023年3月号)、精神疾患の遺伝に関するホームページを紹介しました。
そこでは、日本語の遺伝は親から子に伝わるイメージが強いので、誤解を避けるために、個人の遺伝情報は「ゲノム」と呼ぶこと。
また、ある特定のゲノム情報があると、一定の確率(100%ではない)で、精神と身体の病気や、薬の副作用が起こりやすくなることなどを載せてあります。
一般には「遺伝性疾患」といわれますが、発症に関わるゲノム情報は「親から子に伝わる」だけでないので「ゲノム情報関連疾患」と呼びます。
そして、その中には精神疾患と身体疾患を同時に伴いやすいものがあります。
▼ゲノム情報関連疾患 22q11.2欠失症候群など
精神疾患と身体疾患を同時に伴いやすいゲノム情報関連疾患で頻度の高いものに22q11.2欠失症候群があります。
新たに生まれる赤ちゃんの約4千人に1人は、22q11.2欠失というゲノム情報を持っているのですが、その90%以上は親から子に伝わったものではありません。
ゲノムの中で変化が起きやすい…