このコーナーは、発達障害のさまざまな当事者、支援者の方に、言いたいことを伝えてもらうリレー連載です。
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第71回
イタズラ詩人ひろむくんとの六年間
著者:星野光秀さん
長野県 養護学校高等部教諭
私は今年還暦を迎え、この3月で教員生活が一区切りとなります。
この機会に教員生活のラスト6年間を少しだけふり返らせてもらいます。
私は公立中学校の英語科教員として18年間、県立高校で3年間、養護学校で17年間教員をしてきました。
ひろむくん
6年前の移動で現在の養護学校中学部の1年生を持たせてもらい、ひろむくんという生徒を受け持ちました。
ダウン症で頑固、私のお願いはほとんど聞いてくれず(若い女性先生の言うことなら聞いてくれるのですが)、私が「外に行こうか」と誘うと「やだ。こわい」と言って教室のロッカーなどに隠れてなかなか動いてくれません。
「これ今日の宿題だよ。やってきてね」とプリントを渡すとポイッとプリントを空に放り上げて、どこかへ走って逃げていってしまいます。
5月の放課後、ひろむくんは何かひとり言を言いながらなかなか帰らず、私が「ちょっと先生、会議に行ってくるから帰ってね」と伝えると、ニコッと笑って「はい」と答えました。
会議後ひろむくんは帰ってはいたのですが、教室の中は災害にあったかのように、本やいろいろな物や教室の掲示物などがすべて床に撒き散らされていたこともありました。
ひろむくんのことば
気持ちの交流もできず、関係も作れなくて悶々としていた6月のある朝、模造紙の半分くらいの丸めた紙(大工のおじいちゃんが図面を書く紙だそうです)を持って登校してきました。
「それ、何?」とたずねると、ひろむくんはニコニコしながら「見たい?」と…