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特集11 薬と腸内環境


著者:功刀浩
帝京大学医学部
精神神経科学講座


腸と脳との関係

近年、腸の調子が脳の状態に影響を与え、脳が腸の状態に影響を与えるという、腸と脳の間に双方向性の関係があること(脳―腸相関)が、心の病気にも大きく関わることがわかってきました。
事実、
「腹の虫がおさまらない」とか、
「腸(はらわた)が煮えくり返る」
などの言葉があるように、お腹の調子は心の調子に直結します。

ヒトの腸内には100兆個、重さにして約1~1.5㎏、1000種類以上もの腸内細菌が生息しており、食物からの栄養素の吸収、ビタミンやタンパク質の合成、体外からの新たな病原菌の侵入の防止、代謝の調節、ストレス反応の調節など、多岐にわたる重要な機能を担っています。
腸内細菌の状態がよくないと、いろいろな病気になる可能性が高まるという研究結果が急速に増えています。

一方ビフィズス菌や乳酸菌といった健康に有益な作用をもつ菌を含んだ食品や医薬品が、いろいろな病気の治療に有用であり、過敏性腸症候群のような心身症や、うつ病などの心の病気にも有効なことを示す研究結果も増えています。

筆者らも、うつ病の人では健常者と比べて腸内のビフィズス菌が少ないことや、うつ病の改善度が腸内のビフィズス菌の数と関係することを示す結果を報告しました。

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