※「こころの元気+」2010年6月号(40号)より
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Q 娘は元気になるのか不安です
私の22歳の娘は、うつ病と診断されて、ちょうど1年目です。
職場の人間関係が原因でうつ病になり、今は実家で休養中です。
とても疲れるようで、一日の大半を布団のなかで寝て過ごしています。
本も読めないし、好きな音楽も聞くことができません。
正直いって、この病気が治るのかわからず、不安でしかたがありません。
「こころの元気+」を読んでいると、元気な人がたくさん登場します。
そんな元気な人も、寝てばかりのような状態のときがあったのでしょうか。
うつ病は、完全に治ってしまう人もいれば、慢性化する人もいると聞きます。
「これから娘はどうなるんだろう …」と考えてばかりで、私も眠れない毎日です。
もし、慢性化したとしても、この雑誌「こころの元気+」に出てくるような皆さんのように、元気な姿をまた見たいと願っています。
そんな日が来るのでしょうか。
家族はどんなことができるのでしょうか。
元気になった方や、そうした人を支援している方のお話をお聞きしたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
A 家族会などに参加してみては
/あゆむさん(石川県)
私は、うつ病の症状が少しある者です。
一日の大半を布団のなかで寝て過ごしていますとありますが、私にもそういう時期がありました。
一日中寝てばかりいると、ご家族も不安になるでしょうね。
私の家族も不安にかられて、「どこも働きに出られないなら、入るとこ入らせるよ(入院のこと)」とまで言われたこともありました。
どうすれば、本を読んだり、音楽を聴いたりなどの活力がわくか気になるところでしょうね。
ご家族は、ご本人に関わりすぎるのも、無関心すぎるのもよくないと、私は感じています。
最低限の声かけをされてはどうでしょうか?
たとえば、「おはよう」、「おやすみ」のあいさつなど。
私は、両親にかなり甘やかされたような気がします。
親はどうやって私と対応すればいいかわからずに、戸惑っていたのだと思います。
ご家族は、家族会なんかに参加されて、よく病気の理解を示して、当事者家族と意見を交換することで、どう当事者と関わればいいかのヒントが少しは得られるかもしれません。
実際に、私の母親も家族会に参加したことがあり、病気のことを少しはわかってもらえたようで、すごく気をつかってくれるようになりました。
ご本人には、あれをしてほしいとか願うよりも、「こうしたい!」という本人の意思が出てくるまで、待ってみるというのもいいかもしれません。
私は、動けないときもありましたが、家事をやりたいとか外で買い物がしたいとかそう思えるようになって、今では自由に外出もしています。
ご家族は、ご本人の病気や気持ちを理解してみる努力から始めてみてはいかがでしょうか?
A 本人もつらいと思います
/江上幸さん(愛知県)
私自身は、うつ病ではなく統合失調症ですが、やはり発病当初は娘さんと同じく寝たきりの状態でした。
人によってその長さはかなり違ってくると思いますが、私の場合は6年以上もの間、そういった状態が続きました。
今では、元気にアルバイトや家事をこなす毎日をおくっていますが、発病後は寝たきりに近い状態のほうが圧倒的に長かったです。
お母さまもたいへんつらいとは思いますが、ご本人(娘さん)もつらい思いをしている、ということを忘れないでください。
きっと娘さんには、お母さまの心配する気持ちが痛いほど伝わっていると思います。
それゆえ本人に「迷惑や心配をかけて申し訳ない」という罪悪感や、
「早くよくならなければいけない」というあせりが生まれることが多いのです。
そういった思いは、病気の回復にはあまりいい影響を与えない、と私は思います。
ですから、娘さんがゆっくり心おだやかに治療に専念できるように、お母さまもゆったりとした気持ちで、温かく娘さんを見守ってあげてください。
お母さまが笑顔でいれば、娘さんにも少しずつ力がわいてくると思います。
精神的な病は、ゆっくりのろのろペースで回復していきます。
辛抱強く娘さんの回復を待ってあげてください。
A「何かをしてみたい」と思うまで待つ
/灯路さん(埼玉県)
初めまして。
私は、19歳のときに初めてうつ病にかかり、一年間療養をした女性です。
今は、本を読むことと音楽を楽しむ趣味を持ち、自分の心や体調と向き合い仕事をしています。
そんな私ですが、うつ病になった当初はやる気が起きず、本を読むどころか文字を見ることもできず、一番好きな音楽を聴くことができない状態でした。
本当に疲れていたときは、娘さんと同じく一日の大半を布団のなかで、泣いて過ごした日もあります。
お話を読ませていただきましたが、人間関係の悩みを抱え、疲れている娘さん自身が動けず、一番つらいのと同時に、そばで見守っているご家族の皆さまもまたつらいことと思います。
でも、うつ病は患者さん自身がよいと思える病院で、自分に合った薬をきちんとのみ続ければ、やる気が上がり元気になります。
調子がよくなるまではがんばりの言葉はかけずに、見守ることが何よりだと思います。
そして、簡単でも何かをしてみたいと意欲が出てきたときに、ご家族の方が身近な家事からすすめて一緒にされてみてはいかがでしょうか?
元気になるまでは、がんばりすぎない程度に。
そして、一つずつできることが増えて好きな趣味を楽しめ、今後再発しないためにも、(よい意味で)いやな人のかわし方を見つけたときが、本当に元気になったときだと思います。
心は変わりゆくもの。
病気の前後で私は考え方がまったく変わりましたが、回復しました。
毎日夜が明けるように、時間はかかっても元気になる日が来ます。
A 笑うことを覚えて
/井上和哉さん(奈良県)
僕も、人間関係がじょうずな方ではありません。
でも自分にしかできないことって、きっと誰にでもあります。
そんなに無理しなくてもいいのにと思い、「僕なんて生まれてくるべきじゃない」と親に話したら、親は大粒の涙を流していました。
僕は、僕の存在がなくなってしまえばいいのに、と何度も思いました。
そして悩みもたくさんあって、解決できないこともたくさんありました。
でも祖母が亡くなってから、「自分が素直に手を合わして」拝んだときに、自分は素直になれました。
慢性的な統合失調症になって、笑えることができなかった時期は20年間続きました。
それから地域に出て、友だちができて楽しんでいる間に、笑うことを覚えました。
僕にとって自分の居場所というのが、友だちだったと思います。
笑える場所が、僕が本当に大切にしなければいけないことだと気づかされました。
それが友だちやまわりの環境が徐々に整理されてきて、今ではこんなに元気になれました。
まわりの環境が大切なことを、日々実感します。
そして感謝しています。
※「こころの元気+」2010年6月号(40号)より
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