「こころの元気+」2013年2月号(72号)「おこまりですか?では他の人に聞いてみましょう!」から
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Q 息子の病気(うつ病)がどうなるのか不安です
私の息子は1か月前に、うつ病と診断されました。
診断書を会社に提出して、まずは3か月間、休職をすることになりました。
近所のクリニックに通院をし、薬はのんでいますが、「体中のエネルギーが宇宙に吸い取られてしまったような気がする」とつぶやいていて、1日の大半は布団のなかにいます。
布団のなかでも「疲れた。休みたい」と言い、お風呂にも入れません。
息子は、
「僕は、まったく何もできないダメな人間だ。こんな自分が会社にいれば、会社には迷惑をかけるばっかりだ。こんな役に立たない僕を雇っているなんて、会社のみんなには本当に申し訳ない」
「だから、僕は会社を辞めるべきだ」
ということをくり返し訴えます。
私が、「そんなことはないでしょう? 病気がよくなれば仕事もできるようになるから」と言っても、「病気はよくならないし、薬もまったく効いていない」と言うばかりです。
たしかに、この1か月、息子の状態が改善をしているようには見えず、私も絶望的になり、息子と話をしていると涙が出てしまい、何も言えなくなってしまいます。
お医者さまは、「ゆっくり回復するのだから、心配はいらない」とおっしゃいますが、本当にそうなのでしょうか?
この先、いったいどうなるのしょうか?
息子にはどのように話をしたらよいのでしょうか?
何もわからず不安で仕方がありません。
A 一般的な経過を知ってください
/ブニョさん(千葉県)
私は、今は躁うつ病の診断を受けていますが、昔、うつ状態が何年も続いたことがありました。
病気の一般的な経過を説明させてください。
父の死がきっかけで、私もうつ状態がひどくて動けなくなりました。
息子さんと同じように「自分が死んだほうが世の中のためになる」というような思いでいっぱいでした。
そういうのを急性期というそうですが、大津波が来ているようなもので、ただ頭を休めて薬をのみ、頑丈な建物に避難して自分を守るように、命だけはもっていかれないようにしました。
この時期は薬をしっかりのみ、休むことが必要です。
大波が去っても、病気がひと段落すると、エネルギーを使い果たしてしまい眠り続けることがあります。
休息期といいます。
そのときは休ませてあげてください。
私の場合は、寝て過ごす日々が2年ありましたが、徐々に回復してきて、デイケアや地域活動支援センターに行ってリハビリの末、社会復帰していきました。
個人差はありますが、家族も自殺だけは気をつけて、ゆっくり通院と薬と休息を続けていけば、再起できるときは来ます。
仕事も気になるでしょうが、命を失ったら、元も子もありません。
少し元気になったら、デイケアなどのリハビリを始め、段階を追って、回復へ向かう道も出てくると思います。
A 寄り添いと傾聴
/ユキマツリさん(神奈川県)
お気持ちお察しします。
正しい医者で、正しい薬を、正しく服用すればよくなると思います。
完治とはいきませんが、寛解(かんかい:安定すること)をめざしましょう。
自分の経験から、よくなってくると人生観が変わります。
私は、統合失調症で4度の休職を経て退職しました。
3年間は仕事を休んでいました。
会社にしがみつくだけが人生ではないと思うようになりました。
休職しているときは絶望しましたが、心のなかのもう1人の自分がもう一度人生をやり直すときだと考えました。
先が全然見えませんでしたが夢を持ちました。
私の場合文章を書くことでした。
それを心の軸に据えて生活を変えました。
作業所に通ったりして、試行錯誤の末、障害者枠で就労が決まり、今は働いています。
ご家族には、ぜひ「寄り添い」、「傾聴」することをおすすめします。
決して巻きこまれないでください。
一緒に公園を散歩するのもいいし、おいしいコーヒーを飲みに行くのもいいです。
息子さんをあまり刺激せず、ていねいに一日を過ごすことを考えてみてください。
まずは、ご質問者さまから規則正しい暮らしを実践し、それから、その暮らしを息子さんにシフトする感じです。
こういった病は、森田療法でいう「目的本位」、「あるがまま」という心がまえと姿勢が功を奏します。
心の軸が定まるまで長い時間がかかりますが、夜明けは必ず訪れます。
人生の冬は春を迎えるためにあると思います。
A 今は何もしないことが治療です
/ハイジさん(東京都)
ある日突然うつ病になり、仕事を休職中である息子さんの今の状況にヤキモキしたり、絶望的になっていく家族としての、そして親としての気持ちが私には痛いほどよくわかります。
なぜならば、私も同じような体験を持ち、息子が朝になってもずっと寝たままの姿を見ると「このままでいいのかな?」と不安でいっぱいになったりするからです。
でもお話を伺って、息子さんは早期発見・早期治療ができる環境にあり、本当にその点ではよかったと思います。
そして「今は何もしない」という休養が、一番大切な治療になるのではないかと私は思います。
まだ通院をしたばかりで、主治医、そして薬に対しての不信感もあるかと思いますが、休養と同じ位に薬も大事だと思うので、息子さんが自己判断で薬をやめてしまわないようにサポートするとよいのではないかと思います。
布団にいてお風呂も入りたくない状況で、今、息子さんは病気への不安や気力の出ない自分を悪いほうにばかり考えて、「辞職したい」と切り出すかもしれませんが、そのときは「重要な決定は急がずに先延ばししたほうがいいよ」と、あたたかく見守りながらおっしゃるといいかなと思います。
そして親も心配のあまり、つらくてうつ気分になったときには、深呼吸をしてみてはどうでしょう。
私がよくやっている腹式呼吸は、気持ちがリラックスします。お腹がふくらむよう鼻から息を吸い、口からゆっくりと息を吐くだけなのです。
息子さんが一進一退をくり返して快方に向かっていく間に、親が共倒れにならないよう、あせらないことがとても大切だと私は思います。
A 薬と復職後には注意を
/火弟酉さん(東京都)
20年以上前に、うつ病で3か月の休職を経験した男性です。
うつ病に効果のある薬は数十種類あります。
そして、「アタリ」と「ハズレ」があります。
私の場合、最初に処方された薬は完全な「ハズレ」でした。
診断名がくだり、休職し、きちんと服用しましたが、病状は急速に悪化しました。
当時の記憶はなく、後に母から聞いたのですが、私の顔は能面のように表情がまったくなくなり、声をかけても、返事ひとつしない状態だったそうです。
仕事をしていたときは責任感・緊張感がありましたが、それがなくなったことも原因だと思います。
その状態が1か月以上続いた後、薬が変わり、その薬は「アタリ」でした。
一般的にも2種類目以降の薬が効果のある確率はかなり高いようです。
私は会社を辞めることは考えませんでした。
私の仕事は同僚が引き受けました。
もともと忙しい職場でしたから、同僚は逃げ出したい気持ちだったと思います。
もし、私が会社を辞めても、私が担当していた仕事がなくなることも、同僚の状況がよくなることもありません。
会社を辞めることよりも病気を治し、少しでも元の仕事ができるようになることを考えました。
3か月後に復職しましたが、別の同僚が突然退職したこともあり、過労になり再燃(さいねん:再び悪化すること)。
その後、休職・復職をくり返し、退職しました。
1度再燃すると、再燃しやすくなります。
復職後は充分に注意してください。
「こころの元気+」2013年2月号(72号)「おこまりですか?では他の人に聞いてみましょう!」から