「こころの元気+」2015年1月号 ちょっと知りたい! 第3回より
障害年金の地域差について
特定社会保険労務士
井坂武史
平成26年8月25日、共同通信社の配信により、全国の朝刊において「障害年金の地域差」と題する記事が掲載されました。
2010年度~2012年度の3年間で、不支給の割合に最大6倍もの開きがあることが判明しました。
都道府県別に見ますと、不支給割合が最も高いのは大分県の24.4%で、最も低いのは栃木県の4.0%です。
障害年金を請求すると、大分県では100人のうち24人が不支給であるのに対し、栃木県では4人が不支給になるということです。
そもそも、なぜこのような地域差が存在するのでしょうか?
障害基礎年金は各都道府県の事務センターで審査され、また認定する医師も都道府県の数だけ存在します。
そのため、障害年金の審査の段階で認定医の経験や主観が入りこむ余地は否定できず、それらによって、認定がきびしい県とそうでない県が存在するものと思われます(このような新聞記事の掲載で、厚生労働省はきびしい県に基準をそろえるかもしれず、継続して国民の監視が必要です)。
また、地域差の問題については、厚労省がきちんと認定医に対する研修などを行っていないことが原因だと思われます。
厚労省が公表している議事録によると、「十数年前に全国の認定医の会議というのが開かれまして」とあり、十数年間は厚労省が全国的な研修を行っていないことは確認されています。
その間に認定医や認定基準も変更されていますが、研修は行われていません。
不服申立の1審目である地方厚生局の担当者(社会保険審査官)は独任制(単独性)となっており、担当者によって主観が入りこむ余地があり、ここでも認定にばらつきが存在します。
もうひとつの問題として、社会保険庁から日本年金機構に業務が移管されたことも大きな背景だと思われます。
平成22年1月1日に社会保険庁から日本年金機構に業務が移管されたのを境に、厚労省で行われる社会保険審査会(不服申立の2審目)の未処理件数が激増しています。
これらの問題を解決するものとして、審査を厚労省に一本化するか、同省がきちんと研修を実施し適正に業務を行うようにすべきなのはいうまでもありません。
☆2015年2月から、厚生労働省では、障害年金の地域による格差についての検討会が開かれガイドラインの検討もしています。
その検討会での資料や議事録などがホームページで公開されています。
厚生労働省の審議会が進むごとに、順次UPされていきます。
精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-nenkin.html?tid=246772