親自身の健康も大切(家族)


こころの元気+ 2010年10月号特集より


特集6
親自身の健康も大切―家族もイキイキしよう

千葉県ファーム栗の木家族会/貫井信夫


息子を理解してあげられず

私の息子は、統合失調症で、十数年前に発病しました。
発病当初は、この病気や治療の知識もまったくなく、私も妻も、ただ右往左往するばかりで、ほとほと疲れきっていました。
それでも、紆余曲折の末、入院治療し、退院後は、作業所等でのリハビリの甲斐もあって、息子も少しずつ元気を取りもどすようになり、しばらくすれば、また職場に復帰し、普通の生活ができるようになるものとばかり思い込んでいました。

その後、彼はすてきな彼女との出会いもあり、自活の道を考えるようになって、訓練施設などを経て、一般就労を始めました。
しかし、二年後ぐらいには、その仕事も続かず、やめることになりました。
もう、就労して自活することなど到底できないことなのかと、発病当初とは違った葛藤にさいなまれる毎日でした。

そんなある日、別暮らしをしている息子が久しぶりに、実家(私たち夫婦の住まい)に立ち寄り、妻の入れたいつものアイスコーヒーを飲みながら、
「あの頃、仕事をしていたときは、どんなにつらかったか、わからないだろうな…」
と、ぽつりと言ったとき、私は、はっと、胸がはりさけるような思いがしました。
それは、なぜ、彼のこの気持ちを今まで理解してやることができなかったのか、という後悔の念と、今、初めて(発症して一〇年もたって)、自分の気持ちを素直に、私たち親に言ってくれた、という感動を覚えました。
少なくとも、一番の理解者であるべき家族としての至らなさを思い知らされ、まさに、目から鱗が落ちる思いでした。

その後は、息子の病気のことだけに一喜一憂するのではなく、ありのままの彼を受け入れることを心がけました。
そして、夫婦での外出や日常生活などで、できるだけ親である私たち自身の生活を楽しむことにしました。
そうした変化を感じとってくれたのか、彼も、つらいときや、落ち込むときもあるようですが、心を開いて、いろいろ話しかけてくれることが多くなったように思います。

ありのままの子どもを受け入れる

家族には、同じような体験を持っている方が、たくさんおります。
ある家族は、息子さんがこの病気になったとわかり、今後は、友人、親戚などとのつきあいもやめ、これまでの普通の生活をすべて捨てようと覚悟をしたと言っていました。
しかし、家族会での話し合いをきっかけに、見違えたように明るさを取りもどし、余裕を持つことで、家族会や、いろいろの所にも積極的に出向くようになり、息子さんとの関係にもよい影響が出ているようです。

また、別の方は、娘さんが、何もできず、こもりがちなことを悩んでいましたが、やはり、まずは、親が変わらなければとの思いから、本人との過度の関わりをやめ、旅行や、外出などを楽しむなど、ご自身の生活を変えるようにしたところ、娘さんも、留守番や、家事などを、自分からできるようになったそうです。
障がいがあっても、本人には本人の人生がある、と同時に、私たち家族にも人生がある、と思います。
今後も、本人を見守りながら、自分たちの生活をイキイキと過ごしていきたいと思います。