身体合併症 モニタリングは健康管理の基本のき (専門職)


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特集5
モニタリングは健康管理の基本のき

東邦大学薬学部医療薬学教育センター臨床薬学研究室
吉尾隆


精神疾患と身体的合併症

これまでの多くの研究から、精神疾患の方は糖尿病をはじめ心血管系疾患や脂質異常症などの身体合併症を併発することが多いと報告されています。
フィンランドのコホート研究(集団の長期追跡調査)では、抗精神病薬の投与、さらに多剤併用大量投与により心血管系疾患による死亡のリスクが高くなることが報告されています。
また、抗精神病薬は、大量に投与すると誤嚥性肺炎を引き起こしやすく、三環系抗うつ薬でも心臓に対する影響が問題となります。

抗精神病薬の身体的副作用として注意しなければならないのが、メタボリックシンドロームと心血管系副作用です。

神経伝達物質であるセロトニンやヒスタミンの遮断では、体重増加・耐糖能異常・脂質代謝異常を引き起こし、これがメタボリックシンドロームとなり、ひいては心血管系の副作用につながっていく可能性もあります。
抗精神病薬の投与量がクロルプロマジン換算で1000㎎/日以上になると、QTc延長という不整脈の一種が生じやすくなり、投与量が増加することでその危険性が増加します。

身体的合併症のモニタリングの重要性

フィンランドのコホート研究では、最も死亡のリスクが低かった抗精神病薬はクロザピンであったと報告されています。

クロザピンには体重増加、血糖値上昇といった副作用に加え、顆粒球減少症、心筋症などの命に直接関わる副作用があり、厳重な血液検査や心電図のモニターを行いながら服用する必要があります。

この研究で最も重要なのは、クロザピンはさまざまな身体合併症のリスクがある薬剤ですが、身体的なモニタリング(継続的なチェック)をしっかりと行って服用すれば、安全に治療できることを示している点です。

薬の作用と身体合併症との関係

抗精神病薬はさまざまな受容体に作用することが知られていますが、中枢性の作用のみならず身体的な作用により、イレウス(腸閉塞症)や体重増加・耐糖能異常・脂質代謝異常、心電図異常等を引き起こします。

これらの身体的副作用は放置しておくと命に関わるものも多く、クロザピンのように厳重ではなくとも、血液検査や心電図検査を定期的に受けて薬を服用する必要があります。

自分で何ができるのか

統合失調症の方は、再発予防のため服薬の継続が重要です。
したがって抗精神病薬を長期間服用しなければなりませんが「危険な薬をのんでいる」というわけではありません。

薬にはどうしてもさまざまな副作用がありますので、そのことを充分理解して服用し、何か異常があったときにはすぐに受診することも重要ですが、一番簡単なことは、定期的に健康診断を受けることです。

心電図検査や血液検査を受けることをおすすめします。

問題がある場合はどうするか

めまいやふらつきが生じているときは、血圧が下がっていたり、心臓の機能が低下している可能性があります。
また、高血糖が続くと口の中が渇いたり、おしっこがたくさん出たり、トイレの回数が多くなったりします。
体重の増加は、脂質異常症や糖尿病につながる可能性があります。

普段から、このような自分の症状に注意しておくことが大切です。
そして、このような自覚症状がある場合には、できるだけすみやかに医療機関を受診してください。

 

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