親を支えるとはどういうことか(本人)


こころの元気+ 2012年11月号特集より


特集2
人を支えるとはどういうことか


母の気持ちに添って
新潟県 D.Bさん


七七歳の母と八三歳の父と三人で暮らしています。 
私の具合が悪かったころは二人が支えてくれました。 
今は、二人を支える立場になりつつあります。ことに母は物忘れがはげしく、忘れ物をして落ちこんだり、がっかりしてばかりいるので、元気づけてあげないといけません。
今は、母を支えているわけです。 
母をそうしてはげます立場なので、自分がなるべく元気でないといけません。また、母を支えるためには、自分がしっかりしなければといつも思っています。

母は持薬をのみ忘れてばかりいるので、いつも教えてあげるのですが、うるさがられるときがよくあります。こちらがよかれと思っても、相手の気持ちに添うように、気持ちを悪くしないように助けないといけないと気づきました。

そこで、のみ忘れている薬をうやうやしく捧げ持って出したら、笑ってのんでくれました。
また、自分の調子が悪くて助けられないときには、無理をして助けようとせず、なりゆきにまかせていると、父が手伝ってくれたりして、何とかなることもわかりました。 
こうやって支え合えるうちは、こうしていたいと思っています。


仕事と違う
東京都 ハイジさん


私は福祉の仕事をしていました。経験と自信がありました。 
ある日、母親が肺炎で危篤になり、奇跡的に助かったときには、命の尊さに心から感謝しました。
ところが母は、人が変わったかのように呼び出しブザーを頻ひん繁ぱんに押したり、誰も来ないと叫んでしまうので、「夜間に家族が泊まらないと入院は継続できない」といわれ、署名をして交代で病院に泊まるようになりました。
 
三か月後に、療養型病院が決まらないままの退院となり、その日から在宅での要介護5の重い認知症の母の介護生活が始まりました。
兄と姉と私の三人が交代で介護をしましたが、終わりが見えず、逃げ出すことなどできない泥沼のような日々、ショートステイも転々と変わり、毎回、母に初対面の介護職員が対応するのも歯がゆく思いました。 私は限界になり、兄に、「役所によく相談して、小規模多機能型居宅介護を紹介してもらおう。そしたらすべてが一つになるから」と言いました。 

その後、たくさんの人に支えられての四年半でした。 
去年の一月に母は腎不全と老衰で九二歳で他界しました。
在宅介護でわかったことは、仕事で人を支えるのと、家族を支えるのとは、まったく違うということです。