将来に備えた、今日のささやかな目標(専門職)


こころの元気+ 2010年1月号特集より


特集4
将来に備えた、今日のささやかな目標

第2チェリーハウス/齊藤潤子


ささやかな目標を立てましょう

私は長らく、精神障害者の作業所や地域支援センター、グループホームなどで働いてきました。
そこで出会った当事者の方のなかに、精神科の病気を持ちながらも、将来の夢の実現のために、障害と折りあいながら、毎日ささやかな目標をつくって、生活をおくっている方がいました。

何か目標があると、それが張り合いになり、前向きな気持ちになったり、それが達成できたときは、自信を得ることにつながります。
しかしながら「目標」が大きすぎたり、あまり現実的でないときは、がんばりすぎて疲れをためたり、かえって何もできないことで、自信を喪失したりする場合があるようです。
精神科の病気とは、なぜかあるときから外界に過敏反応してしまう体質になった脳の病気といわれています。その過敏な体質のために、ちょっとしたことが気になって、しつこく悔やんだり、マイナス思考になって閉じこもったり、あるいは怒りやすくなったりして、失敗体験には弱いところがあります。
しかしながら、病気によって失われた夢をあきらめられず、「就職したい」、「外国旅行をしたい」、「大学を卒業したい」、「結婚したい」といった希望を持っている人は多いのです。
夢は大切です。その夢の実現につながっていくほんのちょっぴりの、ささやかな今日の目標をもつことから始めてはどうでしょうか。

無理をしないことも大切

ところで精神科の病気は、脳の病気だからこそ、刺激に対する受信機能が過敏になるために認知障害が症状としてあり、そのため失敗から学びにくかったり、判断間違いをしたりして再発を誘うことも多いのです。
そのために、「精神科のリハビリテーションはあせらず、ゆっくりと、段階的に」という鉄則があります。ささやかな目標を立てる場合も、自分の障害のことを自分でよくわかっており、病気の自己管理(病気と折りあう)をしながらの毎日をおくることが必要です。
がんばりすぎたり、無理をしたり、疲労をためると、病気からくる脆弱性のために、再発する危険性があるのです。

やってはいけないこと、したほうがよいことを自覚しながら、下の「ささやかな目標に向かって」をヒントに自分が今できるささやかな目標を立ててください。
「将来就職するために、毎日四回の服薬をきちんとのむ」、「将来に学校に行くために、一日一回はコンビニに行き、家にこもらない」、「睡眠リズムをつくるために、テレビゲームは一日三〇分」、「人間関係をよくするために、朝起きたら家族におはよう、と声をかける」、「将来は結婚したいので、一日一〇〇〇円の小づかいでがまんする」といった、ほんのちょっぴりの努力や、可能な程度のがまんである「将来に備えた、今日のささやかな目標」立ててみてはいかがでしょうか。

ささやかな目標に向かって

1 将来の夢はなんですか?
2 その夢の実現のために知っておきたい、あなたのハンディ(障害、症状)は何でしょうか? 調子が悪くなるとどうなりますか?
3 調子が悪くなるときのきっかけは何ですか?
4 調子を元に戻すためにしていることは何ですか?
5 将来の夢の実現のために、今できるとりあえずの目標は何ですか?