「こころの元気+ 2013年9月号」特集より →こころの元気+とは
特集9
「家族による家族学習会」をやってみよう!
仲間と一緒に元気になろう! →家族支援
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野
研究員 中村由嘉子
「家族による家族学習会」(以下、学習会)は、精神障害のある方の家族が主体となって実施する、家族が元気になるための学習プログラムです。
→2018年現在では、全国精神保健福祉会連合会(みんなネット)で行われています
学習会では経験のある先輩家族が「担当者」となって、学習会を計画・準備・実施し、新しい家族を「参加者」としてお迎えします。
学習会は10~15人ほどの小グループで実施し、グループの輪の中に入るのは家族だけです。 学習会では〝教える・教えられる〟という関係ではなく、家族が主体的に〝ともに学び合う〟という点が大きな特徴といえます。
ここでは、学習会を実施する家族が大切にしている、「体験の共有」「おもてなしの心」そして「お互いの困難に共感し自分たちの工夫や対処に目を向ける」という3つのポイントを紹介しながら、学習会の概要をご説明します(学習会をさらに知りたい方は『家族による家族学習会ブックレット』をご覧ください)。
体験の共有
たとえば、統合失調症の学習会では、家族版の統合失調症心理教育テキスト『じょうずな対処~今日から明日へ~』を全員で輪読し、その内容に沿った体験を語り合います。
疾患や対応の仕方などについての正しい情報を共有するとともに、家族だからこそ獲得できた体験にもとづく知恵を共有することを大切にしています。
なぜなら、私たちは家族の体験と、体験にもとづく知恵を宝だと思っているからです。ともに語り合い、体験を通して得られたお互いの宝を共有することは、家族にしかできません。学習会は、家族だからこそできる、家族にしかできない活動なのです。
学習会で使用するテキストは5章からなっています。
そのため1回3時間ほどの会で1章を皆で読み進め、それを5回開催するのが学習会の標準的な進め方です。
おもてなしの心
安心できる雰囲気の中で体験の共有を行うために、私たちが大切にしているのが、おもてなしの心です。
学習会では、参加者をお迎えする家族が、集まっていただいた家族を歓迎し、その方々のそれまでの苦労をねぎらいます。参加していただいた方に「来てよかった、話を聞いてもらえてよかった、また来たい」と思える場にすること、お互いが安心して体験を語ることができる場をつくることが、何より肝心だと考えるからです。
困難に共感し自分たちの工夫や対処に目を向ける
さらに学習会では、「家族がこれまで実践してきた工夫や対処に目を向ける」ことを大切にしています。
困りごとばかりの話しの中から、その人自身の工夫や、できていること、がんばっていることなどを見つけて伝えることで、家族はそれぞれに変化を見せ、元気になっていきます。
その姿を見て、学習会を実施した家族もまた、はげまされ、勇気づけられ、充実感を得て元気になれるのです。
家族学習会の活動
コンボの呼びかけにより、2007年から始まった学習会の活動は、2013年で7年目になりました。
これまでに全国100か所以上の家族会で学習会が実施され、学習会に参加した家族は600人を超えています。
参加した方からは、「自分の体験を語ることが、他の家族の役に立つことに気づいた」「学習会に出会って人生が変わった」といったうれしい声が聞かれています。