薬の整理が必要かも (医師)


こころの元気+ 2011年11月号特集より


特集
薬の整理が必要かも

国立国際医療研究センター国府台病院(精神科医)
吉田衣美


はじめまして。ACT-Jで精神科医をしている吉田です。
今回は「薬の整理が必要かも」と思ったときどうすればよいか、そのことについて話ししたいと思います。

皆さんが薬の整理が必要かも、と思うときはどんなときでしょうか?
薬をのんでいるのに症状が全然よくならない、あるいは薬をのむと体がだるくて全然動けない …。
前者は「本当に私がのむべき薬はこの薬なの?」ということですし、後者は「薬をのむことでむしろ生活するのがむずかしくなっている」ということかと思います。

一般的に精神科では、診断名の変更で薬の内容がガラリと変わることはありません。どんな診断でも、うつ状態を認める方に抗うつ薬を出すことがあるように、診断名で薬を選ぶというより、症状に対応した薬を出すことが多いです。
現在、精神科の薬については、症状を抑えながら、より副作用の少ない薬が次々に誕生していますが、「これさえのめば必ず症状がよくなる」という万能薬がないのが現状です。

しかし、より症状を軽くする、自分に合った薬を探すことは大事です。ぜひ、主治医に一度相談してみてください。
自分にあった薬を探す一方で、大事なことがあります。それは「不要な薬を増やさないこと」。
精神科の薬は、うまくつきあえば、症状を抑えて皆さんの生活を守ってくれる心強い相手ですが、一歩間違えると副作用が強く出てしまって、むしろ害になってしまうことも少なくありません。「体が重い」、「やる気が起きない」など、病気の症状の一つだと思っていたのが、薬ののみすぎによるものだということもあります。

病状にもよりますが、不要な薬を増やさないことはとても大事です。まずは自分の処方を見直してみましょう。どんな薬をのんでいるでしょうか?
疑問に思うことがあったら、主治医や薬局の薬剤師さんに相談してみましょう。もし、減薬の意思があるときは、ぜひ主治医に伝えてください。

精神科の薬については、症状に変化がなければ同じ処方となることが多いので、減薬をどのタイミングで行うかは、皆さんの意思が重要になってきます。
そのときは、減薬のメリット、デメリット、症状が万が一悪化したときの対処法を話し合ってけば安心です。
日頃から、デイケアで行われている心理教育プログラムに参加することも、自分がのんでいる薬を知るうえで役に立つと思います。処方についても、自分で納得したものを服用することが大事だと思います。