○「こころの元気+」2012年8月号より
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特集6
私のおすすめのメンタルヘルスまんがはこれです!
(茨城県)市川晴美さん
『失踪日記』
吾妻ひでお イースト・プレス
私のおすすめするまんがは、吾妻ひでおさんの『失踪日記』です。
この作品は、吾妻さん自身の失踪や、アルコール依存症になってしまった体験が描かれています。
この本を知るきっかけは、同僚から『おもしろいよ』と、貸していただいたことでした。
吾妻さんは、失踪を二回した後に、アルコール依存症となってアルコール病棟に入院してしまいます。
初期症状で、喫茶店でコーヒーを飲んでいたら手が震えてきたことや、やがて、吾妻さんを襲う得体の知れないものが見える奇妙な体験、お酒が手放せない状態などが、リアルにユーモラスに描かれています。そして、お酒で精神もむしばまれていった吾妻さんは、家族に強制連行され、アルコール病棟に即入院となってしまいます。
ストレスのある世の中だからついついお酒に手が出てしまうアルコール依存症は、誰しもかかる可能性のある恐ろしい病いだと感じました。
そして、吾妻さんが病いから再生していく姿が、絶望から希望に見えてはげまされました。
(埼玉県)灯路さん
『わたしは働くうつウ-マン』
作:安部結貴、まんが:大葉リビ
小学館
うつ病で療養中の女性です。なにげなく、書店のメンタルヘルスコーナーへ足を運んだときに、タイトルに惹かれて購入したのがこのまんが本でした。
この本は、著者の安部結貴さんのうつ病体験が描かれたコミックエッセーですが、うつ病発症から回復まで、現在どのように病気と向き合っているのかなど、うつ病の人の気持ちがわかりやすく描かれています。また治療の成功談だけでなく、失敗談も描かれているところが特徴です。
他にも、心の調子が悪いときに、何科を受診すればよいのか・どんな病院がよいか・自立支援医療費の手続きの話など、具体的な話がたくさん描いてあるので、うつ病を知らない人や、うつ病で受診する人の指南書にもなる本だと思いました。
私は、うつ病をかかえながらライターの仕事で生活をしている安部さんと同じ状況なので、仕事の向き合い方は、特に参考になりました。
重いテーマになりがちなうつ病ですが、ほのぼのとしたまんがが、病気を身近に感じさせてくれるので、おすすめの本です。
(大阪府)上原博史さん
『お手軽躁うつ病講座 High & Low』
たなかみる
星和書店
私がおすすめするのは、たなかみるさんの『お手軽躁うつ病講座 High & Low』と、続編の『境界性人格障害&躁うつ病 REMIX』です。
作者が、かなり破天荒なキャラクターで、主治医とバトルしたり、旦那さんとケンカしたり、子育てしている日常生活がユーモラスに描かれています。
主人公であるたなかみるさんが、泣いたり笑ったり、怒ったり悩んだりしながらも、徐々に病いから回復していく様子は、リカバリーをめざす患者にとって、はげみになります。
星和書店から出版されているだけあって、境界性人格障害(BPD)や躁うつ病に対して、冷静に分析もされているし、学術的な読み物としても参考になると思います。特に入院時のエピソードがおもしろく、精神科に入院したことがない私には、非常に参考になりました。
私も双極性障害の診断をされているので、自分と重なるところもあり、こういうことってあるなあと思いながら読みました。
境界性人格障害か躁うつ病の診断を受けている人には、ぜひ一読してもらいたいです。
(東京都)ハイジさん
何冊か紹介します。
『境界性人格障害&躁うつ病 REMIX 日々奮闘している方々へ。マイペースで行こう!』
たなかみる 星和書店
二者間のしがみつき&衝動性と攻撃性の行動パターンをご自身でよく分析して描かれています。
『パニックママでもいいじゃない』
青柳ちか DHC
妊娠8か月まで元気だった著者が、ある日突然、電車で動悸・違和感・恐怖・不安に襲われ、産後『パニック障碍』とわかります。2人目の妊娠時の再発は、病気とともに一歩一歩生きていく著者。育児不安のママが読むと勇気が湧いてくる本です。
『大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症』
大原由軌子 文藝春秋 (文庫版)
私との共通点が多くて、親近感を持ちながら読みました。
『マンガでわかる軽いうつ あなた疲れていませんか?』
平木英人 保健同人社
精神科医が執筆。不眠・食欲不振・おっくうで悩んでいる人向けのとてもわかりやすい本。
『今日はぐっすり眠りたい。』
細川貂々 幻冬舎(文庫版)
快眠方法の工夫が、かわいいマンガでたくさん載っています。
(愛媛県)TAKさん
『結婚っていいかもしれない』
藤臣柊子 幻冬舎
ずいぶん昔のことになりますが メンヘル系のブログなどで紹介されていたこのまんがを読みました。
私にとっては、メンタルヘルスをテーマにした初めてのまんがだったので印象に残っています。
藤臣さんが結婚後、うつ病とパニック障害を患い、結局それも原因で離婚にいたるまでを自伝的に綴っておられます。決して悲観的にならず、精神病をネガティブというより明るく描いていて、読後感はさわやかです。
このまんがを読んだ当時は、私も入退院をくり返していて、メンタルヘルス系の本に救いを求め、べてるの家の本や精神科医の書いた本を一番熱心に読んでいたころです。
話が横にそれましたが、藤臣さんの他のまんがもやはりご自身の病気のことをテーマに描かれたものが多いのですが、彼女の描いたまんがからは精神病になっても何か明るく生きていけそうな力をもらえました。
うつ病などで苦しんでいる方には、ぜひご一読をおすすめしたいです。苦しむかもしれないけれど、精神病になっても、夜明けは必ず訪れることを感じさせてくれます。
(大阪府)神澤郷子さん
『ライフ・ライン 医療少年院・看護師と院生の絆』1・2巻
作画:美村あきの・原案:江川晴(文庫版)
秋田書店
「メンタルヘルスまんが」というテーマを見て最初に思い浮かんだのがこの本です。
物語は、「心身に著いちじるしい故障のある」非行少年を収容する施設に赴任した女性看護師の奮闘を、オムニバスで描いています。
院生は体より心に深い傷を負い、他人に徹底的な不信感を持っているため、簡単には心を開きません。しかし主人公は辛抱強く、真綿でくるむような愛情で院生に接します。
私が読んでいて心を動かされたのは、矯正を強制せず、ひたすら少年たちの「自ら立ち直る力」を信じる主人公の姿勢でした。
もちろん、幸せな結末だけではありません。着任早々、ショッキングなできごとにも遭遇します。はげしく自分を責め、辞表を出そうとする彼女に院長は、「この仕事は、心を尽くしても裏切られることがあります。それでも我々は見守っていくしかないんです」という言葉をかけます。
精神医療に携わる人々が、患者の心にどれほど強く寄り添っているかが伝わってくる言葉でした。 時には当事者も治療者の気持を考える必要があるのでは…と読後に感じさせられた作品でした。