こころの元気+ 2014年1月号特集より
特集10
新しい認知行動療法の広がり
国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター
大野裕
認知行動療法というのは、経験を通して気づきを広げていくことで気持ちを軽くする方法です。
しかもそれは、私たち誰もが日常生活の中で使っている生活の知恵を、わかりやすくまとめたものです。
その方法を身につけることができれば、私たちは今まで以上にストレスにじょうずに対処できるようになって、自分らしく生きていくことができるようになります。
あえてこのようなことを書いたのは、新しい認知行動療法の広がりというとき、そこに二つの意味があると考えたからです。
一つは新しいアプローチです。
たとえば、最近マインドフルネスということがいわれます。自分が感じていることを、ありのままに、自然に受け入れられるように心や体の状態を整える方法です。
しかし、一見新しく思えるこうした方法も、実は私たちが古くから知っている茶の湯や禅の考え方そのものです。
ですから、そうした日本文化を体で知っている私たち日本人は、日本の伝統的な所作をふり返ることが心の力になると私は考えています。
新しい広がりでは、第二の意味、その知恵を活用する場を広げることです。
認知行動療法は医療場面だけでなく、地域の相談活動、つまり、まちかど保健室のような相談活動で使えます。
私たちも、被災地や自殺対策で同様の取り組みを行っています。被災地での復職支援の場、地域や職域でのストレス教育の場でも使うことができます。
学校で使うと、生徒の考え方が柔軟になり、思いやりが育ちます。すると教室の雰囲気が変わり、教員や保護者の意識も変わってきます。
人とITの共存も今後の可能性を広げます。
私は「うつ・不安ネット」というウェブを使った認知行動療法活用サイトを監修していますが、こうした方法を使えば認知行動療法をより効率的に身につけられるようになります。
着実に認知行動療法は広がっているのです。