「こころの元気+」2007年6月号より →『こころの元気+』とは
うつ病・統合失調症薬の副作用イラスト集
マルで囲んで副作用チェック!/どんな薬にも副作用はある
監修 佐竹直子/国立精神・神経センター国府台病院精神科
イラスト 伊藤真理子/イラストレーター
どんな薬にも副作用はある
この特集は薬の副作用を減らして、元気になるためにはどのようにしたらよいのか、ということを知るために企画しました。
最初におことわりをしておきたいのは、どのような薬にも副作用はあるということです。
薬は体の中に入っていきますが、病気の症状だけに作用するのではなくて、他の部分にも働きかけることになります。
そのため、副作用があらわれるのです。
副作用がゼロという薬はないとはいえ、あまりにも副作用が大きくて、生活に支障をきたすような場合はどうしたらよいでしょうか。
そのようなときには、できるだけ副作用を減らすように主治医と相談をしながら、のんでいる薬を調整していくことが必要になります。
このイラスト集の使い方
まず、このイラストをごらんください。→イラストはコチラをクリック
このイラスト集は、うつ病・統合失調症の治療薬をのんでいて、おこりやすい副作用をまとめたものです。
まず、イラストにざっと目を通してください。
できれば、他の人と一緒に見ることをオススメします。
薬の副作用は、数か月以上かかって徐々にあらわれるものもあります。
その場合は、副作用が出ていることに気がつかない場合があるのです。
そのため自分だけではなんとなく見過ごしてしまう可能性もあるからです。
そして、「おや、自分と同じようなイラストがあるぞ」というものがありましたら、大きくマルで囲ってみてください。
そうすると、自分がどのような副作用をかかえているのか、ということがわかると思います。
そして、主治医に、このイラスト集を見せてください。
「私はこの副作用があるんです。できるだけこの副作用を減らしたいのですが、なんとかならないですか?」と話していただきたいのです。
つまり、このイラスト集を使って、治療に役立てていただきたいと思います。
自己判断ではなく主治医と
次に、副作用に対する対処方法をまとめました。
以下の対処方法は、あくまでも一つの参考です。
自分自身の判断で薬を減らしたりすると、よけいに症状が悪くなる可能性があります。
そのため、必ず主治医と相談をしながら、対処していただきますよう、お願いいたします。
☆薬を急にやめた体験や離脱についての情報は→ネット特集6「減薬・断薬・離脱」
※「こころの元気+」の離脱の特集→2016年5月号特集「知っておきたい離脱症状」
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うつ病の治療薬で起こる副作用
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●吐き気・むかつき
うつ病の薬をのみ始めた頃に起こる副作用です。SSRIやSNRIとよばれる、新薬の副作用です。
たいていは二~三日でなくなりますが、それでも吐き気・むかつきが続くようであれば、胃腸薬を併用したり、他のSSRIやSNRIに変えられないかを主治医と相談してみてください。ひどい場合には、SSRIやSNRIとは異なる三環系・四環系などの抗うつ剤に変更することもあります。
●頭が割れるように痛くなる
うつ病の薬をのんでいる場合に起こる副作用です。SSRIとよばれる、新薬に見られる副作用です。他の薬に変えることで出にくくなります。
●のどが渇くのでガブガブ水を飲む
とにかくのどが渇くので、何リットルもの飲料を飲んでしまいます。あまりにも水を飲み過ぎると、血液中のナトリウムの濃度が薄くなって、疲労感・頭痛・吐き気が起きます。さらにひどい症状の場合は、けいれん・昏睡状態・呼吸困難になる場合もあります。この状態を水中毒といいます。対処としては、アメや氷をなめて、口の中をしめらせておきます。また、一度にたくさんの水を飲むのではなくて、こまめに少量ずつ飲むようにするとよいでしょう。また、薬の量を減らすことで軽減されることもあります。
●立ち上がるときにめまいがする
こうした副作用を起立性障害といいます。自律神経のバランスがくずれることが原因です。対処としては、立ち上がるときに、頭の位置をゆっくりと上げるように立ち上がってください。それでもだめなら昇圧剤を使います。
●便秘
薬の副作用で便秘になるのは、自律神経のバランスがくずれていることが原因と考えられています。副作用止めもありますが、まずは、繊維質の多い食べ物をとる、運動をする、という一般的な対処方法をしてみましょう。
●勃起しない
男性の場合、勃起しない症状が起こることがあります。勃起しないのは、薬の副作用である場合と、病気の症状が原因となる場合とがあります。また勃起しないのは、本人の自信と直結した症状の場合もあります。病気の症状の改善や、薬の量を減らすなどの対処で、改善されていきます。
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統合失調症の薬で起こる副作用
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●顔や首が強くこわばって、そりかえる、目が斜め上を向いてしまう
【急性の場合】
こうした副作用を急性ジストニアといいます。
首から上に起こります。
このような状態になったら、すぐに病院に行ってください。
抗パーキンソン病薬という薬がよく効きます。注射をすると、およそ一五分くらいでこの副作用はなくなります。薬の副作用ですから、同じ薬をそのまま使うとまたこの副作用が起きやすいといえます。抗パーキンソン病薬を加えるか、薬の処方を変更するなどの対処が必要です。
【慢性の場合】
慢性の場合は、徐々にこのような状態になっていくので、この副作用に気がつかない人も多いです。
遅発性ジストニアといいます。
もし、統合失調症の薬をのんでいて、首の傾きが出始めたな、と思ったら、医者に必ず相談してください。
また、長年にわたって、このような状態であった人の場合は、抗パーキンソン病薬や薬の調整を行っても、残念ながら治りにくい場合もあります。
●そわそわして気分的に落ち着かない。足がむずむずする
こうした副作用をアカシジアといいます。
アカシジアは、慢性化することはなく一時的な副作用です。
そわそわしたり、足がムズムズしたり、座っていることができないなどの状態になります。この副作用は急性期の回復時に出やすいので、回復のサインだと考えられる場合もあります。
対処としては、①抗パーキンソン病薬を併用・増量する、②統合失調症の薬を減らす、などです。ひどい症状のときには、抗パーキンソン病薬の注射をすると効き目が早いです。
●口や舌が勝手に動く。チューインガムをかむように口をもぐもぐ動かす
こうした副作用をジスキネジアといいます。本人は意識していないで、気がつくとやっている感じです。これは、長い間統合失調症の薬をのみ続けると起こる副作用です。従来薬の方が起こりやすい傾向があります。抗パーキンソン病薬はききません。対処としては、統合失調症の薬を減らすしかありませんが、それでもとれにくい副作用です。薬を減らしすぎると、統合失調症の症状が悪くなる可能性があるので、そのバランスについて、主治医と相談してください。
●目玉がまぶたに半分かくれるほど上に行ってしまう
こうした副作用を眼球上転といいます。緊張したり、がんばりすぎたり、不安になったりする場合に起きやすい人もいます。とん服として抗パーキンソン病薬をのむと治ります。
●ゴックンとものを飲み込めない、うまくしゃべることができない
こうした副作用を嚥下困難、ろれつ不良といいます。口から、のどまでの筋肉の動きがうまくいかないことによる現象です。対処としては、のんでいる薬を調節してもらうか、抗パーキンソン病薬をのむ、などです。ただし、きれいに消えない場合があります。
●手がふるえる
コップを持つときや、力を入れるときに手がふるえたりすることを振戦(しんせん)といいます。対処としては薬を調節することが基本です。ただし、きれいに消えない場合があります。
●歩くときに前かがみになり、歩行が小刻みになる
こうした副作用をパーキンソン歩行といいます。対処としては薬を調節することが基本です。ただし、きれいに消えない場合があります。
●からだ全体が固まり、小刻みに震える。四〇度以上の高熱も出ている
こうした副作用を悪性症候群といいます。このような状態になったら、自宅での対処は絶対に無理です。そのためすぐに精神科の病院か救急病院に行ってください。のんでいる薬の内容も伝えてください。筋肉がこわばるため、筋弛緩剤で対処します。統合失調症の治療薬は一時中断する必要があるため、入院が必要となります。
●体重増加
月に一~二キロぐらいの増加である場合は、適度な運動によるダイエットをしましょう。体重増加があまりにも急激で大きい場合は、薬を変えた方がよいでしょう。糖尿病の傾向がある人の場合は、糖尿病が重くなってしまう可能性があるので、セロクエル・ジプレキサの服用は禁止されています。
●生理が不順になる
薬の副作用でホルモンのバランスがくずれることが原因で起こる副作用です。薬の量を減らすことで対処をします。婦人科に行く場合は、精神科の薬をのんでいることを伝えてください。
●出産していないのに、お乳が出る
この副作用は、乳汁漏(にゅうじゅうろう)といいます。乳首から、乳汁がじわっと漏れる感じで起こります。これは、プロラクチンというホルモンを上昇させやすい薬の副作用です。対処としては、プロラクチンを上昇させにくい薬に変えることが一般的です。
●立ち上がるときにめまいがする/のどが渇くので、ガブガブ水を飲む/便秘/勃起しない→うつ病の薬の副作用と対処は同じ
「こころの元気+」2007年6月号より →『こころの元気+』とは