SDM :シェアード・デシジョン・メーキングとは?(医師)


こころの元気+ 2014年1月号(83号)特集13より →『こころの元気+』とは


SDMは医療をどう変えるのか?

国立精神・神経医療研究センター 病院精神リハビリテーション科医長
坂田増弘

SDMとはシェアードデシジョンメーキング(Shared decision making)の略称で「協働的意思決定」などと訳されることが多いようです。

つまり、サービスの利用者(患者)と提供者(医師)が、意思決定(治療方針の決定)に関して目標を共有し、ともに力を合わせて活動することです。

このような医師―患者関係において、お互いは対等なパートナーであり、どちらかが優位ということはありません。医師が患者に治療方針を押しつけることもなければ、患者が医師のすすめを無視して治療方針を選ぶこともないのです。
決められた方針に従った結果についての責任は、医師と患者の双方が担うことになります。

日本でもSDMが重視されてきたのは、医療におけるゴールが「病気が治ること」から「個々の患者のリカバリー」に移り変わってきたからです。
患者によりめざすリカバリーの姿が違うからこそ、それを医師との間で共有し、互いに理解する必要があります。そして、リカバリーで重視されるのはプロセスであるからこそ、医師―患者の双方が協力して活動する、特に患者が積極的に治療に参加することが重要なのです。

ただし、SDMというシステムだけで医療が変わる、あるいは患者の人生の質(QOL)が向上するわけではありません。
医師が患者のリカバリーを大切にするのはもちろん、患者が自分のリカバリーをよく考え、医師に伝えなくてはいけません。
医療は患者がリカバリーのために利用するサービスの一つなのだという意識で役割やなすべきことを決め、実行するという積み重ねが、結果として患者の人生の質(QOL)の向上につながるのです。そして、医師もそこから喜びを共有することができるのです。