うつ病・統合失調症薬の副作用イラスト集とその使い方(医師)

「こころの元気+」2007年6月号より →『こころの元気+』とは 


うつ病・統合失調症薬の副作用イラスト集
マルで囲んで副作用チェック!/どんな薬にも副作用はある

監修 佐竹直子/国立精神・神経センター国府台病院精神科
イラスト 伊藤真理子/イラストレーター


どんな薬にも副作用はある


この特集は薬の副作用を減らして、元気になるためにはどのようにしたらよいのか、ということを知るために企画しました。

最初におことわりをしておきたいのは、どのような薬にも副作用はあるということです。
薬は体の中に入っていきますが、病気の症状だけに作用するのではなくて、他の部分にも働きかけることになります。
そのため、副作用があらわれるのです。

副作用がゼロという薬はないとはいえ、あまりにも副作用が大きくて、生活に支障をきたすような場合はどうしたらよいでしょうか。
そのようなときには、できるだけ副作用を減らすように主治医と相談をしながら、のんでいる薬を調整していくことが必要になります。


このイラスト集の使い方


まず、このイラストをごらんください。→イラストはコチラをクリック

このイラスト集は、うつ病・統合失調症の治療薬をのんでいて、おこりやすい副作用をまとめたものです。
まず、イラストにざっと目を通してください。

できれば、他の人と一緒に見ることをオススメします。
薬の副作用は、数か月以上かかって徐々にあらわれるものもあります。
その場合は、副作用が出ていることに気がつかない場合があるのです。
そのため自分だけではなんとなく見過ごしてしまう可能性もあるからです。

そして、「おや、自分と同じようなイラストがあるぞ」というものがありましたら、大きくマルで囲ってみてください。
そうすると、自分がどのような副作用をかかえているのか、ということがわかると思います。

そして、主治医に、このイラスト集を見せてください。
「私はこの副作用があるんです。できるだけこの副作用を減らしたいのですが、なんとかならないですか?」と話していただきたいのです。
つまり、このイラスト集を使って、治療に役立てていただきたいと思います。


自己判断ではなく主治医と


次に、副作用に対する対処方法をまとめました。
以下の対処方法は、あくまでも一つの参考です。
自分自身の判断で薬を減らしたりすると、よけいに症状が悪くなる可能性があります。
そのため、必ず主治医と相談をしながら、対処していただきますよう、お願いいたします。

☆薬を急にやめた体験や離脱についての情報は→ネット特集6「減薬・断薬・離脱」

※「こころの元気+」の離脱の特集→2016年5月号特集「知っておきたい離脱症状」

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うつ病の治療薬で起こる副作用
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●吐き気・むかつき

うつ病の薬をのみ始めた頃に起こる副作用です。SSRIやSNRIとよばれる、新薬の副作用です。
たいていは二~三日でなくなりますが、それでも吐き気・むかつきが続くようであれば、胃腸薬を併用したり、他のSSRIやSNRIに変えられないかを主治医と相談してみてください。ひどい場合には、SSRIやSNRIとは異なる三環系・四環系などの抗うつ剤に変更することもあります。

●頭が割れるように痛くなる

うつ病の薬をのんでいる場合に起こる副作用です。SSRIとよばれる、新薬に見られる副作用です。他の薬に変えることで出にくくなります。

●のどが渇くのでガブガブ水を飲む

とにかくのどが渇くので、何リットルもの飲料を飲んでしまいます。あまりにも水を飲み過ぎると、血液中のナトリウムの濃度が薄くなって、疲労感・頭痛・吐き気が起きます。さらにひどい症状の場合は、けいれん・昏睡状態・呼吸困難になる場合もあります。この状態を水中毒といいます。対処としては、アメや氷をなめて、口の中をしめらせておきます。また、一度にたくさんの水を飲むのではなくて、こまめに少量ずつ飲むようにするとよいでしょう。また、薬の量を減らすことで軽減されることもあります。

●立ち上がるときにめまいがする

こうした副作用を起立性障害といいます。自律神経のバランスがくずれることが原因です。対処としては、立ち上がるときに、頭の位置をゆっくりと上げるように立ち上がってください。それでもだめなら昇圧剤を使います。

●便秘

薬の副作用で便秘になるのは、自律神経のバランスがくずれていることが原因と考えられています。副作用止めもありますが、まずは、繊維質の多い食べ物をとる、運動をする、という一般的な対処方法をしてみましょう。

●勃起しない

男性の場合、勃起しない症状が起こることがあります。勃起しないのは、薬の副作用である場合と、病気の症状が原因となる場合とがあります。また勃起しないのは、本人の自信と直結した症状の場合もあります。病気の症状の改善や、薬の量を減らすなどの対処で、改善されていきます。

 

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統合失調症の薬で起こる副作用
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●顔や首が強くこわばって、そりかえる、目が斜め上を向いてしまう

【急性の場合】
こうした副作用を急性ジストニアといいます。
首から上に起こります。
このような状態になったら、すぐに病院に行ってください。
抗パーキンソン病薬という薬がよく効きます。注射をすると、およそ一五分くらいでこの副作用はなくなります。薬の副作用ですから、同じ薬をそのまま使うとまたこの副作用が起きやすいといえます。抗パーキンソン病薬を加えるか、薬の処方を変更するなどの対処が必要です。

【慢性の場合】
慢性の場合は、徐々にこのような状態になっていくので、この副作用に気がつかない人も多いです。
遅発性ジストニアといいます。
もし、統合失調症の薬をのんでいて、首の傾きが出始めたな、と思ったら、医者に必ず相談してください。
また、長年にわたって、このような状態であった人の場合は、抗パーキンソン病薬や薬の調整を行っても、残念ながら治りにくい場合もあります。

●そわそわして気分的に落ち着かない。足がむずむずする

こうした副作用をアカシジアといいます。
アカシジアは、慢性化することはなく一時的な副作用です。
そわそわしたり、足がムズムズしたり、座っていることができないなどの状態になります。この副作用は急性期の回復時に出やすいので、回復のサインだと考えられる場合もあります。
対処としては、①抗パーキンソン病薬を併用・増量する、②統合失調症の薬を減らす、などです。ひどい症状のときには、抗パーキンソン病薬の注射をすると効き目が早いです。

●口や舌が勝手に動く。チューインガムをかむように口をもぐもぐ動かす

こうした副作用をジスキネジアといいます。本人は意識していないで、気がつくとやっている感じです。これは、長い間統合失調症の薬をのみ続けると起こる副作用です。従来薬の方が起こりやすい傾向があります。抗パーキンソン病薬はききません。対処としては、統合失調症の薬を減らすしかありませんが、それでもとれにくい副作用です。薬を減らしすぎると、統合失調症の症状が悪くなる可能性があるので、そのバランスについて、主治医と相談してください。

●目玉がまぶたに半分かくれるほど上に行ってしまう

こうした副作用を眼球上転といいます。緊張したり、がんばりすぎたり、不安になったりする場合に起きやすい人もいます。とん服として抗パーキンソン病薬をのむと治ります。

●ゴックンとものを飲み込めない、うまくしゃべることができない

こうした副作用を嚥下困難、ろれつ不良といいます。口から、のどまでの筋肉の動きがうまくいかないことによる現象です。対処としては、のんでいる薬を調節してもらうか、抗パーキンソン病薬をのむ、などです。ただし、きれいに消えない場合があります。

●手がふるえる

コップを持つときや、力を入れるときに手がふるえたりすることを振戦(しんせん)といいます。対処としては薬を調節することが基本です。ただし、きれいに消えない場合があります。

●歩くときに前かがみになり、歩行が小刻みになる

こうした副作用をパーキンソン歩行といいます。対処としては薬を調節することが基本です。ただし、きれいに消えない場合があります。

●からだ全体が固まり、小刻みに震える。四〇度以上の高熱も出ている

こうした副作用を悪性症候群といいます。このような状態になったら、自宅での対処は絶対に無理です。そのためすぐに精神科の病院か救急病院に行ってください。のんでいる薬の内容も伝えてください。筋肉がこわばるため、筋弛緩剤で対処します。統合失調症の治療薬は一時中断する必要があるため、入院が必要となります。

●体重増加

月に一~二キロぐらいの増加である場合は、適度な運動によるダイエットをしましょう。体重増加があまりにも急激で大きい場合は、薬を変えた方がよいでしょう。糖尿病の傾向がある人の場合は、糖尿病が重くなってしまう可能性があるので、セロクエル・ジプレキサの服用は禁止されています。

●生理が不順になる

薬の副作用でホルモンのバランスがくずれることが原因で起こる副作用です。薬の量を減らすことで対処をします。婦人科に行く場合は、精神科の薬をのんでいることを伝えてください。

●出産していないのに、お乳が出る

この副作用は、乳汁漏(にゅうじゅうろう)といいます。乳首から、乳汁がじわっと漏れる感じで起こります。これは、プロラクチンというホルモンを上昇させやすい薬の副作用です。対処としては、プロラクチンを上昇させにくい薬に変えることが一般的です。

●立ち上がるときにめまいがする/のどが渇くので、ガブガブ水を飲む/便秘/勃起しない→うつ病の薬の副作用と対処は同じ

 

「こころの元気+」2007年6月号より →『こころの元気+』とは 

 

ぐっと身近になる研究の話 (207号)新連載

新連載
ぐっと身近になる研究の話
私達とどんな関係があるの?(207号)

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第1回 新連載の開始にあたって

ポイント
●前の連載は身体・脳・こころのつながりを伝える内容だった
●研究は当事者や家族の要望から始まることもある
●この連載は皆さんと研究にはつながりがあることを伝えるもの


前の連載をふり返って

私は、2022年8月号から2023年7月号の12回にわたり「身体・脳・こころを整える」を本誌に連載しておりました。

今回から始まる連載は、診療に何か問題があり、当事者が困っている事態を解決するために臨床研究は行われていることを知っていただくものですが、
前の連載「身体・脳・こころを整える」を踏まえて始めるものですので、まずは前の連載をふり返ってみたいと思います。


「身体・脳・こころを整える」の連載

前の連載は、『こころの元気+』の編集部の方が、
「薬の副作用を含めて身体的な問題で困っている当事者が多いので、そうしたことを伝えてくれる方はいないか?」と夏苅郁子(なつかりいくこ)先生に質問されたことがきっかけでした。
そして、夏苅先生が私をご推薦くださり連載が始まりました。

夏苅先生は、かねてから「『身体』と『心』はつながっているはず! 治療でも病態解明でも創薬でも、精神科医は患者さんの身体にも関心を持つ必要があるはず!」と、私と同じ意見をお持ちでした。
引き受けるのは当然でした。


身体面への配慮

夏苅先生のお言葉は、まったくそのとおりだと思います。
私自身は、他の診療科があり、種々の検査も可能な医療機関で精神科診療に携わってきましたから、身体面に関心を持つのは当然だったといえます。

最近は精神科医になる場合でも最初の2年間はさまざまな診療科を経験するのが決まりになっていますから、身体面も配慮した精神科診療をする精神科医が増えているのではないでしょうか?
(と期待しています)

 

関わった研究を活かして

前の連載の中では、私が関わった研究内容を引用することがありました。

たとえば、
○「睡眠時無呼吸があると、睡眠中に交感神経の過活動が起き、高血圧などが生じやすいが、精神疾患には睡眠時無呼吸が合併しやすい」2023年1月(191号)精神疾患と睡眠時無呼吸症候群より

○「一部の抗精神病薬を服用中の場合、血中プロラクチン(ホルモンの1種)が高く、性機能障害が生じている方が多いが、他の抗精神病薬への切り替えで改善する」2022年11月(189号)精神疾患の治療薬で起こりやすいホルモン異常、高プロラクチン血症)より

○「統合失調症の当事者の約0・5%を占める22q11.2欠失を持っている方々は、先天性の心疾患などの身体疾患を合併していることが多い」2023年4月(194号)精神疾患と身体疾患を同時に伴いやすい遺伝性疾患(ゲノム情報関連疾患))より
などです。

 

当事者・家族の声を研究に活かす必要性

研究は一般的に「いまだわかっていないことがらを明らかにしたい」という研究者の好奇心で進められます。

ただし、当事者の協力のもとで実施する研究(「臨床研究」といいます)の場合は、
「診療の問題点を解決したい、診療上の疑問点を明らかにすることで診療をよりよいものにしたい」との考えから、当事者・ご家族に説明をして、「この内容なら協力してもよいだろう」という当事者の同意を得て進めます。

「解決すべき診療の問題点」、すなわち「研究テーマ」の設定が重要ですが、当事者・ご家族から「このような研究をしてほしい」との願いをお聞きすれば、最優先の「研究テーマ」にしています。

●医師に相談する訓練で

たとえば、薬の悩みを当事者が主治医に相談する訓練をしたうえで実践するSSTプログラムを行っていたときのことです。

参加した複数の当事者から、「性機能障害で悩んでいた」との話をお聞きしました。
「性機能障害」は言葉にしにくいが、多くの方が悩んでいることがわかったので、
「言葉にしなくてもよい答えやすい性機能障害の質問紙を開発する」
「開発した性機能障害の質問紙による調査と血中プロラクチンの測定で、性機能障害や高プロラクチンの頻度と両者の関係を検討する」
「薬剤を変更したら性機能障害や高プロラクチンがどうなるかを検討する」
という研究を大学院生達と行って論文にし、その結果を前の連載に活かすことができました。

 

新しい連載

当事者・ご家族は「診療においても、研究においても、精神科医は患者さんの身体にも関心を持つ必要がある」との声を上げ続けてください。
その声は必ずや精神科医や研究者、診療や研究に関係する政府の機関に届きます。

この新しい連載は、研究が当事者や家族にとってどんな関係があるのかを伝え、研究が皆さんにとってぐっと身近なものになることを願い、
夏苅郁子先生・橋本亮太先生、そして私、尾崎紀夫の3人でお伝えしてまいります。

 


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ちょっと知りたい!  PPI(205号)

ちょっと知りたい! ※連載について→コチラ
第108回  PPI
Patient and Public Involvement(205
号)

○「こころの元気+
2024年3月号より ○申込について  
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筆者:黒川常治


PPIとは?

PPI(Patient and Public Involvement)という言葉を聞いたことはありますか? 
僕も最近知った言葉です。

日本語で「患者・市民参画」となります。
参加ではなく、参画(さんかく:参加よりも計画から積極的に関わるイメージ)です。

イギリスの研究分野で「患者や市民と共に研究が行われる」という考え方で始まりました。

日本では癌治療領域で進み始め、最近では研究だけでなく、医療・開発・政策・地域計画など広がりをみせています。

 

患者の声

患者(patient)には、症状や薬の副作用がある暮らしがありますが、長らく医療のあり方や薬の開発に、患者のそのような声は積極的には反映されていませんでした。
症状を改善することが優先だったのと、医療の絶対的な存在が強かったからでしょう。

徐々に患者の声を聴くことが増えてきて、今『こころの元気+』にも多くの患者の声が集まっています。

PPIではさらに深いところ、国や地域の計画を立てるときや薬の開発に患者達が参画し、専門家達と一緒に考えていこうというものです。患者の経験・知見・視点を取り入れて内容を深め、患者のよりよい生活へ近づけられると期待されています。

副作用や使いづらい点、
使用の感想、
生活への影響、
あると助かるもの、
配慮してほしいことなど、
専門家だけでは知り得なかったことが、新しいサービスや支援、開発の種になります。

 

実際参画してみて

僕自身も自治体の自立支援協議会の当事者委員として参画し、意見を出していました。
当時はヘルプマーク(支援や配慮の必要を知らせるマーク)が出始めた頃で、配布場所が限定的だったので、アクセスしのやすいところで、わかりやすく展開してほしいことを伝えました。

障害者分野の研修会の内容なども他の委員達と検討しました。

参画にあたり
意見は誰に何人に聴けばいいか。
言いやすいか。
広く意見を聴けているか。
わかりにくい言葉はないか。
どちらかの立場が強すぎていないか。
配慮はどうか
など課題もあります。

僕はPPIで、他の疾患患者やさまざまな立場の方とつながり始めています。

PPIが身近になって、いろんな意見が集まり、よりきめ細やかな治療、支援、サービスが広まることを望んでいます。


参考資料:
医薬産業政策研究所 PPI(Patient and Public Involvement)の最新動向-患者・市民参画の成長期-
厚生労働省 第83回がん対策推進協議会(資料):患者・市民参画(PPI)の現状と展望(帝京大学 有賀悦子)

 

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特集2 「20年前と変わったな」と感じること(203号)

特集2
20年前と変わったな」と感じること
(203号)
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精神保健福祉に関わる「20年前と変化したな」と感じることを皆さんにあげてもらいました。


環境の変化
石井麻由可さん(茨城県)


統合失調症の45歳女性です。

治療が始まったのは25歳のときでしたから、まさに20年間を過ごしています。

20年前最初に入院した病棟では、当事者は家族の厄介者として長期入院を余儀なくされ、その影響か人生の多くをあきらめている人が多かったです。
看護師は患者をあだ名で呼び、管理の問題が最優先で、当事者に向き合っているとは言い難い状況でした。
当事者の見た目も、薬の副作用でもうろうとしていたり、錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)があったりしてつらそうでした。

私自身も暗い未来しか想像できませんでしたが、28歳の頃、第二世代の薬(非定型抗精神病薬)の登場で、体調や考え方が目に見えて回復していき、デイケアに通所できるようになりました。

他にも、就労支援施設やグループホームなど、当事者の居場所が地域にできていきました。
そして、その頃には主体性を持って人生の選択をする生き方が、自分や仲間にも見られるようになりました。

新しい薬や仲間とのつながりや福祉施設の数々…。
20年前には想像できなかった環境が作られてきました。
当事者達の生き方も変わります。
挑戦できる分、失敗して悪化した話も聞きますが、ずっと管理され小さくなって生きなくてもいいことは、大きな変化です。

 


精神医療の変化
上原博史さん(大阪府)


私は現在診療所に通い、主治医から自閉スペクトラム症(ASD)と診断されています。

20年前は、発達障害という診断名はほとんど聞きませんでした。
しかし発達障害が流行になってしまい、20年前とずいぶん変わったなぁと感じます。

最近は「発達障害グレーゾーン」や「カサンドラ症候群」という用語も流行っています。
※発達障害グレーゾーン(特性や傾向はあるが、発達障害の診断基準を満たさない状態)
※カサンドラ症候群(自閉スペクトラム症の家族等との関係で生じる、身体的・精神的症状)

マスコミの影響もあり、発達障害はブームなのでしょう。
精神科医により、過剰診断されているのではないか? とも感じます。

うつ病、適応障害、PTSDなどの精神疾患も認知度が高まり、ポップになった感があります。
精神疾患を盾にする人も見かけるようになりました。
社会がいわゆる「心理学化」しているのではないでしょうか?

「医療化」していると思います。

向精神薬もなじみ深くなり、私の母親も近所の内科で、抗不安薬や睡眠薬をもらっています。
ワイドショーに精神科医がコメンテーターとして出演するのもあたりまえになり、精神科医のイメージも変わりました。
90年代くらいから、メンタルクリニックに行く敷居が低くなった印象を受けます。

 


民間組織の活用 
団和正さん(神奈川県)

私が住む市では、以前は個人が直接市役所の障がい者支援課に行って福祉関係の相談をしていました。

遠い役所まで行かなければならず、窓口は常に混雑していました。

最近、市内の3か所に障がい者専門の相談支援センターができました。
センターは民間の社会福祉法人等が市から委託されて運営しています。

私は最近、グループホームに入居しました。
最初はネット等で1人でグループホーム探しをしていたのですが、うまくいかず、市役所の障がい者支援課に行ったところ、自宅近くの相談支援センターを紹介されました。

センターの職員さんは、常に市内のグループホームを見回っていて、状況をよく知っていました。
相談すると、たまたま空きのあったサテライトタイプ(一般のアパートの何部屋かを借り上げて障がい者に貸し出すタイプ)のグループホームを紹介され、無事入居できました。

こういった役所だけではない、民間の組織を活用した福祉の充実の取り組みが増えてほしいと思います。

 


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特集2 生きづらさはどこからくるのか?(200号)

特集2
生きづらさはどこからくるのか?
(200号)
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「当事者だけで精神疾患の教科書を作る!」 無謀ともいえるプロジェクトを始めて4年半。ようやく2023年10月に完成します。その本のキーワードは「生きづらさをひも解く」。この本の執筆者の内の3人に「生きづらさ」をひも解いてもらいました。
(新刊『生きづらさをひも解く 私たちの精神疾患』については→こちら)


当事者とまわりの人の目線には違いがある

筆者:鈴木みずめピアサポーター)

 

精神疾患の見え方

皆さんは、病気や障害に対して「当事者の見え方と、まわりの人の見え方には違いがあるのでは?」と感じたことはありますか。
人それぞれ感じ方が違って当然だと思うこともできるのですが、精神疾患の見え方というのは立場によって違いがあるのではないでしょうか。

叫ぶ人

たとえば、ある人が突然叫び出したとしましょう。
この叫び出した人は、
「何だかこれまで感じていた不安が頭の中で一杯一杯になって、助けを求めたかったんだけども言葉にならないまま叫んでしまった」のかもしれません。

ところがまわりの人は「突然叫び出した」と感じます。

つまり、まわりの人にはそこに至る「これまで感じていた不安が頭の中で一杯一杯になった」というプロセスをすっ飛ばして「叫ぶ」というところしか見えていないのです。

ズレを図で表現

このような、精神疾患を取り巻く私達と世間の人が感じていることのズレを下の図(『私たちの精神疾患』の本より)で表現してみました。



まず、赤い点線で囲ってあるのが当事者である私達の全体像です。

私達の中には、外から見ただけでは知る由もない、いろいろな構成要素(その人の体験、感じ方、人間関係などなど)があります。その構成要素の中でも苦しみや生きづらさ(青い部分)は一部分であることがわかると思います。その人の全部が「苦しみ」でなり立っているわけではないのです。

さらにその苦しんでいることの中でも、症状として扱われるのは特徴のある部分だけです。
つまり、苦しみ(青い部分)の中の目立つ黒丸の点の部分が症状となります。

この図を見ればわかるように、この構成要素の中には、私達一人ひとりの健康的な部分や強み(黄色い部分)もたくさんあります。ところがどうしても苦しみや生きづらさ(青い部分)に隠れて気づきにくくなってしまいがちです。

 

注目するのはどこか?

ところで、お医者さん・支援者・家族・自分自身・そして世間の人達はこの図のどこに注目するのでしょうか。

精神科に限らずお医者さんの役割は、患者さんの苦しみとか症状を減らしたり、なくすことです。ですからまずは、私達の症状(黒丸部分)に注目します。
ところがなぜか、家族や支援者も症状(黒丸部分)に注目しがちです。

実は自分自身も、苦しみや生きづらさ(青い部分)に目が向きます。

さらに世間一般の(精神疾患を知らない)人達は、精神疾患を誇張したイメージの虚像(右上の灰色のしま矢印)に注目しがちで「あいつは危険人物」などと思っていることも、残念ながらあるでしょう。

そして皆が、健康的な部分や強み(黄色い部分)に目を向けることはあまりありません。
当事者が精神疾患という未解明な病気と生きていくうえで、このように立場で見え方が違うことは、生きづらさの1つとなり得ます。

 

全体像を見てほしい

本当は、すべての人に私達の全体像を見てもらいたいと思うのです。


そして健康的な部分や強みの部分(黄色い部分)のほうが、苦しみや生きづらさ(青い部分)よりも目立つようになるような関わり方をしてもらいたいのです。


 

生きづらさ

筆者:堀合悠一郎NPO法人 さざなみ会

 

生きづらさ

具体的な「生きづらさ」には、体の変調、集中力の低下などがあると思います。
その中には原因を求めてお医者さんに聞いても、病気の症状そのものなのか、または精神科で処方された薬の副作用なのか、実際にははっきりとはわからないものも多いのではないでしょうか。

病気の改善とともに、やわらいでいく生きづらさもある一方で、1つの生きづらさがさらに別の生きづらさを引き起こし、場合によっては二重三重になってしまうこともあると思います。

さらに苦しみに追い討ちをかけるように、当事者の側からすると「精神疾患ゆえに、二重三重につらい」という図式が、世間からみると「精神疾患ゆえに、そのつらさも仕方ない」という図式になっているようなのです。
具体的にみていきましょう。

 

わかってほしいのに

「つらさをわかってほしい」という自分としては当然の気持ちが、まわりの人達にかえってマイナスの反応を呼び起こしてしまい、「つらさをわかってもらえない」という新たな「生きづらさ」を生じることなどがそれです。

生きづらさを自分一人でかかえることは苦しいですし、
「それを誰かに伝えたい」
「つらさをわかってほしい」
というのは人間として当然の気持ちだと思います。

 

「わかるよ」と言えない

しかし、人は他人のつらさを同じ形で体験できないですから、相手も誠実さから、
「そのつらさ、わかるよ」という安易な共感の言葉をつつしむかもしれません。

結果として「つらさをわかってほしい」というその気持ちすら、すんなり受け止めてもらえないと感じてしまいます。

聞く側の負担

つらい思いの語りは、聞く側にとっても負担になり、うまく伝えられなかったりするとなおさら互いに感情的になるなど、悪循環におちいってしまうことがあると思います。
そんなとき周囲からは、
「うまく伝えられず聞き手に負担感を与えてしまうのだから、ちゃんと聞いてもらえないのも仕方ない」と思われてしまうかもしれません。

 

つらいものはつらい

しかし、それでも生きづらさとともに日々は続きます。
つまり「私のつらさをわかってもらいたい」と思いつつも、「何をやってもわかってもらえない」という相反する気持ちが入り混じりながら生活することになります。

本人のつらさをそのままに感じることができないこと、それは理屈のうえではわかりますが、このつらさは本人にとっては現実であって、つらいものはつらいのです。

このつらさをどう「いい感じ」に変えていくのか、ぜひ一緒に考えていきましょう。

 


「いい感じ」はどこからくるのか

筆者:由宇NPO法人 Green Wind

では、つらさをどう「いい感じ」に変えていくのか考えていきましょう。
「いい感じ」って、いったいどこからくるのでしょうか?「いい感じ」と深い関係のあること、それは「自己決定」とちょっとした「覚悟」です。

自己決定と「いい感じ」

たとえば人生。
「自分で決めるのと、他人に決められるのと、どちらがいい?」と聞かれて「他人」と答える方は少ないでしょう。

ただ、「他人に決められる」ことに寄りかからざるを得なかった不自由さがあった方は多いと思います。
親の呪縛・仕事の呪縛・その他さまざまな人間関係の呪縛など、それはまさしく「他人に決められる」状態です。

ただそんな中でも同じ境遇の仲間と出会えたとき、心がふっと軽くなったりします。
希望を見たような、そんな感じです。
これが「いい感じ」の片鱗です。

つらいと思っていた「生ききづらさ」も、仲間が同じ「生きづらさ」を感じていると知ってホッとするかもしれません。
そんな感覚の経験がある方はもちろん、経験がない方であっても、あきらめることなく「いい感じ」を味わうことはできるはずです。
「自分の意思で人生を決められる」ことの意味を、仲間達の体験を、じっくりと聴いてみませんか。

ちょっとした覚悟

ただ「自分で決める」ということは、時に「自分で選び、責任を持つ」ということでもあります。
自己決定の宿命とでもいうべきものです。

そこで出てくるもう1つのキーワードが、ちょっとした「覚悟」です。
「いい感じになるためには覚悟が必要?」と仲間達に体験も聴いてみたいものです。
聴くだけなら覚悟はいりません。

ちょっと覚悟をして、自己決定することによって、より「自由に選べる」ようになり、「いい感じ」に近づく可能性が広がります。
選択することが1つの「自己決定と自己責任」ならば、選択できる環境を手に入れるために自分の行動にもちょっとした「覚悟」が必要です。

仲間と一緒に

自分の頭で、手で、足で、力で、自分で「自己決定」できる人生。一緒に想像してみませんか?
今「一緒に」といいました。
そうなのです。
ひとりではないのです。
仲間と一緒に創り上げることで可能性は無限に広がります。

ちょっとした「覚悟」には、ほんの少しの勇気がいります。
でも仲間がいれば勇気は何倍にも大きくなります。
「いい感じ」と「自己決定・自己責任」は隣り合わせです。
そのためには、ほんのちょっとだけ「覚悟」が必要です。

でも大丈夫、私達がついています。

『生きづらさをひも解く 私たちの精神疾患』については→こちら)

 


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2007年発行

1号 : 3月   あなたの夢はなんですか?
2号 : 4月   私の元気回復と医療
3号 : 5月   私には私の元気行動回復プランがある
4号 : 6月   薬の副作用を減らして元気になる!
5号 : 7月   私は眠れない!
6号 : 8月   なまけてる、って思わないで
7号 : 9月   失敗を自分のプラスにしよう
8号 : 10月   再発してもだいじょうぶ
9号 : 11月   薬との新しいつきあい方
10号 : 12月   孤立しないで仲間と出会う

2008年発行

11号 : 1月   どん底体験があって、今がある
12号 : 2月   季節の変わり目、つらいです
13号 : 3月   生活してるとストレス感じます
14号 : 4月   恋愛もしたいし、結婚もしたい!
15号 : 5月   薬を減らして元気になりたい!
16号 : 6月   もっと私の気持ちをわかってほしい!
17号 : 7月   体を動かして元気になる
18号 : 8月   偏見をなくしたい
19号 : 9月   リカバリーってなんですか
20号 : 10月   家族の絆について考えてみる
21号 : 11月   自分の役割や居場所がほしい
22号 : 12月   私は働きたい

2009年発行

23号 : 1月   生きていくチカラ
24号 : 2月   リハビリについて知る
25号 : 3月   人に話しにくい性の悩み
26号 : 4月   生活のやりくり
27号 : 5月   当事者研究をやってみよう
28号 : 6月   自分の病気を理解してもらいたい
29号 : 7月   病気とのつきあい方とリカバリー
30号 : 8月   人づきあいってムズカシイ
31号 : 9月   支援があれば働ける
32号 : 10月   再発をしない生活
33号 : 11月   健康管理の基礎知識
34号 : 12月   不安なのです

2010年発行

35号 : 1月   小さな目標から始めてみませんか
36号 : 2月   薬のギモンQ&A
37号 : 3月   役に立たないと感じます
38号 : 4月   婚活のヒント
39号 : 5月   親なき後に備える
40号 : 6月   私の失敗談
41号 : 7月   今話題のACTってなんですか
42号 : 8月   身近になる認知療法
43号 : 9月   精神科医療の最新情報
44号 : 10月   気持ちがわかる接し方
45号 : 11月   問題を解決するコツ
46号 : 12月   何をやっても眠れない!

2011年発行

47号 : 1月   見方が変われば世界が変わる
48号 : 2月   再発したらどうするの
49号 : 3月   私の苦手なことを知ってください
50号 : 4月   ふみとどまって生きる
51号 : 5月   いいとこさがしで元気になる
52号 : 6月   親子で同居しています
53号 : 7月   みんな何を食べてるの?
54号 : 8月   もっと知りたい 広げたい ピアサポート
55号 : 9月   消えてしまいたいのです
56号 : 10月   精神科をめぐる今どき情報
57号 : 11月   なかなか症状が改善しない!
58号 : 12月   就職活動をしてみたい

2012年発行

59号 : 1月   病気の体験と私の生き方
60号 : 2月   創刊5周年 新しい時代をつくりたい!
61号 : 3月   薬の今を知りたい
62号 : 4月   まんが特集 入院してました
63号 : 5月   恋愛と結婚を本気で考える!
64号 : 6月   外に出られません
65号 : 7月   直前特集! リカバリーフォーラム
66号 : 8月   メンタルヘルスまんがの世界
67号 : 9月   元気回復行動プランをつくってみる
68号 : 10月   躁うつ病のことを知りたい
69号 : 11月   親を支える
70号 : 12月   うちまで来てくれるサービス

2013年発行

71号 : 1月   失敗しちゃいました
72号 : 2月   発表! ストレス発散ランキング!
73号 : 3月   お医者さんで苦労してます
74号 : 4月   まんが特集 私の気持ちをわかってください
75号 : 5月   からだにも元気をプラス!
76号 : 6月   自分の考え方のクセを知ろう
77号 : 7月   働くのが不安です
78号 : 8月   私は管理されたくない
79号 : 9月   家族も元気に!
80号 : 10月   みんな毎日ぐったりだ
81号 : 11月   発達障害のことを知りたい
82号 : 12月   メンタルヘルス映画の世界

2014年発行

83号 : 1月   精神科医療の未来が知りたい
84号 : 2月   恋をしたい ときめきたい
85号 : 3月   薬を正しく処方してほしい
86号 : 4月   まんが特集 ああ! コンプレックス!
87号 : 5月   つらくて泣いています
88号 : 6月   役所のことで苦労しています
89号 : 7月   看護師さんは何をしているの?
90号 : 8月   ペットに癒されたい
91号 : 9月   仲間の会のことを知りたい
92号 : 10月   決めつけないでください
93号 : 11月   正しい薬の減らし方
94号 : 12月   やめたくてもやめられない

2015年発行

95号 : 1月   安心して暮らしたいな
96号 : 2月   病名はどうやってつけてるの?
97号 : 3月   まんが特集 消えてしまいたい・逃げ出したい
98号 : 4月   食べること 動くこと
99号 : 5月   お金に関する制度を活用する
100号 : 6月   あなたの夢はなんですか?
101号 : 7月   こころの元気マイナス
102号 : 8月   巻きこまれてしまう関係
103号 : 9月   人に紹介したくなる病院を増やしたい
104号 : 10月   私の経験が役立つ
105号 : 11月   できれば長く働きたい
106号 : 12月   申し訳ないと感じます

2016年発行

107号 : 1月   コンボの2016年
108号 : 2月   いろいろなツールを使ってみる
109号 : 3月   まんが特集 精神科病院の世界
110号 : 4月   うつうつとしています
111号 : 5月   知っておきたい離脱症状
112号 : 6月   親なき後に備える
113号 : 7月   私の親は病気です
114号 : 8月   就労の福祉サービスを知る
115号 : 9月   ちょっと元気をプラスしたい
116号 : 10月   障害年金何が変わったの?
117号 : 11月   まんが特集 いやなこと苦手なこと
118号 : 12月   症状について考える

2017年発行

119号 : 1月   医療機関選びのコツ
120号 : 2月   メンタルヘルス ああ勘違い!
121号 : 3月   春を呼ぶリカバリー文化祭
122号 : 4月   恋愛の相手がいない
123号 : 5月   担当医に質問してみたい
124号 : 6月   LGBTのことが知りたい
125号 : 7月   入院ですか?
126号 : 8月   家族に知ってほしいこと
127号 : 9月   ぐっすり眠りたい
128号 : 10月   まんが特集 笑って元気プラス
129号 : 11月   副作用を減らしたい
130号 : 12月   イライラ・爆発何とかしたい

2018年発行

131号 : 1月   法定雇用率がアップする
132号 : 2月   待合室の世界
133号 : 3月   心理社会的療法ってなんですか?
134号 : 4月   まんが特集 働く生活
135号 : 5月   支援者で苦労しています
136号 : 6月   自分で決めちゃだめですか?
137号 : 7月   ピアのちから
138号 : 8月   リカバリーを知って変わったこと
139号 : 9月   偏見ってイヤです
140号 : 10月   まんが特集 お金のやりくり苦労してます
141号 : 11月   自己選択に役立つ治療ガイドライン
142号 : 12月   「回復力」を高める接し方

2019年発行

143号 : 1月   一人暮らし大作戦!
144号 : 2月   なんでこんなに生きづらいんだろう
145号 : 3月   よく考えると変じゃね?
146号 : 4月   災害に備える
147号 : 5月   まんが特集 睡眠あるある!
148号 : 6月   私のSOSに備える
149号 : 7月   病院でもリカバリー
150号 : 8月   当事者から伝える双極性障害
151号 : 9月   薬とのつきあい方が変わってきた
152号 : 10月   私と家族の距離
153号 : 11月   「ジョーシキ」って何?
154号 : 12月   生活の困窮何とかしたい!

2020年発行

155号 : 1月   未来を語ると何かが変わる
156号 : 2月   季節や気候の変化がつらいです
157号 : 3月   ピアスタッフになれますか?
158号 : 4月   私にとっての人薬と時薬
159号 : 5月   まんが特集 いろんな立場の恋愛・結婚
160号 : 6月   手を抜くことが苦手です
161号 : 7月   私のイエナカ生活
162号 : 8月   いじめが今でもつらいです
163号 : 9月   みんなが不安
164号 : 10月   まんが特集 最近あったちょっといい話
165号 : 11月   働くことってどうなってるの?
166号 : 12月   何だか心が折れそうです

2021年発行

167号 : 1月   私の言いたい放題
168号 : 2月   自分の気持ちを大事にしたい
169号 : 3月   入院ってどうなってるの?
170号 : 4月   私はがんばってる?
171号 : 5月   まんが特集 やめられないし、とめられない!
172号 : 6月   私のトリセツ
173号 : 7月   休み方がわからない
174号 : 8月   担当医のどうですかって何?
175号 : 9月   孤独と孤立
176号 : 10月   ピアサポートを文化にしたい!
177号 : 11月   まんが特集 私の知りたい精神疾患
178号 : 12月   ベンゾ系薬剤とのつきあい方

2022年発行

179号 : 1月   変えてみる!
180号 : 2月   お金のやりくり
181号 : 3月   私はあきらめない
182号 : 4月   メンタルヘルスあるある!
183号 : 5月   私の具合が悪いとき
184号 : 6月   相談力を高めたい
185号 : 7月   家族まるごとって何ですか?
186号 : 8月   当事者と医師が伝えるうつ
187号 : 9月   脳の疲れをとる
188号 : 10月   つながるって大変
189号 : 11月   まんが特集 これって私だけ?
190号 : 12月   涙が止まらない

2023年発行

191号 : 1月   私にできること
192号 : 2月   聞けなかった薬の話
193号 : 3月   睡眠と生活のリズム
194号 : 4月   働くことのハテナ
195号 : 5月   まんが特集 いろんな自慢話
196号 : 6月   ココロとカラダを整える
197号 : 7月   無理して生きてます
198号 : 8月   暑いのヤダ!
199号 : 9月   まんが特集 病気のサイン
200号 : 10月   生きづらさをひも解く

 

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特集1 熱中症について知っておくべきこと(198号)

特集1
熱中症について知っておくべきこと
─精神科治療薬の影響など(198号)

こころの元気+2023年8月号より
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筆者:上條吉人
埼玉医科大学 医学部 臨床中毒学

 

はじめに

夏になると精神科で通院・治療されている多くの患者さんが熱中症で救急搬送されてきます。
ここでは熱中症に対する基礎知識やその対応について理解していただければと思います。


熱中症とは

熱中症とは、暑い環境に身体が適応できない結果として生じる状態です。

皆さんが夏の暑い環境にさらされると、汗をかいたり、皮膚の血管が拡張して血液の流れが活発になって、気化熱や大気中への熱伝導によって体から熱を放出します。
ところが日本の夏のように湿度も高く、さらに風がない条件が重なると、体温調節は困難となり、汗が過剰に出て、脱水やナトリウム等の電解質の喪失が生じます。

軽症では、意識は保たれ、めまい・立ちくらみ・筋肉痛・こむら返り程度ですみますが、

中等症では、意識は何となく変で、頭痛・嘔吐・倦怠感・虚脱感・集中力や判断力の低下などの症状が生じます。

重症では、脱水が進行して臓器の循環が悪化し、さらに40℃を超える高体温も加わると、酵素が変性して酸素や糖を利用してエネルギーを作り出すミトコンドリアの機能が破綻して細胞機能が障害されます。
この結果、多くの臓器が連鎖的に障害され、意識障害・痙攣発作・肝障害・腎障害・横紋筋融解症・血液凝固異常などが生じます。

注意:2024年7月から、日本救急医学会が熱中症の重症度を4段階に改訂し、「最重症」を追加しました。
深部体温が40度以上、意思疎通ができない場合、Ⅳ度の「最重症」となります。

熱中症の対応

軽症では、応急処置として涼しい所で安静にして、体の表面を冷却し、口から十分な水分や塩分を補給します。
徐々に改善するようであれば大丈夫ですが、改善しない、または悪化するようなら医療機関を受診してください。

中等症では、必ず医療機関を受診してください。

重症では、すみやかな全身の冷却や集中治療室での治療が必要なこともあります。直ちに救急搬送してもらってください

 

精神科治療薬と熱中症

どうして精神科で通院・治療されている患者さんは体温調節が苦手なのでしょうか?

中枢神経系(ちゅうすうしんけいけい:脳や脊髄)では、ドパミンやセロトニンなどの脳内物質が体温調節の司令塔の役割を果たしています。
末梢神経系(まっしょうしんけいけい)では、自律神経である交感神経や副交感神経が汗の量や(血管を拡張または収縮させて)皮膚の血液の流れを変化させて体温を調節しています。

しかし多くの精神疾患では、脳内物質の働きに異常が生じています。また精神疾患の治療に用いる薬は、脳内物質の働きばかりでなく、末梢神経にも影響をおよぼします。

 

■抗精神病薬の副作用

たとえば統合失調症では、脳内のドパミンやセロトニンの作用が強くなっているので、これらの作用をおさえる薬(抗精神病薬)が使われています。
従って、体温調節の司令塔としてのドパミンやセロトニンの働きが破綻することがあります。

抗精神病薬の副作用で、筋強剛といって筋肉が硬くこわばると、筋肉内で熱が作られやすくなります。
重症の副作用である悪性症候群が起こった場合()著しい筋強剛から筋肉の組織が破壊され(横紋筋融解症)、38.5℃を超える高体温になります。
(※悪性症候群の発症率は、抗精神病薬服用患者の0.07~2.2%

また、多くの抗精神病薬は副交感神経の働きをおさえる働き(抗コリン作用)も持っていて、副作用として、汗の量が減ると皮膚が乾燥して気化熱によって熱を放出することが困難になります。

 

■抗うつ薬の副作用

また、うつ病では脳内のセロトニンの働きが低下しているので、おもにセロトニンの作用を促進する治療薬(抗うつ薬)が使われています。
抗うつ薬の副作用でセロトニン症候群が生じると()、イライラや興奮などの精神症状や手足が勝手にぴくぴくするといった神経・筋症状だけでなく、高体温などの自律神経症状も起こります。
セロトニン症候群は発症率については不明ですが、SSRI(選択的セロトニン再取りこみ阻害薬)の過量服薬患者の15%前後に発症するとされています)

このように、精神科で通院・治療されている患者さんは体温調節が苦手なのです。

 

最後に

精神科で通院・治療されている患者さんは、体温調節が苦手で、熱中症になりやすいので注意が必要です。
暑い環境にさらされて体調不良を感じたら、必ず熱中症を疑いましょう。

 

こころの元気+2023年8月号より
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コンボの動き 第87回こんぼ亭「身体・脳・こころを整え、命を守る」報告

コンボの動き
vol.116 コンボが主催・開催した活動や今後の開催予定です。


こころの元気+2023年6月号より
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○2023年4月15日開催  ※今後のこんぼ亭は→コチラ  ※終了したこんぼ亭は→コチラ
第87回こんぼ亭

身体・脳・こころを整え、命を守る
~身体合併症と私たちにできること」報告 

筆者:コンボ事務局


2023年4月15日の土曜日に第87回こんぼ亭「身体・脳・こころを整え、命を守る~身体合併症と私たちにできること」をオンラインで開催しました。

前半は、連載「身体・脳・こころを整える」の筆者尾崎紀夫さん(名古屋大学)による講演で、連載内容やアンケート結果をもとに、感染症・肥満・薬の副作用・睡眠・喉の渇きなどの説明をしていただきました。

後半では、ライブで参加者から送ってもらった以下のような質問について、答えていただきました。

(▼右:尾崎紀夫さん、左:市来真彦(亭主))


▼ Q&A
(一部抜粋)

●受けたくても、血液検査や心電図を受けられないクリニックがたくさんあります。
どうしたらよいでしょう?

●夜起きていて、昼間不規則に食べてしまう。
何を意識して生活すれば改善できるか?

 

▼ 開催後アンケート(一部抜粋)
開催後のアンケートから一部ご紹介します。

●息子が昔、リーマス(リチウム)を大量にのんでいましたが解熱鎮痛剤がよくないということ※を初めて知りました。
(※リーマス(リチウム)と解熱鎮痛剤を一緒にのむと、リチウム中毒になる恐れがある)
すべての精神科医が身体の病気の心配もしてくれたらと望みます。
ハルハルさん)

●質問コーナーで皆さん同じ悩みをお持ちとわかりました。
特に主治医が血液検査をほとんどしてくれない、肥満の問題などです。
先生からの解決に向けてのアドバイスが参考になりました。 

5センチメートルさん)

●作業所の健康講座で、利用者さん達に(今回の内容を)伝えさせてもらいます。
まず体重測定から始め、BMIを一緒に計算することから自身の体への関心を持ってもらうようにしていこうという腹積もりです。
明日香さん)

●心電図や睡眠時無呼吸症候群などは初めて知りました。
自治体のがん検診や特定健診の案内が来ますが、調子が悪くて受けられない年も多いです。
今後は少し意識して受けようと思いました。
みるさん)

 

こころの元気+2023年6月号より
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こんなときどうする? 私の打ち手(184号)新連載!

こんなときどうする? 私の打ち手(184号)

※「こころの元気+」2022年6月号より
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新連載です!
今月号から、さまざまな精神疾患とつきあいながら自分らしく生きる方々に、症状や問題などを解決したり楽にするために自分が行っている「打ち手」を教えてもらいます。


第1回
○働けなくなったときの工夫
○病気と主体的につき合うコツ

著者:TAKさん(愛媛県)

 

自己紹介

50代で四国の中山間地域で林業と執筆をしています。
病歴は25年あまりの統合失調症当事者です。

 

働けなくなったときの工夫

40代前半まで上場会社で会社員をしていました。
30歳を過ぎて発症し、ずっと病をかかえながら、時々入院したり、入院はしないまでも家で静養したりして会社員を何とか続けていました。
幻聴がひどくなって、行動もおかしくなって仕事どころではなかったときは薬の副作用で眠たかったし、治療の本などでも「ゆっくり休むとよい」と書いてあったので、薬をのんでひたすら家で眠りました

起きているときは、外に出られるようなら、近所を散歩したりもしました。

あとは読書が好きなので、読みやすい小説を読みました(吉川英治さんの『新書太閤記』などを、このとき読みました)。
難解な社会科学のテキストや心理学(精神病の自覚ができてきたので、病気のことを知りたくて)は避けました。

だんだん薬にも慣れて、活動できるようになると復職しました。
しかし幻聴がひどいのと、薬の副作用で体を押さえつけられるような感じがして、会社にいるだけでかなり疲労がたまりました。
病状がひどくなって自分から飛びこむように病院に入って、気づいたら大学病院の閉鎖病棟のベッドの上だったこともあります。

入院していたときは、親から、
「体がなまるから廊下を歩け」と言われていたので、暇なときは廊下を歩き回っていました。
女性の患者さんも比較的元気な人は歩いていました。

入院時にせよ、家で静養するにせよ、とりあえずよく眠って回復するのを待つというのがよかったと思います。
ましになって、ウォーキングをくり返し、体力も戻って、また復職です。
それから数年は仕事も何とかやれました。
そのくり返しでした。

 

病気と主体的につきあうコツ

会社を辞めて、しばらく経って薬もやめて体は軽くなったのですが、問題行動を起こして結局入院させられました。
それから退院して元気になったのですが、数年後また入院しました。

結局、薬を減らしたり、断薬すると再発します。
病気と主体的につきあっていくコツについて書きますと、
幻聴は今でも時々聞こえますが、正しいと思うことには素直に従い、間違っていると思う・受け入れられないと思うことは拒否します。

普段はもうほとんど幻聴もないんですが、時々1人でブツブツ言っています。
やはり幻聴とやりとりしているんです。

でも、会社員をやっていたときほどひどくはありません。
あの頃は、周囲の同僚や上司が、ボソボソなんかつぶやいているように見えて仕方ありませんでした。
今は、そんなことはありません。
もっとも今住んでいるところは過疎の限界集落なので、そんなに他人に会うこともなく、自然の中でゆったり過ごせます。

病状は会社員時代よりも軽くはなっていますが、病気とのつきあい方に慣れてきたのが大きいです。
状態がひどいときはじっとして、家にいるなら布団の中に入ってゆっくり休みますし、外出しているならその場所でしばらくじっとしているかです。

車の運転をしているときは、なぜかほとんど幻聴を意識することはないので助かっています。

今まで、精神科医の先生の書いた本を読んだり、主治医に言われたことから対処法を身につけて、だいぶましになってきました。
ただ断薬はやはり怖いと思います。
どうなるかわかりません。これだけは気をつけねばと思っています。

 

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特集2 日常生活あるある!(182号)

特集2 日常生活あるある(182号)
こころの元気+2022年4月号より

日常生活での「あるある」を皆さんから投稿していただきました。

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ドタキャンしがち!
ソムオーさん(神奈川県)

楽しみにしていた友人とのお茶会。
前夜に何を着ていくか悩み、あれこれと試着してみる。
コーディネイトが決まって、準備万端!
翌朝、興奮しすぎたか、あまり眠れず、体調不良でドタキャン


鏡を見なくなる!
おにくさん(愛媛県)

化粧できない、
お風呂も入れずベタベタの頭皮、
荒れた肌、
泣いて腫れた目を見たくないし、
最終的にはその状態でも周囲の目線を気にする余裕もないから、鏡を見なくなります(笑)。


なかなか作業所を卒業できない!
ひーぽさん(茨城県)

作業所に10年以上通っています。
作業所以外にアルバイトなどにも挑戦したいですが、外の世界(作業所以外の仕事場)に出るのが怖くなってしまいました。


「無理しないでね」と言われすぎて、もやもやする!
キムさん(兵庫県)

自分の不注意で骨折してしまったが、何とかリハビリと思ってがんばって動いていたら、
「無理したらあかんよ」
とよく声をかけられる。

「リハビリと思ってやっているから」とか、
「転ばないように慎重にします」とか、
いちいち説明するのもしんどいので、ニッコリ笑顔で「ありがとう」と返すと、それ以上は話が深まらずに楽です。
お気持ちは本当にありがたいのですが何人もに言われるとねえ…。


片づけ方がわからない!
みーたんさん(岡山県)


▲イラスト:富田暁音

部屋が物置みたいになってて、片づけようと思って始めるけど、
どこから片づけていいかわからない。
どう片づけたらいいかわからない。
なので、だいたいあきらめる。
これは、けっこうあるあるだと思う。


あいさつするのは、いつも私が先!
トロピカルドリンクさん(神奈川県)

私の職場は、医療系の障害者福祉施設です。
障害のある方をお世話する人達が働いているので、皆さん人にやさしくて、いい人達だろうと思っていたのに…。
働き始めてしばらくして、みんな自己主張が強くて、弱い者をイジメてマウント取ってえらそうになってる人達に気づいてしまいました。
目が合ったかと思ったら無視されたり、こちらからあいさつしないかぎり無視の連続です。


お風呂に入れない!
みさこさん(東京都)

うつのときは、とにかく動くのがおっくうになり、入浴がむずかしくなります。
特に髪を洗って乾かすのが面倒で、入浴できない日が何日も続いてしまいます。


輪ゴムがたくさんたまる!
藤枝脩平さん(岩手県)


▲イラスト:富田暁音

薬のシートを束ねる輪ゴムが、診察のたびにたまっていって、捨てずにとっておいたらとんでもない量になった。


朝と夜のテンションが違う!
大野美波さん(埼玉県)

朝と夜のテンションがまったく違うという人をよく聞きます。
私も朝はわりと元気で、夕方になるとくたくたになってしまい、何もやる気が出ません。
以前は逆に夜にハイになっていました。
平均的に元気でいられたらいいのですが、ペース配分を見誤ってしまいます。


外出先ではトイレの場所をチェック!
文さん(千葉県)

不安の強さと薬の副作用で、喉が渇きやすく、外出先でよく水分をとります。
すると必然的にトイレが近くなるため、どこへ行ってもまずはトイレを探します。
見つかると一安心です。


ピア仲間だと、何でも体調のせいにしがち!
齊藤和弘さん(三重県)

ピアの友達との間では、よく「体調が悪いから」っていう理由でお互い片づけます。
たとえば、会話がはずまないと、
「おれ今日、体調が悪いから本調子じゃないんだよね」
「わかるわかる。おれも体調が悪いから」
と、こんな感じです(笑)。

 

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