特集1 グループホームとは何ですか?(211号)


特集1
グループホームとは何ですか?(211号)
○「こころの元気+2024年9月号より
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筆者
特定非営利活動法人 東京ソテリア→詳しくはコチラ
   東京ソテリアハウス


グループホームとは

『障がいや病気があっても、地域で希望の生活をおくるために、自立と社会参加をサポートする』その1つの方法にグループホームがあります。
障がい者が必要な支援を受けながら地域で暮らせる共同生活の住まいの場であり、障害者総合支援法上の障害福祉サービスの「共同生活援助」というサービスです。

今回グループホームについて、入居者の声も伝えながら、考えていきたいと思います。

環境

○施設や病院でなく、家
○地域の人々が暮らす場所にある
○大規模な施設でなく、小規模で家庭的な環境

たとえば、私達の家「東京ソテリアハウス」は、東京下町の駅近、商店街が近い住宅街にあります。

2階建ての一軒家(シェアハウス型)と近隣のマンション(アパート型)が住まいの場です。

シェアハウス型は同じ建物に仲間やスタッフがいる安心感があります。
アパート型はプライバシーがあり、1人暮らしに近い環境で1人暮らしのイメージ作りや練習ができ、かつ近くに仲間やスタッフがいる安心感があります。

また入居者からは、「安心・安全な住まいがあると生活が安定する」という声を多く聞きます。
不安からくる症状が軽減したり、仕事や社会参加へチャレンジできていくという声もあります。

利用対象者

18歳以上の障害者で次のような方が、地域での安定した生活や自立をめざし入居します。

○家族からの自立をめざす人
○施設や入院から地域での生活をめざすが、単身での生活に不安がある人
○単身生活の継続がむずかしくなった人
○家族の高齢化や病気などにより、サポートを得られなくなる人

グループホームは、地域移行や地域生活の継続の場となっています。

支援

スタッフは、入居者と家族の希望や意向を確認し、生活の中でアセスメントしながら、個人や状況に応じた個別支援計画を利用者と作成します。
この計画にもとづいて、次のような相談・生活・社会参加への支援を行います。

○必要に応じた入浴や排泄、食事の介助
○日常生活の困りごとの相談
○家事・金銭管理
○健康管理・服薬の管理
○行政手続き等の支援
○症状悪化時の緊急対応
○就労先、日中活動先との連携・余暇活動支援
○外出の同行
○家族支援
○利用者同士のコミュニケーション支援
…等

これらの支援を受け、それぞれの方の目標や課題に添った地域生活での自立や社会参加の実現をめざします。

支援の特徴

○住まいと支援が一体的に提供されます。
○生活の場での見守りやアセスメントにより、生活全体を見ての日常的な相談、支援を受けることができます
○訪問系サービスのように、支援の内容によって時間を分けることなく、総合的なサポートを受けることができます。
○危機的な状況に、早期に介入することができます。

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支援者

管理者」⇨いわゆる施設長。
サービス管理責任者」⇨個別支援計画を立てて、関係機関との連絡調整を行う。
世話人」⇨相談や日常的な支援を行う。
生活支援員」⇨生活の介助を行う。
また、「夜間支援員」の職員を配置し、深夜まで対応できる体制を整えている場合もあります。

基準や役割に応じ、専門職や地域スタッフが配置されていて、ピアスタッフ(当事者スタッフ)が働いているグループホームもあります。

支援者は、グループホームでの支援において、生活を共にし、支える重要な環境です。

共同生活

支援者・入居者との共同生活をおくる住まいでは、食事やレクリエーションの機会、交流室(リビング)での交流などもあります。
その回数や内容は、グループホームによりさまざまです。

入居者の中には、入院や療養生活で家族以外との交流や地域で生活する経験が少ない方もいます。
グループホームでは、生活を共におくるという小さなコミュニティでの経験を積むこともできます。

家族ではなく他人との共同生活は、時にぶつかることもありますが、ほどよい距離感がある安心できる関係が生まれていくように思います。
このような家族でない他人とのコミュニティの経験が、地域での他者とのつながりを作るステップとなっているようにも思います。

また、入居者同士の交流はピアサポートでもあります。
共同生活の経験やつながりが孤立を防ぎ、感情の安定、社会性の向上につながります。

家族との関係

入居前は、家族だけが生活や療養・入退院のサポートをしたり、症状から時に家族への暴力になったりすることがあります。
家族が大きな負担を感じ、関係が悪化することもあります。

入居により、家族の負担を減らし、家族だけがかかえず、地域でのサポートを受けられます。
グループホームの支援・生活を経て入居者の安定や回復により、家族は安心を得ることもできます。

また入居して家族とほどよい距離ができ、お互いのストレスが減って関係がよくなったと話す入居者もいて、このように家族関係の回復や維持につながることもあります。

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Aさん・Bさんの体験

精神科病院を退院し、グループホーム入居したAさん

Aさんの入居後の不安

心待ちにした退院でしたが、3週間経っても生活に慣れないと不安な様子です。
相談することか苦手で、以前不安を1人でかかえ、別のグループホームを飛び出してしまったこともありました。

入居後3か月から半年は、グループホームの生活に慣れるのに大変な時期です。
スタッフはAさんに、「場所もまわりの人も環境も大きく変わり不安になることは当然ですよ」と声をかけ、見守ります。
生活の手続きに同行し、生活リズムが整っているか金銭の不安がないか等、漫然とした不安につながらないようサポートを心がけます。

BさんもAさんをサポート

Bさんは、Aさんより1か月前に入居。
「最初の1か月は本当に大変だった、落ち着かなかった」とAさんの不安に共感し、世間話をしたり、Aさんが困っていそうなことをスタッフに教えてくれたりします。

Bさんも新たな通所が始まり、緊張しているときもありますが、スタッフやAさん、他の仲間と食事をしたり、コーヒーを飲んだりしながら、息抜きをしている様子。

AさんBさんは現在も、環境に慣れることに奮闘中です。

Cさんの体験

10年の入院期間を経て、入居したCさん

グループホームと生活訓練の事業所で金銭管理を支援。
ヘビースモーカーでタバコ代がかかり、月後半は食事代も不足する状況。
「今日3千万円ふりこまれるはずだ」と最後の千円もタバコに使うこともありました。
お米や缶詰を月の初めに買うなど試行錯誤しました。

安心して失敗できる場所

タバコがなくイライラしているとき、友人のDさんが無料の映画に誘ってくれて、乗り切ることもありました。

本人の希望でグループホームで金銭預りはせず、一緒にプランを立てて自己管理し、2年が経ちました

入居してすぐは「病気だから働けないよ」と話していたCさん。
ある日、タバコ代が稼げるからとB型作業所に通所を開始。

数か月後、「月末にお金がなくならなくなった」
「仕事をすると、タバコを吸うのと同じくらい頭がすっきりするんだ」と、タバコの本数が減ったことでやりくりできたとニコッと教えてくれました。

グループホームの種類

「介護サービス包括型」
「日中サービス支援型」
「外部サービス利用型」
「サテライト型」
があり、立地や夜間や日中の体制が異なります。

また、東京都には
通過型グループホーム」という、利用期限最大3年間で、1人暮らしへの移行をサポートするグループホームがあります。

国の制度でも、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定で、グループホームから1人暮らし等に向けた支援への加算が設けられました。
今後、東京都以外でもグループホームから1人暮らし等への移行のサポートの充実の流れがあります。

このように、住み続けることのできるグループホームと、1人暮らし等への移行をサポートするグループホームがあります。

費用

○障害福祉サービス費
(原則1割負担。収入に応じた負担上限額あり)
○家賃(補助を受けられる場合あり、自治体に確認を)
○食材費、水道光熱費、日用品費などは入居者の実費負担

利用の方法

①まずは自治体の障害福祉課や相談支援事業所に、相談
⇨②グループホームを紹介
⇨③見学(要予約)
⇨④体験入居
⇨⑤障害福祉サービス受給者証手続き(自治体、または相談支援事業所に相談)
⇨⑥利用契約
⇨⑦入居

 

グループホームのメリット

○住まいの確保
○自立した生活への支援
○社会的孤立を防ぐ交流の場
○個別のニーズに合わせた生活支援
など(特集3や6も参考に)

グループホームのデメリット

●個人の自由が制限される場合がある
●人により、共同生活が負担に感じる
重複障害医療ケアが必要な方の受入れが少ない
など(特集4や6も参考に)

 

自分に合った場所を

グループホームは実にさまざまです。

入居希望の場合は、相談や見学・体験をとおして自分に合った場所を探してください。
あなたに合った場所に出会い、そこで希望する生活を実現していけますように。


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