トピックス 精神障害者への運賃割引について(210号)


トピックス 〈皆さんにお伝えしたい話題があるときのみ特別に組まれるコーナー〉
精神障害者への運賃割引について(210号)
100km以下はなぜ割引にならないのか?

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筆者:奥田和男
みんなねっと 交通運賃割引推進プロジェクトチーム 事務局長)


2024年4月の発表

2024年4月11日、JRと大手私鉄が精神障害者への割引実施を発表しました。
2025年4月にはJRグループと大手私鉄16社が揃って割引制度を導入することになります(導入時期は各社で異なる⇨下表クリックかタップで拡大 

 


(△みんなねっとの表は→コチラから

みんなねっと(全国精神保健福祉会連合会)が2014年から精神障害者への運賃割引運動を始めて10年、ついに大きな山が動きました。

無条件には喜べない

しかし今回の実施内容の発表は、もろ手をあげて喜ぶことはできません。
むしろこれからの運動が問われています。

なぜなら多くの会社に、本人が1人で交通機関を利用した場合、101㎞以上はすべての手帳所持者が割引されるのに100㎞以下は割引にならないという条件があるからです(条件は各社で異なる⇨上の表)。

どうしてこのような不合理な制度が続き、修正されなかったのでしょうか? 
私達は理解することができません。
日常生活で利用できる制度への改善を求めていきます。

取り組みの始まり

みんなねっとでは、2014年6月5日の第7回定期総会で「身体・知的障害者同等に交通運賃割引制度の適用を求める決議」を採択しました。
そして「JRなど交通運賃割引推進プロジェクトチーム」を立ち上げ、全国の家族が力を合わせて取り組むことを決めました。

アンケートや署名活動

はじめに、交通事業者など関係者の皆さんの理解を得るために、精神障害者の交通機関の利用の現状や割引実施に対する思いなどをお聞きするアンケート調査を全国の家族・当事者に行いました。
その結果、4818人から回答を得て、1か月の平均収入が60287円という一般就労が困難な現状があり、交通運賃の負担が外出にブレーキをかけている実態が明らかになりました。

そして2015年から、国会請願100万人署名の取り組みが全国各地で始まりました。

 
翌2016年5月の請願署名の国会提出行動には62万筆の署名が集まり、全国から家族162名が参加し、衆参174名の議員が紹介議員になってくれました。
国会請願は、3年後・4回目に衆参両院で採択されました。

こうした取り組みと並行して、国土交通省をはじめ、各地で交通事業者への要望や地方議員、国会議員への働きかけなどにも取り組みました。

各地で実施へ

その結果、各地の路線バスや中小私鉄をはじめ、名古屋市や札幌市、福岡市、北九州市の市営交通が市外在住の精神障害者への割引を実施。
さらに飛行機では、日航(JAL)と全日空(ANA)が第1種、第2種の区分を廃止して、3障害の手帳所持者を共通の制度として実施。

また、大手私鉄の西鉄(西日本鉄道)は、100㎞以下の割引制限がない制度で実施しています。

今後

JRと多くの大手私鉄は、どうして100㎞以下は割引にならないのでしょうか。

このような日常生活に利用できない不合理な制度は、もっと早く改善されるべきであったと考えますが、見直しはされずにきました。
今回の精神障害者への割引を契機に改善しなければなりません。

みんなねっとは、割引を待ち望んできた精神障害者の皆さんと共に、そして、身体障害者、知的障害者の皆さんと共に、100㎞以下の割引制限を廃止して障害者手帳を持つすべての人が距離に関係なく割引の対象になる制度の実現に取り組みます。

 

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