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第110回 パーソナル・メディスン(207号)
○「こころの元気+」2024年5月号より
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筆者:坂本明子(認定パーソナル・メディスン・コーチ/久留米大学 文学部社会福祉学科 准教授)
▼パーソナル・メディスンとは?
パーソナル・メディスンは直訳すると「個人の薬」ですが、医師が処方する薬ではありません。
いい感じでいるために自分が自分のためにやっていることで、パトリシア・ディーガンさんの経験と調査から誕生したものです。
10代で統合失調症を患い、否応なしに聞こえる苦痛な声に苦しんでいた頃、ウォークマンで好きな音楽を聴いていたら、その声に影響を受けないことに気がついたそうです。
「この自分にできることがあるという発見がリカバリーの扉を開いた」とパトリシア・ディーガンさんは言います。
▼誰にでも
その後、精神疾患を経験している方々に調査を行ったところ、処方薬以外に、自分でやっている人生の意義となる大きなことや日常の小さなことが役立っていると教えてくれたそうです。
症状や問題を軽減するために、自分の内にある知恵や治癒力を使ってやっていることは誰にでもあったのです。
▼現実的で具体的で多様
こうして誕生したパーソナル・メディスンは、さらに効くように条件を設けています。
摂取するものではなく、いつかやってみたい目標でもなく、今自分がやっていることなどです。
とても現実的で具体的で多様です。
たとえば、毎夕、愛犬と自然の中を散歩することが私のパーソナル・メディスンです。
嫌なことがあっても散歩すると気分がすっきりします。
特にコロナ禍の制限のある暮らしの中で、ふさぎこむ気持ちを切り替えるのに役立ちましたし、孤立せずにすみました。
改めて、自分のためにやれていることを実感でき、「自分自身に頼っても案外大丈夫」と安心した経験となりました。
▼日本では
ところで、自分のパーソナル・メディスンは、自分にしかわかりません。
ですが認定パーソナル・メディスン・コーチ(※1)によるサポートを受けつつ、見つけ、使い続けることもできます。
(※1 認定パーソナル・メディスン・コーチ:個人のパーソナル・メディスンを見つける際にサポートをする人)
またアメリカでは、セルフケアに対して自主的にやることが増えた、生活の質が向上したという報告もされています。
SAMHSA(※2)によってエビデンスにもとづくリカバリー志向の実践としても認められています。
(※2 SAMHSA(サムサ):アメリカ連邦保健省薬物依存精神保健サービス部)
けれど、日本ではまだ始まったばかり。
乞うご期待! です。