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第109回 家族まるごと支援(206号)
○「こころの元気+」2024年4月号より
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筆者:蔭山正子(大阪大学高等共創研究院 教授)
▼家族まるごと支援とは?
「家族まるごと支援」は、学問的にはfamily-focused practiceやwhole family approachという概念が近いと思います。
家族を単位として家族成員間の関係性や家族が置かれている環境を含めて、包括的に(まとめて)支援します。
家族成員(成員=メンバー)は互いに影響を与え合う存在であり、家族は社会や環境から影響を受けるという基本的な考え方があります。
コンボは2014年度から3年間「リカバリー全国フォーラム地方版分科会」を開催しました。
そのときに私達は、家族支援分科会のテーマに「家族まるごと支援」という言葉を提案しました。
▼「家族まるごと支援」の言葉にこめた願い
家族は長年、病気の当事者の病状がよくなることを目標として適切な接し方について勉強してきました。
しかし、精神疾患の発症は家族にとっても衝撃であり、家族全体に影響を与えることが多いと思います。
ですから支援者は、支援を必要とする家族がいないかよく知る(アセスメントする)ことが必要です。
家族も1人の人間として尊重される必要があります。
また、親、きょうだい、配偶者、子どもでは、悩みや困難も異なります。
家族成員それぞれに目を向けてほしいという願いを「家族まるごと支援」にこめました。
▼「家族まるごと支援」の特徴
私が思うに「家族まるごと支援」には、
①家族全体の負荷量や環境を調整する
②家族成員1人ひとりを支援する
③家族成員の関係性を支援する
という特徴があると思います。
ある配偶者の方は「以前はケンカが多かったが家事援助サービスが入ることで家族全体に少し余裕が生まれてやさしくなれた」(①負荷量を調整)と言われました。
一方で、相談に行っても病気の当事者のことは聞かれるけれど「私(妻)の話は聞いてもらえなかった」(②1人ひとりの支援がない)と言う人もいます。
ある親は、「私の相談や娘の相談にのってくれたけど、家族3人の間に入って調整してくれる人はいなかった」(③関係性の支援がない)と言われました。
▼「家族まるごと支援」の精神分野での定着を
「家族まるごと支援」はまだ定着していません。
家族を支援するということは、高齢者、小児、がん、難病などの在宅看護領域では当然のことです。
これを精神分野でも定着させる必要があると思います。