新連載 エッセー
壮大じゃない話(203号)
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筆者:星野概念
精神科医 など。医療のほか、執筆や音楽活動も行う。対話の世界観や、当たり前に安心して生活できる場について考えている。
著書に、いとうせいこう氏との共著が2冊、単著が2冊ある(いとうせいこう氏との共著『ラブという薬』と『自由というサプリ 続・ラブという薬』
単著『こころをそのまま感じられたら』『ないようである、かもしれない 発酵ラブな精神科医の妄言』)。
第1回
自己紹介させてください
明けましておめでとうございます。
今これを書いているのは2023年9月末ですが、こうして皆さんにごあいさつをしているのは2024年1月号。
3〜4か月後の未来、自分や自分のまわりの世界はどうなっているのだろうと思いながら書いています。
僕はすべてのものごとはずっと、すごく少しずつ変化し続けていると思っています。
すべての変化は、少しずつすぎて一見変化していることがわからないのですが、しばらく時間が経ってみると実感できる程度の変化が積み重なって、何か変わったぞという気づきになるのだと思います。
何かの変化に気づくには、3〜4か月は十分な期間だと思うので、どうなっているのかなぁと思うのです。
あれ。大事なことに気づきました。
この連載は今回が初回。
皆さん、僕が何者か知らないですよね。
大変失礼しました。
気を取り直して自己紹介をさせてください。
▼同じ誕生日の有名人
僕はふだん精神科医として精神医療や福祉の現場に関わることが多いです。
誕生日が4月15日なのですが、同じ誕生日の有名人はTHE ALFEEの坂崎幸之助さんです。
メインボーカルではないけどたくさん歌い、リードギターではないけど誰よりもたくさんギターを弾く。
坂崎さんの肩書きってむずかしいと思うのですが、ボーカルとかギタリストとかわかりやすい肩書きに縛られず、やりたいことをたくさんやっているように僕には見えます。
ステキですよね。
同じ誕生日の人にはレオナルド・ダ・ヴィンチもいます。
坂崎さんのことは「さん」づけ、ダ・ヴィンチは呼び捨て。
こういう現象って少なくないと思うのですが、何が関係しているのでしょうか。
坂崎さんは、映像で観たことがあるから存在している実感がありますが、ダ・ヴィンチは存在していた記録しか知りません。
それによって、「偉人」という知識のような感覚になっているのかもしれません。
記録によると、この人もまた、ものすごくいろいろなことに取り組んでいた人のようです。
▼いろいろ取り組んできました
坂崎さん、ダ・ヴィンチの後に自分の話をするなんて、誇大的な流れを自らつくっている気もするのですが、僕も4月15日生まれとして、何やらいろいろなことに取り組んできました。
☆「星野概念」で検索すると、星野さんのいろいろな活動がよくわかります(編集部より)
思春期の前半までは、バスケットボールの選手になりたいと思い、未来日記に頻繁に、「ゆくゆくは身長188㎝以上になる」といったことを書いていましたが、まるで叶いませんでした。
そのせいか、最近書籍や動画で時々見かける「夢は書いておくと自動的に叶う」といった文言にはかなり懐疑的です。
20代〜30代中盤までは音楽を生業にしたくて、バンド活動に心血を注ぎましたが、生業にできませんでした。
その後、神田橋條治先生の書籍に出会い、強く惹かれて精神医療に関する研鑽をすることにして今に至ります。
バスケでも音楽でも夢を叶えられなかったのは悲しいですが、診療の中でバスケ好きな人と盛り上がったり、訪問診療のときに小さな音で一緒にギターを弾いたり歌ったりしたときには、それらに取り組んでいてよかったと思えました。
▼なんかいい場に
僕は医師としての実質的な修業を30代中盤からしているので、年齢の割に医療的な経験値は少なく、それを引け目に感じています。
でも、これまでいくつかのまったく重ならないような方面に興味を持ち一生懸命取り組んだことは、今自分が取り組んでいる医療にも生きている気がします。
ものごとと同様、人は変化していくので、どこに行き着くかわかりませんが、大切だと思うことや興味のあることに一生懸命でいたいと思います。
きっとこの連載もまとまらないものになるに違いありません。
4月15日生まれ、いや、誕生日にかかわらず、時々そんな人もいるということで許してください。
よくわからないけど、読んでみたらなんかいい。
この場がそういう場になっていくといいです。