特集2
「20年前と変わったな」と感じること(203号)
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精神保健福祉に関わる「20年前と変化したな」と感じることを皆さんにあげてもらいました。
環境の変化
石井麻由可さん(茨城県)
統合失調症の45歳女性です。
治療が始まったのは25歳のときでしたから、まさに20年間を過ごしています。
20年前最初に入院した病棟では、当事者は家族の厄介者として長期入院を余儀なくされ、その影響か人生の多くをあきらめている人が多かったです。
看護師は患者をあだ名で呼び、管理の問題が最優先で、当事者に向き合っているとは言い難い状況でした。
当事者の見た目も、薬の副作用でもうろうとしていたり、錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)があったりしてつらそうでした。
私自身も暗い未来しか想像できませんでしたが、28歳の頃、第二世代の薬(非定型抗精神病薬)の登場で、体調や考え方が目に見えて回復していき、デイケアに通所できるようになりました。
他にも、就労支援施設やグループホームなど、当事者の居場所が地域にできていきました。
そして、その頃には主体性を持って人生の選択をする生き方が、自分や仲間にも見られるようになりました。
新しい薬や仲間とのつながりや福祉施設の数々…。
20年前には想像できなかった環境が作られてきました。
当事者達の生き方も変わります。
挑戦できる分、失敗して悪化した話も聞きますが、ずっと管理され小さくなって生きなくてもいいことは、大きな変化です。
精神医療の変化
上原博史さん(大阪府)
私は現在診療所に通い、主治医から自閉スペクトラム症(ASD)と診断されています。
20年前は、発達障害という診断名はほとんど聞きませんでした。
しかし発達障害が流行になってしまい、20年前とずいぶん変わったなぁと感じます。
最近は「発達障害グレーゾーン」や「カサンドラ症候群」という用語も流行っています。
※発達障害グレーゾーン(特性や傾向はあるが、発達障害の診断基準を満たさない状態)
※カサンドラ症候群(自閉スペクトラム症の家族等との関係で生じる、身体的・精神的症状)
マスコミの影響もあり、発達障害はブームなのでしょう。
精神科医により、過剰診断されているのではないか? とも感じます。
うつ病、適応障害、PTSDなどの精神疾患も認知度が高まり、ポップになった感があります。
精神疾患を盾にする人も見かけるようになりました。
社会がいわゆる「心理学化」しているのではないでしょうか?
「医療化」していると思います。
向精神薬もなじみ深くなり、私の母親も近所の内科で、抗不安薬や睡眠薬をもらっています。
ワイドショーに精神科医がコメンテーターとして出演するのもあたりまえになり、精神科医のイメージも変わりました。
90年代くらいから、メンタルクリニックに行く敷居が低くなった印象を受けます。
民間組織の活用
団和正さん(神奈川県)
私が住む市では、以前は個人が直接市役所の障がい者支援課に行って福祉関係の相談をしていました。
遠い役所まで行かなければならず、窓口は常に混雑していました。
最近、市内の3か所に障がい者専門の相談支援センターができました。
センターは民間の社会福祉法人等が市から委託されて運営しています。
私は最近、グループホームに入居しました。
最初はネット等で1人でグループホーム探しをしていたのですが、うまくいかず、市役所の障がい者支援課に行ったところ、自宅近くの相談支援センターを紹介されました。
センターの職員さんは、常に市内のグループホームを見回っていて、状況をよく知っていました。
相談すると、たまたま空きのあったサテライトタイプ(一般のアパートの何部屋かを借り上げて障がい者に貸し出すタイプ)のグループホームを紹介され、無事入居できました。
こういった役所だけではない、民間の組織を活用した福祉の充実の取り組みが増えてほしいと思います。