ちょっと知りたい!  セルフ・コンパッション(199号)


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第103回  セルフ・コンパッション(199号)

こころの元気+2023年9月号より
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筆者:水野雅之
筑波大学 人間系(学生相談室)准教授

 

セルフ・コンパッションとは

セルフ・コンパッションとは、苦痛や心配を経験したときに、自分自身に対して思いやりの気持ちを持ち、苦痛に満ちた考えや感情をバランスがとれた状態に保つことと定義されます(※1より)。
(※1:Neff, K. D. (2003). Self-Compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2, 85–101.)

アメリカの心理学者である、クリスティン・ネフによって提唱されました。

日本語でセルフ・コンパッションを紹介した有光によると、直訳では、「自分への慈しみ」や「自分への思いやり」となりますが、コンパッションには多くの意味が含まれるため、カタカナで訳したとのことです(※2より)。
(※2:有光興記 (2019). セルフ・コンパッションと「あるがまま」 心理学ワールド, 87, 13-16.)

セルフ・コンパッションはウェルビーイングと関連し、抑うつや不安、ストレスを下げるなど、良好な心の状態を導くことが多くの研究でくり返し示されてきました。

 

セルフ・コンパッションを持つことのむずかしさ

しかし、自分を思いやることがむずかしいのも事実です。
何かで失敗してしまったり、うまくできなかったりしたとき、ついつい自分を責めてしまうのも人間として自然な反応です。

私も日々の生活の中でうまくいかないときに、「何でもっとがんばれないんだろう」と考えてしまいがちです。
同僚にセルフ・コンパッションを紹介したときには、「自分にやさしくするなんてイメージできない」と言う人もいました。

 

セルフ・コンパッションを持つには

セルフ・コンパッションを持つための工夫として、
『自分と同じ状況や課題で悩んでいる友人がいる』
とイメージしてみてください。

友人が傷ついて苦しんでいる様子を見て、あなたはどのような言葉をかけるでしょうか?

その友人にかける言葉を、自分に対しても言ってみる、というのがセルフ・コンパッションを持つための第一歩になるかもしれません。

急に新しいやり方で自分に接するのはむずかしいものです。
また、これまで自分に対してつらくあたってきた自分もまた大切な自分ですし、そうせざるを得ない事情があったはずです。
セルフ・コンパッションを持てない自分にも、少しずつでもいいので、やさしく接してみてください。

 

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