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第98回 承認(194号)
著者:吉田佳子(当事者家族)
(連載:トラウマインフォームドアプローチでも執筆)
▼承認とは
今回、ここで取り上げるのは、認知行動療法の1つである「弁証法的行動療法(べんしょうほうてきこうどうりょうほう)」における「承認」で、次のように定義されています。
○本人の反応は理にかなっており、(本人の反応は)本人がかかえる現在の生活と文脈状況では理解可能であると伝えること。
○真に理解可能な行動(身体感覚・感情・思考・行為)の一片を見出して、それを理解可能であると伝えること。
▼承認ってむずかしい?
私がこの「承認」を知ったのは、家族スキルアップグループ(長谷川メンタルヘルス研究所の当事者家族の会)での学びをとおしてでしたが、初めはこの定義を見ても「何のこっちゃ??」という感じで、頭で理解するのはなかなかむずかしく、当事者である娘との関わりや自分自身の体験の積み重ねをとおして少しずつ、「ああ、こういうことなのか」とわかってきたように思います。
▼私自身の変化
「承認」を知る前の私は、私の常識による善悪の判断、価値観の押しつけ、親としてのよかれと思う言動で娘をますます苦しめ、私自身も「私は間違っていない。精一杯やっているのに」という感情で苦しくなりました。
そんな中、「承認」を学んだ私が、その後どう変化したのかをまとめてみると、
●私が「正しい」と思う常識や価値観、フィルターをすべて脇に置いて、本人の言動を何も価値判断せず、よく観察する。
それがどんなに理解できないような言動(たとえば私への暴言や物を壊すなど)でも否定せず、少しでもできていることや共感できることを見つけて伝える。
●本人の体験を安易に自分の体験にあてはめて“わかったつもり”にならない。
「わからないことは、わからない」と正直に認める。
●自分がまず元気で心に余裕がないと冷静な対処もむずかしくなるので、一時的に距離を置いたり、私自身がリフレッシュする時間を持つ。
●本人が気持ちを伝えやすいような工夫(筆談や、苦しさを数字で表す等)をする。
これらのことは、本人にとって一番身近な親である私がまず「安全・安心」な人となり、環境(=承認的な環境)を作るために必要でした。
承認には決まったパターンがあるわけではなく、そのような環境や関係性の中で生まれるものなのだと思います。