ちょっと知りたい! ※連載について→コチラ
第93回 HSP(189号)
(ハイリー・センシティヴ・パーソン)
著者:野網 惠
(一般社団法人 長谷川メンタルヘルス研究所 臨床心理士、公認心理師、医科学博士)
HSPとは?
米国の臨床心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱された概念Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティヴ・パーソン)の頭文字をとってHSPといいます。
全人口の約5人に1人の割合で存在するHSPは、性格や弱さなどではなく医学用語や診断基準などでもなく、とても敏感な神経システムを生まれ持った人を表します(※1)。
HSPの特徴
特徴は、感覚処理感受性の高さと環境の影響を受けやすいことで、その程度には個人差があります(※2)。
共感性が高く、ささいなことにもよく気がつき、におい、温度、音、他者の表情や感情、人間関係、環境などあらゆる刺激や状況に集中的に反応し、徹底的に処理する傾向があります。
そのため神経が高ぶりやすく、高ぶり過ぎると、身体面では不眠や疲弊など、行動面では社会的不快感が生じて思うように行動できないということが起こり得ます(※1)。
行動する前に、よく観察し、熟考することを好み、せかされることや短時間に多くを行うことを好まない(※3)、ひきこもるか無理をし過ぎる(※1)などの傾向もあります。
神経が高ぶっていないとき、高い感受性は長所として働きます(※1)。
HSPと精神疾患との関連
HSPと精神疾患との関連にエビデンス(科学的な根拠)はありません。
抑うつや不安を「HSPのせい」と思いこみ、適切な治療を受ける機会を逃すことがないよう、自分の普段の状態を把握しておくことが大切です。
今後に向けて
自分と折り合いをつけて、よりよい生活をおくるために必要な、アーロン博士による4段階のアプローチ(※1の13~15頁)を記します。
1「自己認識」HSPである自分を理解すること、
2「リフレーミング(捉え直し)」HSPの気質を持って生れついたという視点からこれまでの体験をポジティブに捉え直す、
3「癒し」深い傷を慎重に、かつ適切な時期に癒す、
4「外の世界に出ても大丈夫だと思えるように。また、外の世界に出るのを控えるべき時もあることを学ぶ」関わりにおけるバランスを学ぶ。
あなたも感受性を活かし、自分にとっての効果的なアプローチ方法を具体的に考え、試みてみませんか。
資料
※1:エレイン・N・アーロン著. 冨田香里訳. ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。SBクリエイティブ. 東京. 2008.
※2:Bianca P Acevedo, Elaine N Aron, Arthur Aron, et al. The highly sensitive brain: an fMRI study of sensory processing sensitivity and response to others’ emotions. Brain and Behavior, 4(4):580-94. 2014. doi: 10.1002/brb3.242.
※3:Elaine N Aron, Arthur Aron, Jadzia Jagiellowicz. Sensory processing sensitivity: a review in the light of the evolution of biological responsivity. Pers Soc Psychol Rev, 16(3):262-82. 2012. doi: 10.1177/1088868311434213.