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第91回 IPS(意図的なピアサポート)(187号)
著者:宮本有紀
(東京大学大学院 医学系研究科 精神看護学分野 准教授)
IPS(アイピーエス)とは?
Intentional Peer Support (インテンショナルピアサポート:IPS)は、日本語では「意図的なピアサポート」と訳されます。
「人との関係性やそこで起きる対話に目を向け、向かいたい方向に意識を向けよう」
と精神科領域のピアサポートに関連して、米国でShery Mead(シェリーミード)さんが始めました。
「お互いに新たな可能性へと開かれていくように意図(意識)を向けていこう」というあたりに「意図的な」の意味があるようです。
IPSでは信頼できる人との関係をとおして、自分に対する思いこみや他者との関わり方のパターンに気づき、新たな見方をめざし、互いに新しい考え方を試してみることで開かれた関係性を作っていこうとします。
また、IPSでは、互いに通じ合う感覚がピアサポートの根本にあると考え、自分や他者の世界観に目を向け、相互性を重視し、望ましくないことを避けるのではなく進みたい方向へ向かうことに意識を向けることを基本的な考え方として、人と人との関係性や対話に目を向けます。
もう1つの「IPS」
「IPS」という略称は、個別就労支援(Individual Placement and Support)でも使われ、どちらも精神保健領域で(同じ人が両方に関わっていたり)、まぎらわしいので、就労支援のIPSを「就労のIPS」、意図的なピアサポートを「関係性のIPS」と呼び分けることもあります。
IPSの魅力
久野恵理さんや関係者の尽力でShery Meadさん達に来日いただき、2008年にIPS研修会が開催されて以降、IPSに関連した研修会や各地での勉強会が開催されています。
米国ではピアサポートスペシャリストとしての認定要件にIPSの研修があげられている州もあり、精神保健領域のピアサポートに携わる方々が多くIPSを学んでいる印象です。
しかし日本では、立場にかかわらず「疾患や障害ではなく人間としてのピアとしてこの考え方を学びたい」という人達も多く、当事者のほかに、専門職で参加している人達も多いのが特徴だそうです。
私自身はIPSの考え方に触れて、他者との関わり方や自分とのつきあい方で気づくことが多く、自分が楽になってきたと感じています。
また参加している毎月の勉強会では、日々流されている自分が、IPSを学ぶ仲間の皆さんとお話をしたり静かな時間を過ごしたりする中で、自分の真ん中に戻ってくるような感覚を得ています。