ちょっと知りたい!
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第85回
MHSW(エムエイチエスダブリュー)
※「こころの元気+」2022年3月号より
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著者:木太直人
(公益社団法人 日本精神保健福祉士協会 常務理事)
▼MHSW
なじみのない文字列ですが、MHSWは、
Mental Health Social Worker(メンタルヘルスソーシャルワーカー)の略称です。
日本精神保健福祉士協会は2020年6月の通常総会において、定款に規定する団体名称の英語表記をそれまでの
Japanese Association of Psychiatric Social Workers(略称JAPSW)から
Japanese Association of Mental Health Social Workers(JANHSW)に
変更しました。
▼変更に至るまで
協会内では10年以上前に、国際的なソーシャルワークの動向にくわしい当時の役員から、
国際的にはMHSWと呼称することが一般的で、PSWを用いる国がかなり限定される状況になっていること、
JAPSWの文字列が一部日本人の蔑称と重なることから、
略称を変更すべきと提案がありました。
しかし、日本においては「PSW」がすでに浸透しており、
少なくとも保健医療福祉業界ではPSWと言えば精神保健福祉士のことを指すと認知されていることに加え、
精神保健福祉士が国家資格化される前からPSWとして活動してきた者にとっては、
「P」は専門職アイデンティティの象徴でもあり、
団体創設以来の略称変更の議論は長期間におよぶこととなりました。
一方この10年で、「メンタルヘルス」や「メンタル」という言葉は国内で広くいきわたりました。
精神的不調をかかえる人が、それだけ増えていることの反映でもあり、民間企業や行政機関・教育機関が事業継続性を確保していくうえで、メンタルヘルス対策は欠かせないものとなっています。
それと共に、精神保健福祉士が支援の対象とする人も、精神疾患や精神障害のある人を中心としつつも、メンタルヘルスに課題のある人やその潜在層にまで広がっています。
このような情勢を受けて協会は、まずは団体名称の英語表記と略称を変更することを選択しました。
現段階(2022年2月時点)では、精神保健福祉士がPSWとMHSWのどちらを名乗るかは、個々の選択にまかせています。
難点は「エムエイチエスダブリュー」と発音しにくいことです。
いつの間にか「メンヘルワーカー」が浸透してしまうかもしれませんが、それもちょっとなあと思う精神保健福祉士は少なくないようです。
精神保健福祉士は精神障害のある人の社会的復権のために国家資格化されましたが、20年経った今もそのことを果たせていません。
「P」の心胆を受け継いだMHSWが、自然と浸透していくことを願っています。