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第82回
超短時間雇用
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著者:松清あゆみ
(東京大学先端科学技術研究センター
人間支援工学分野)
▼超短時間雇用とは?
東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野が提唱しているインクルーシブな(多様な人々と共に働くための)雇用モデルです。
障害の有無にかかわらず人々が共に働ける新しい雇用モデルで、週に15分や1時間からでも、通常の職場で役割を持って働くことのできる働き方と、そうした働き方を実現するための地域社会システムを構築しています。
これまで川崎市や神戸市の地域制度として実現されてきた他、ソフトバンク㈱では、「ショートタイムワーク制度」という社内制度として実現してきました。
▼6つの要件
現在、超短時間雇用モデルを実践するうえで、次の6つの要件をあげています。
①採用前に、職務内容を明確に定義しておく
②定義された特定の職務で、超短時間から働く
③職務遂行に本質的に必要なこと以外は求めない
④同じ職場で共に働く
⑤超短時間雇用を創出する地域システムがある
⑥積算型雇用率を独自に算出する
①の職務を明確に定義することは、超短時間雇用モデルにおいて最も重要なポイントと考えています。
従来の日本型の雇用慣行では、採用時に職務定義がなく、採用後に配属部署で職務が割り当てられる流れが一般的で、配置転換に伴う担務変更にも柔軟に対応しなくてはなりません。
超短時間雇用モデルでは、人を採用してから仕事を割り当てるのではなく、まず職場に必要な仕事を明らかにします。
部署内の職務分析により、求める仕事の内容、時間数、給与水準、さらにその職務を遂行するのに必要なスキルも明確にします。
そうすることで、その職務ができる人をマッチングできるため、雇用する側もされる側もWin-Winな働き方を実現できます。
⑥の積算型雇用率とは、企業内や地域内で超短時間の労働時間を積み上げて、週30時間換算で何名分の雇用を生み出しているかを算出する取り組みです。
障害者雇用促進法の雇用率とは関係のない独自の取り組みですが、超短時間雇用という新しい働き方による多様な人々の労働参加を目に見える形にするために実施しています。
▼現状(2021年時点)
2015年からソフトバンク㈱、2016年から川崎市、2017年から神戸市とモデル実装を進めており、現在その他の自治体へも広がっています。
2015年9月から2021年3月までで延べ約250件の雇用が創出されました。