「こころの元気+」2016年8月号(114号)の「おこまりですか?」のコーナーより
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Q 昔の記憶がよみがえり、こまります
私は、30代女性です。
大人になってから「発達障害」と診断されました。
私のように大人になってから診断された人の中には、二次障害(発達障害とは別に、もともとなかった二次的に起こる障害)に苦しむ人も多いのではないかと思います。
二次障害としては、うつ病、不眠症、フラッシュバックなどがあると思いますが、私はフラッシュバックに悩んでいます。
私は、10年ほど前に、学校の先生から叱責を受け、いやな記憶をたくさんつくりました。
不登校のときにも、「怠けている」と言われ続けました。
私のフラッシュバックとは、そうしたいやな記憶や、人から言われた声などが、頭の中で鮮明に吹き出してくるのです。
そうすると、1人で怒ったり、愚痴が増えていき、過去の記憶に支配されて困っています。
どうしたらよいか、ご意見やアドバイスをお願いいたします。
A 1人でかかえこむものでない
(兵庫県)せれなさん
フラッシュバックに悩んでいるとのこと、本当につらいと思います。
私も時々、昔のできごとがフラッシュバックして、今も悩んでいるうちの1人です。
フラッシュバックのときは自分でもどうしようもないくらい苦しいですよね。
私のフラッシュバックのできごとは、強い希死念慮から身体を動かすことができなくなり、大きな駅で倒れ、救急車を呼ばれてしまったときのことです。
そのときの動かない自分の身体の重さを思い出します。
調子が悪いときは、家にいても救急車の音を聞くたびにフラッシュバックしてつらくなります。
質問者さんはそうしたとき、怒ったり愚痴を言ってしまわれるとのことですね。
過去の記憶に支配されてしまうのはつらいことですが、もし、そのことでまわりに愚痴を言ってしまったとしても、その方が質問者さんのことを受け止めてくださる方であれば、フラッシュバックを少なく、そして、軽くしていける何かヒントのようなものをもらえるかもしれません。
過去のつらい記憶を忘れることはできないと思います。
ですが、1人でかかえこむものでもないと思います。
フラッシュバックしたときの感情を誰かに聞いてもらったり、紙に書き出したりすることを私は行っています。
また私の場合は音楽の演奏や料理などですが、質問者さんも、つらいときでも打ちこめるものを1つでも持っておくこともよいと思います。
A できることを少しずつ
(東京都)ねこままさん
今までどんなにつらい思いをされてこられたか想像すると、胸が痛みます。
我が家にも似た問題をかかえた息子がいます。
中学に入り、様子がおかしいので調べたところ、重い発達障害とわかりました。
その診断名さえ知らずに育ててしまったので、深く傷つけてしまったと思います。
それまでの健診で何も指摘はありませんでした。
周囲から非難され、侮辱され、言葉の暴力をたくさん浴びてきました。
今、やはり事あるごとにいやな記憶がよみがえり、それは怒りという形になって現れます。
本人もそれはよくないとわかっているのですが…。
児童精神科医の佐々木正美先生によれば、「発達障害は忘れられない障害」とのお話でした。
その状態を改善するには「『いやな記憶』を『よい記憶』に置き換えていくこと」と聞きました。
よい記憶の積み上げです。
また主治医から以前勧められたのは、
①大声を出してよい環境をつくる
というもの。
たとえばトイレや押入れで思い切り怒りの声を出すなど。カラオケボックスで声を上げるのもよいでしょう。
息子を見て効果があるのは、
②体を使うこと
好きなスポーツがあればよいし、水泳や水中ウォーキング、ヨガもよいそうです。
③自分に合ったフリースペースなどで、安心の場を見つけること
もよいですね。
過去のことは過去のこと。
今、熱中できることを少しずつやって方法を探していきましょう。
すぐに結論が出るものではありませんが、必ず変わってくると思います。
後悔している母親からの一言です。
A できないと割り切る
(愛知県)小池慎一郎さん
私も最近、発達障害と診断された32歳の男です。
とても共感したので、書かせていただきました。
私も過去のトラウマになっていることが、突然フラッシュバックするときがあります。
たぶん、そのトラウマを思い出すようなできごとに遭遇したときに思い出すのだと思います。
私は、フラッシュバックしたときは落ちこみ、うつ状態になります。
2次作用でうつ病も患っています。
普通の人より劣っている、普通の人ができることが何度やってもできない。
32年間とてもくやしくて、劣等感の気持ちをずっとかかえていました。
そんなある日、発達障害の人は苦手なことは多いけど、得意分野では誰にも負けないくらいの力を発揮できることに気づきました。
できないことをできるまで努力するのはとても大事だと思います。
でも、どうしてもできないなら、よい意味であきらめて、得意なことや好きなことに時間や力を使うのが大切だと気づきました。
「発達障害は無限の可能性が秘められている」と主治医に言われました。
負けずぎらいな私は、今自分探しをしている最中です。
いろんなことにチャレンジしています。
お互い,つらい過去を打ち消すためにも,得意分野を探してとことん極めてみませんか?
きっと今までと違う自分を発見できると思いますよ。
フラッシュバックを打ち消すには、誰にも負けないものがあるという自信が大事だと信じてます。
A 生きているのはいつも「現在」
(神奈川県)シュメールさん
私は40代の統合失調症の男です。
私も過去25年分のフラッシュバックに苦しんでいるのでペンをとりました。
相談者さんは、過去のネガティブな記憶に〈支配〉されているとのことなので、スゴくつらい状態とお察しします。
私の経験からは、それでもその「記憶」は残念ながら消えてくれません。
ですが過去の記憶に対する解釈は変えられます。
たとえば「あー、不登校のとき怠けていると言われたけど、発達障害だったのだし、まわりの理解も得られなかったのだから仕方ない」
というような感じです。
それから、過去=「現在思い出している過去」=現在ではありませんか?
つまり、今現在に何らかの見えない問題が潜伏していて、生きづらくなっているために、過去のものがフラッシュバックしてくるのかもしれません。
ですから、もう少し現在に着目して、背景にあるかもしれない問題を抽出してみてはいかがでしょうか?
「それは経済的問題なのか?」
「話せる人はいるのか?」
などです。
お一人で怒ってらっしゃるのは気になります。
私の場合は、就職がなかなかできないという現在の問題があるために、過去のネガティブなものがフラッシュバックします。
ですので、福祉施設を利用するなど、現在に焦点をあてて行動しています。
一朝一夕にはいきませんが、お互い過去の呪縛から解放されることをお祈りします。
A 変われたという自信で
(神奈川県)ホワイトヒロくん
私も発達障害の30代男性です。
二次障害として、双極性障害Ⅰ型も発症しています。
発症のきっかけとなったのが、大学時代の教授と助教授による人格否定でした。
この二人が発した数々の暴言が、いまだに鮮明に残っています。
事例の一つとして、「お前はバカ犬、ブレーキもハンドルも壊れた車、廃人、狂人」などがありました。
研究室を逃げるようにして就職したときも、頭の中でそれらの声が聞こえました。
就職してしばらく経過したとき、その声に耐えかね、教授と助教授を道ずれにする計画を立て、私の化学の知識を使い、爆弾か毒ガスをつくろうかと考えました。
しかし、その話を否定せずに聞いてくれる人が現れました。
「お前は頭ばかりを使っていたからそういう考えになるんだ! 体を動かす趣味を持ったほうがいい」と言われました。
そこで、体をきたえることを決めて、ジムに通うようになりました。
縄跳びの二重飛びも鉄棒の逆上がりもできない私にとっては未知の体験でした。
そうしたら、自然とポジティブになれました。
「運動は精神的によい」というのは事実でした。
時々昔を思い出すことがありますが、「今の自分はこんなに変われたんだ!」という自信が現れたため、そこからいろいろなことに挑戦するようになりました。
コンボライターもその一環です。
ものごとに行きづまったとき、今まで自分に縁がなかったことをやってみるのもいいと思います。