極端な両親(Q&A)


「こころの元気+」2012年11月号より


Q(質問) 極端な両親に困っています

私は、一年ほど前に統合失調症と診断された、高校二年生の女子です。
私の悩みは両親があまりにも極端なことを言い出して実行してしまいそうなことです。
以前、薬ものむべきではないと両親共々言っていました。
私も薬はのみたくないのですが、極端な両親への変な反発なのか、逆に薬はのまなくてはいけないと思うようになりました。その後で、両親もいろいろと調べて、薬は必要らしいね、ということになり、何も言わなくなりました。
今の悩みは、両親が引っ越しを考えていることです。「統合失調症の原因はストレスだ!、都会はストレスが多いなかいから、田舎の空気のいい所に住もう」と言うのです。
父親はけっこう有名な画家で、母親はイラストレーターです。仕事はどこでもできるということもあって、気軽に引っ越しだとか言うのです。「どんな田舎にも病気の人はいるはずだ」と両親に言っても「都会はもっと病気によくないのだ!」と言うばかりです。今の私は、学校でいじわるをされたりすることもあって、あまり好きではないし、行きたくもありません。
でも、引っ越せば病気がよくなるとは思えないし、私は都会のほうが好きなので、逆にストレスになると思うんです。だから引っ越しはいやです。
ちなみに最近父親と母親が家に飾るために合作して描いた絵は、どこかの島の絵で、ラテン語のタイトルで、日本語に訳すと「希望」という題名がついていました。こんな極端な両親になんて言えばいいでしょうか?


A 発病期の家族の困惑なのでは?/伊東久雄さん(兵庫県)

厄介な病とご両親との葛藤、たいへんな日々と察します。統合失調症についてもう少し勉強をすれば、ストレスが原因との決めつけ方がおかしいと気づくはずだし、何より田舎暮らしが逆にあなたに苦手なことを理解してほしいですね。
息子の発病のとき、私も転居を考えたこともありますが、それから十数年、今はパソコンの世界で安らぎを得ています。
人それぞれの病の状態、趣味や考え方があるから親も子どもの生き方を決められません。あなたが落ち着くことがなんであるかを見つけて、親に支援してもらうことが大事です。
息子の病をきっかけに家族会役員になり、研修会等から少しずつ学んで、気長に家族があたたかく見守ることが何よりの薬だとわかってきました。
文面での想像ですが、ご両親は画家らしい夢を持って心配されているようで、極端な親というより発病期の家族の困惑など、よくあることのようです。主治医にあなたの想いを伝え、両親とともに相談されたらどうでしょうか。


A 都会のメリットを自分の言葉で/ナスビさん(東京都)

質問者様は、ずっとご両親にふりまわされて、生きてこられたのでしょうか。文章からそう感じ、さぞかしたいへんだったろうなと思います。
そこで、提案があります。ご両親に困った面があるということと、ご自身が病気で引っ越しさせられるかもしれないということ、それぞれを分けて考えてみてはどうでしょうか。ご両親に対し、複雑な気持ちを持っているかもしれません。でも、正直申し上げますと、ご両親はご両親。あなたはご両親ではありません。
あなたは一人の立派な人間であり、ご両親の一部ではなく、同じように考えなければならないなんてこともありません。
あなたはまだ未成年ではありますが、高校生ですので、自分で考えて主張することのできる歳だと思います。なかなか決定権は握れないでしょうが、ただ反発するだけでは、ご両親の心は動かせないと思います。
病気なのはご自身であり、自分はふりまわされたくない、自分は都会のほうが合っている、都会のメリットなどを、きちんと向き合って、ご自身の言葉で、ご両親にもわかるように説明なさってみてはどうでしょうか。


A 誰かに間に入ってもらう/猪狩誠さん(埼玉県)

お気持ちよくわかります。私の両親も極端な考え方をするほうでした。私は、パートでもいいから働くことに慣れたいという気持ちだったのですが、親はあくまで正社員にこだわり、いつも考え方で衝突して、よけいに調子が悪くなっていました。
私の解決法は、通院のときに主治医と話しをしてもらうことでした。直接的にはうまくいかなくても、誰かに間に入ってもらえるとうまくいくこともありますよ。
後は、自分を理解してくれる親戚の人に相談したりもしました。だから、決してあきらめることはないと思います。
引っ越しのことも主治医などに相談し、間に入ってもらって一緒に話し合ってもらってはどうでしょうか。きっと道は開けてくると思います。自分の一番望んでいることをやっていくことはよいことだと思いますよ。


A 反発でない自己主張で/まゆかんさん(茨城県)

私も高校生で発病し、文学青年だった父の見当違いな理解に苦労しました。発病して間もないうえ、高校生であればなおさら今後が不安かと思います。ご両親は質問者さんが大好きで、何かしたい気持ちが人一倍強い方なのではないでしょうか。
大切なのは質問者さんがどのような未来を思い描くかですよね。極端な言動にふりまわされて、ご両親を恨んだりすることは避けてほしいなとも思います。
都会のほうが好きなら、その気持ちをいろいろな角度から伝えてみてはどうでしょう。
面と向かうとむずかしいなら、手紙やメモ、メール等。または共通の知人を通して、主治医や親戚などの協力も期待できます。
「引越しはいや」でなく「都会のほうが好き」だと伝えるのもポイントです。反発でない、自己主張の方法が見つかるといいと思うのですが。
私の親子関係は、私が苦しいなりに前向きに自分の治療に取り組み始めてからぐっとよくなりました。今では両親は強力な味方です。
質問者さんが「こんな親じゃダメだ!」や「私ってなんて不幸なの」でなく「困っちゃったな、うちの親」的なスタンスで悩んでいるのが、すごくいいなと思いました。これからもそんな立ち位置をキープしてほしいと思います。