本人が親を支えるために(専門職)


こころの元気+ 2012年11月号特集より


特集3
お世話の基本は社会生活力から!
日本リハビリテーション連携科学学会理事長
奥野英子


●高齢化社会における生活

私たちにとって、家族、とりわけ、私たちを育ててくれ、さまざまな支援をしてきてくれた親は大切な人です。 
世の中にはいろいろな家族があるとは思いますが、どんな親でも高齢化に伴い、家事ができなくなったり、認知症を発症したり、介護を要する状況になったりします。これらは誰にでも起きることです。 
それまで心配をかけたり、身体面や精神面を支えてきてくれた親の場合、高齢化に伴い、親と子の支援関係が逆転せざるを得ない状況も生まれてきます。 
このような状況になったとき、あわてふためくのではなく、親を支援する役割を果たすために、どんなことが必要となるのか考えてみましょう。

●生活を支える構成要素

地域社会のなかで生活をしていくためには、さまざまな構成要素があります。 
それらをカバーしている「社会生活力プログラム」を参考にしてみると、次のとおりです。

社会生活力プログラム (一部を抜粋)

[生活の基礎をつくる]
1 精神科医療
2 健康管理
3 食生活
4 セルフケア
5 生活リズム
6 安全・危機管理
[自分の生活をつくる]
7 金銭管理
8 すまい
9 掃除・整理
10 買い物
11 服装
[自分の理解とコミュニケーション]
12 自分と病気・障害の理解
13 コミュニケーション
14 家族関係
15 友人関係
16 支援者との関係

●生活と人間関係を支える社会生活力

介護や支援を必要とするようになった親と生活をしたり、親の老後を支え、最終的に看取るためには、そのような事態になる前に、何を準備しておけばよいでしょうか。 
社会生活力は、障害があろうとなかろうと、社会生活をするすべての人にとって必要な力です。
精神障害をもちながら、地域において主体的、自立的、選択的な生活を実現するために、プログラムにあるような項目について、自分はどのような状況にいるかをふり返ってみましょう。 
自分自身の生活が安定し、生きがいのある生活をしていなければ、支援や介護を必要とする状況になった親を支えることはむずかしいといえます。
また、そのような状況になる前から、家族とのよい関係、友人とのよい関係、支援者とのよい関係ができていれば、親が介護を要するたいへんな状況になっても何とかなります。

●社会資源やサポートの活用

自分や親が利用できる保健・医療・福祉サービスなどの活用方法を知っていれば、それらの利用の手続きをして、公的なサービスを活用しながら、親との地域生活を継続したり、介護保険の施設を利用することもできます。 
市役所、地域包括支援センター、障害者相談支援事業、保健所等の専門家に相談し、公的サービス、インフォーマルサポート(公的でない支援)を活用し、親を支えて、力強く人生を切り開いていきましょう。 
社会生活力を身につけておけば、親なき後の生活も安心です。

参考資料
1 奥野英子・野中猛編著「地域生活を支援する社会生活力プログラム・マニュアル─精神障害のある人のために」中央法規、2009
2 奥野英子監修「DVD・見て学ぶ社会生活力プログラム」中央法規、2012