運動は最強のストレス解消法(専門職)


こころの元気+ 2013年2月号特集より


特集6
運動は最強のストレス解消法

公益財団法人 明治安田厚生事業団体力医学研究所
永松俊哉


運動は精神疾患の改善につながるか

●精神医学と運動のかかわり

人道的な精神医学が登場する 世紀のヨーロッパでは、あたたかみのある理学療法を重んじ、農耕など体を動かすことで症状の改善をはかる試みが始まります。
体を動かすことの重要性は20世紀初頭に日本でも作業療法として提唱されます。
1960年頃にはレクリエーションを交えた生活療法が提案され、卓球、ソフトボール、ラジオ体操などが入院患者に提供されるようになります。
今日でも、精神科病院では、運動を取り入れたリハビリテーションメニューが活用されています。

●精神疾患の治療に運動は 有効か

近代の精神医学では運動が治療法の主流になることはなく、むしろ最近まで「うつ病に運動は禁忌」といった運動に否定的な考えが一般的でした。
しかし、最新の研究で、運動が抗うつ薬と同じくらい効果のあることがわかってきました。
精神疾患の症状が運動で改善される理由については、セロトニンやドーパミンといった脳内物質の働きが改善されるという説が有力です。
メカニズムが解明されれば、精神疾患の治療に運動が積極的に取り入れられる日もそう遠くないかも知れません。

運動はストレス解消に役立つか

●ストレスは身近な存在

近年、ストレスを強く感じる人が老若男女を問わず急増しています。
地域や職場での人間関係、介護や育児の不安、学校や仕事への不満など、さまざまな精神的ストレスがクローズアップされるようになりました。 
人とかかわりながら生活する以上、ストレスは常に身近 に存在します。 
ストレスといかにじょうずにつきあうかが、心の健康を保つうえでたいへん重要です。
ストレスを感じると、脳はまず身体を活性化させストレスに備え、続いてストレスの原因を克服しようとします。 
ここでストレスが解消できれば一件落着です。
しかし、長期間ストレスを解消できないと脳が慢性的な疲労を起こし、食欲不振、睡眠障害、抑うつなど心身にさまざまな変調が生じることがあります。 
そうならないために、自分に合ったストレス対処法を身につけることが大切です。

●ストレス解消には、どんな運動が有効か

ストレスの感じ方には個人差があり対処の方法も人それぞれです。そのなかで、運動は有力なストレス対処法のひとつとされています。 
運動がストレスを解消するメカニズムには諸説がありますが、脳内物質や脳の神経細胞がかかわっているようです。
適度に運動することで脳の構造や機能が変化し、ストレスへの対処がじょうずになるのではないかと考えられています。 
では、どのような運動がストレス解消に有効でしょうか。
健康づくりの現場では、各種のスポーツが以前から奨励されています。
事実、お気に入りのスポーツを楽しんだ後、適度な疲労感とともに達成感やリラックス感などの心地よさを感じた方も多いでしょう。
自らすすんでスポーツや運動に取り組むことは、ストレス解消にたいへん有効と思われます。

●軽い運動でも効果的?

最近の研究では、ストレッチや呼吸法といった比較的軽い運動に注目が集まっています。
ストレッチの後にはストレス物質が減ることがわかってきました。しかも10分程度で効果が得られます。
大きく呼吸をしながら、筋肉の伸びを感じる動作をゆっくりと気持ちよく行うことがポイントです。
できれば床に就く直前に行い、呼吸を整えてリラックスして終了しましょう。そのまま寝てしまえば快眠効果も期待できます。
自分のライフスタイルに合わせて、毎日実施できる手軽な運動を継続して行うことをおすすめします。