うつ病が自分のことを考えるきっかけに(本人)


こころの元気+ 2012年1月号特集より


特集2
うつ病が自分のことを考えるきっかけに

埼玉県
灯路さん


自分のよいところは何もない

私は、うつ病歴一五年の女性です。私が初めてうつ病になったのは、大学在学中の一九歳のときでした。
原因は、歌の成績が思うように伸びず、「自分はだめな人間だ」と思ったのがきっかけです。食事が食べられない状態になり、リストカットをしたのもこの頃でした。

精神的に追い詰められる状態になってから、初めて精神科を受診。うつ病だと診断されたときは、「なぜ自分が病気になったのだろう?」と思うばかりでした。
正直、うつ病になったばかりの頃は、「自分のよいところは何もない」、「うつ病は自分の汚点」だと思っていました。

けれども、カウンセリングを受けたことで、自分の考え方に偏かたよりがあることや、がんばりすぎて心の病いになったことに気がつきました。
また、通院日のある日に、同じ病気を持つ人からかけられた「なぜ、あなたのようなやさしい人が病気になったのか?」という言葉で、自分のよい点や悪い点に気がつき、「うつ病は自分のことを考えるきっかけ」という考えに変わりました。

そして再発

最初のうつ病は一年で寛解して、しばらくは元気に生活していましたが、六年前に仕事先の人間関係のストレスや家の環境の変化などで、再び発症。
以前よりは軽いものの、「また、うつ病になってしまった」と思うようになり、「元気な自分でなくなってしまった」と思う日々を過ごすことになりました。

ありのままの自分で

どこか病気の自分に負い目を感じていたときに、書店で偶然見つけたのが、藤臣柊子さんの「病気じゃないよ、フツーだよ精神科へ行ってみよー」です。
元気な自分も病気の自分も、全部受け止めている藤臣さんの生き方で、「ありのままの自分でよい」という考えに変わりました。「病気の自分は、元気な人とは違うのだろうか?」と思っていたときでもあったのですが、藤臣さんの前向きな姿勢で、「心の病気は特別なことではない」のだと思え、気持ちが楽になりました。

また、食事が楽しめないほどふさぎ込んでいた時期に、斉藤里恵さんの著作「筆談ホステスの愛言葉」を知りました。聴覚障害を持ちながらも、自分らしく生きている里恵さんの、「涙を止めれば、また笑顔に戻れます。泣くのを止めれば、立ち上がって前に進めます」という言葉は、特に好きです。
この言葉が、毎日を大事にしようと思う糧になっていて、「同じ毎日を過ごすのなら、できる限りのことをしよう」という気持ちにもなっています。
障害を持つ身となりましたが、里恵さんがきっかけで、障害があることを引け目に感じるのはやめようという考え方になりました。

私は今も、うつ病と向き合い、薬とカウンセリング治療を受けながら、毎日を過ごしています。
けれども、どんな自分も自分。二度の病気が、自分の心と向き合うよい機会になり、変われました。元気な人よりも、いろいろと人生の回り道をしましたが、うつ病になったことを後悔していません。
逆に、うつ病になっていなかったら、壊れていたかもしれません。私にとってうつ病経験は、今の自分を迎えるための大きな意義を持っています。