ちょっと知りたい! 8050問題


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第72回 8050問題(はちまるごーまる)
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 著者:朝比奈ミカ(中核地域生活支援センターがじゅまる センター長)

「8050問題」は、一般的には、ひきこもりやニートの状態が長期化して中高年となった子どもを支えてきた親も高齢化し、収入が途絶えたり病気や要介護状態になったりして、家族が孤立する問題と説明されます。
(象徴的に「80代の親と50代の子」という意味で「8050(はちまるごーまる)問題」といわれますが、それ以外の年代でもあてはまります)

困窮や介護等の問題が起こっても、孤立して誰にも相談できず、問題が深刻化してしまうという点に注目する必要があります。

制度の狭間に置かれて

ひきこもりやニートの状態にある人達への支援策としては「若者サポートステーション」などがありますが、対象年齢が39歳(2020年4月から49歳)までとされ、中高年の人は対象になりませんでした。

また、各相談窓口が縦割りのまま問題に対処していると、複合的な課題をかかえる家族の問題はなかなか見えてきませんでした。

介護の社会化が進み、介護関係者の間では徐々に、高齢者を介護する家族自身が生きづらさをかかえ、支援を必要としている場合があると知られていきました。
また生活困窮者自立支援法で、障害者手帳を持たない人も利用できる就労支援のメニューも整えられ、中高年のひきこもりの人達が少しずつ相談につながってくるようになってきました。

精神疾患のある本人には

ひきこもり状態になる要因の1つに、精神疾患もあげられます。
若いときに発症し社会参加のきっかけを見つけられない場合や人間関係等で失敗して傷つき不安やストレスで発症した場合もあるでしょう。自分を守る手段としてひきこもる場合もあるかもしれません。

ひきこもりは状態として理解すべきですが、多くの方は「働いて自立する」という社会の暗黙の期待にこたえられていない自分との葛藤に苦しんでいます。
そんな中でさらに「親の老い」の問題に直面してとまどい、相談先がわからなかったり、「相談する」という行動自体を思いつかずに身動きができなくなってしまうのは、本人の側に立てば無理のないことなのかもしれません。

これからの課題

この問題は、家族に課題解決機能を担わせてきた社会のこれまでのあり様を象徴しているといえます。地縁・血縁が薄れる中、国は今後、つながりの中で生きていくことを支える地域共生社会をめざし、縦割りを排した包括的な相談体制作りを打ち出しています。
何よりも、さまざまな悩みや生きづらさを受けとめられる社会の寛容さが求められていると思います。

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