発達障害の診断を消され(本人)


「こころの元気+」2018年2月号(132号)の「発達障害 空気を読まずに言いたい放題」のコーナーより
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このコーナーは、発達障害のさまざまな当事者、支援者の方に、言いたいことを伝えてもらうリレー連載です。

「発達障害 空気を読まずに、言いたい放題」

第11回 医師選び・病院選びの重要性

朝倉美保さん(京都府)
株式会社みのりの森 代表取締役
雑誌「きらり。」編集長

京都で会社社長&雑誌編集長をしている朝倉美保と申します。
発達障害であり、双極性感情障害でもあります。障害とともに生きることを目標にしながら、日々暮らしています。
私は現在38歳です(掲載当時)。
24歳でうつ病になり、その後、症状がよくなったり悪化したりをくり返しているうちに障害名がコロコロ変わり、そのたびに私なりに疾患について調べながら障害・疾患とうまくつきあおうとしてきました。
今まで言われてきた疾患名を数えたら20種類以上にもなります。
そして、10年後の34歳のときに入院検査した結果、発達障害と診断されました。

知られていなかった発達障害

現在、発達障害は多くの人に知られる障害となりましたが、私が20代の頃はそれほど知られていませんでした。
私は20代の頃にも、精神科病院に入院しているときに検査を受け、発達障害と言われたことがあります。
それを退院してから当時の主治医に言うと「あんたが発達障害なわけないやろー」と一蹴され、結局、医師により発達障害の診断が消されてしまいました。
あのとき、もしちゃんと診断してくれていたら、その後の人生での困難を回避できたかもしれないと思うと悔しくて仕方がありません。

私はただの重度のうつ病患者として、長年生きることになりました。
症状を薬で調整していると、調子のいいときが続く時期がありました。
そのとき、彼氏ができ、プロポーズをされ、結婚をしました。
しかし、結婚生活はうまくいきませんでした。
夫との意思疎通がうまくいかず、病状が悪くなり、ついには精神科病院に入院することになりました。
そして、この病院の医師が発達障害を疑い、脳波、心理検査など、あらゆる検査をした結果「広汎性発達障害、アスペルガー症候群、ADHD」と診断されました。
医師が夫に「子育てと家事の両立はむずかしい女性です」と伝えたのがきっかけとなり、退院後ますます不仲になり、離婚となりました。子どもがほしかった夫は、意思疎通もうまくいかない私を切り捨てました。
ショックも大きく、しばらく病状も悪化したままでしたが「ひとりで生きていく」決意ができたとき、フッと吹っ切れました。

医師の主観で決まる診断

あの20代のときの「発達障害」の診断が消されなければ、もっと早くに生きやすい道を歩めたのではないか、と思うと悔しくて仕方がありません。
「医師の主観だけで診断を消してしまうのは間違っている!」しかも、正式に発達障害の診断がされてからも、医師が変わるたびに「本当に発達障害?!」と疑われました。
理由は、コミュニケーションがわりと円滑に行えるから、ということが大半でした。
あまりにも疑われるので、私は発達障害支援センターに相談し「発達障害専門医」がしている病院を紹介してもらいました。
そこでも、初診では母同伴での幼少期の具体的エピソードの聞き取りが行われましたが、やっと「発達障害」と認められました。生活や仕事にもとても理解のある医師に出会えたことで、私はやっと生きたいように生きられるようになりました。

未来は自分の手に

経験を通して思うことは、「医師選び」「病院選び」の重要性です。
現代では、心療内科・精神科の病院があちこちにあります。
しかし、その医師全員が「正しい判断のできる医師」とは限らない、ということです。
「家から近いから」「有名らしいから」などで選んでしまうと失敗することもあります。
自立支援制度、障害年金などの手続きがしたくても「私は診断書は書きません」と言って拒否する医師もいます。
制度が整えられても、医師次第で人生が左右されてしまうのです。
医師とは「相性」があります。「話し方、聞き方、態度、治療方針、処方の仕方」などをよく観察し「合わない」と思ったら躊躇なく「転院」をお勧めしたいです。
転院手続きは手間もありますが、相性の悪い医師にいくら診てもらっても自分のためにはなりません。
医師が何の専門なのかをしっかり調べ、初診の予約時に「受付の態度」「医師がどんな方かの質問」をしてみてください。
未来は自分の手の中にあります。
すばらしい医師に出会えることが、すてきな人生の始まりとなるのです。