「こころの元気+ 2016年4月号(110号)」より
※「こころの元気+」とは?→コチラから
休職中の人に知っておいてほしいこと
復職にあたって
福島障害者職業センター
相澤欽一
休職中の人といっても、うつ状態の原因や程度、うつ以外の症状など、人によってさまざまです。このため、復職にあたって考えておくとよいことも人によって異なりますが、復職後の安定した職業生活の継続を視野に入れておくことは、どのような状態の人にとっても、復職を考える際の重要なポイントになります。
復職支援のプログラム
復職後の安定した職業生活の継続に不安がある場合は、復職支援のプログラムを活用することも選択肢の一つです。
具体的なプログラム内容は、実施機関によってさまざまですが、おもに次のようなものがあげられます。
◦1日の活動内容と疲労度や気分などを記録しながら、決まった時間に決まった所に通い、働くための生活リズムに調整していく。
◦事務などの作業課題を行うことで職務遂行力(仕事に必要とされる力)を確認し、作業能率や正確性を向上させる。
◦相手を尊重しながら自分の意見を上手に主張するなど、コミュニケーションの練習をする。
◦病気に関する講座などを通じ、病気や症状に対する理解を深める。
◦自分の考え方のクセやかたよりを知り、ものごとに対してより柔軟な見方ができるようにする。
◦受講者同士で、さまざまなテーマについて話し合い、他の人の意見を聞くことで、考え方やものごとの見方の幅を拡げる。
◦復職支援の各種プログラムやこれまでの仕事の仕方をふり返り、復職後の安定した職業生活に向け、自分自身が取り組むべきことや、会社に望みたい配慮などを整理する。
このようなプログラムは、医療機関や地域障害者職業センター(以下、地域センター)などで実施されており、復職支援のプログラムを実施している医療機関の一部は、うつ病リワーク研究会のホームページで知ることができます。
地域センターのリワーク支援
地域センターは、障害のある人に対する職業相談やジョブコーチ支援(障害のある人が職場に適応できるよう職場訪問などによりジョブコーチが支援する)などを行っている職業リハビリテーションの公的機関で、各都道府県に1か所設置されています。
地域センターの復職支援のプログラム(リワーク支援)は、休職者のセルフケア向上の取り組みだけでなく、復職にあたって休職者の状況を踏まえた留意事項などを会社に助言するなど、会社のラインケア構築のための支援をすることも大きな特色になっています。
受講は無料ですが、雇用保険の被保険者が対象のため公務員は受講できません。
また、受講に際し、休職者、主治医、企業の3者がリワーク支援の実施に同意することが必要です。
2014年度の利用者は全国で2354人、復職率は85・3%となっています。
ラインケアの重要性
使用者には労働者に対する安全配慮義務(健康配慮義務)がありますが、2016年4月からは、雇用場面における障害者に対する差別禁止と合理的配慮の提供義務も施行されます。
この場合の障害者とは、「健康問題などで心身に何らかの機能障害が生じ、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受けている人のこと」をいいますので、うつ病やがんなどで、職業生活の継続に大きな支障が出ている人も該当します。
厚生労働省は「合理的配慮指針」を作成し、「出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること」「本人の状況を見ながら業務量等を調整すること」「本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること」などの合理的配慮の例を示しています。
復職のことを考えるときには、復職する人のセルフケア向上とともに、会社のラインケア構築が重要になります。
復職後の安定した職業生活の継続を実現させるためには、自分の状況を知り、自分自身が取り組むべきことと会社に望む配慮を整理し、復職の際に、それらを会社にわかりやすく説明することが望まれます。
※セルフケアとは、自分で行うケアで、自分の体調や心の状態をとらえ対処することなど。ラインケアは、職場の環境や部下の相談など、管理監督側が行うケア。