障害者雇用者数の虚偽報告問題に関する要望


2018年8月29日

内閣総理大臣 殿 

障害者雇用者数の虚偽報告問題に関する要望

  複数の中央省庁で障害者雇用者数を水増しして報告していたという問題が発覚して以降、都道府県など地方自治体にも広がっています。今回の問題については、再点検の結果、国の行政機関における障害者数は6,867.5人から3,460.0人減少して3,407.5人、実雇用率は2.49%から1.19%となっており、意図的な虚偽報告であり、障害者雇用率制度の根幹を揺るがす事態として憂慮しています。

平成29年度の障害者雇用状況調査(6.1調査)によれば、民間企業は、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新し、法定雇用率達成企業の割合は 50.0%(対前年比1.2ポイント上昇)と、好成績を収めています。こうした勢いを形成しているのは、精神障害者や発達障害者等の就労に対する制度的バックアップと民間企業の努力の賜物であると考えます。

私たちは、長く精神障害者とその家族の権利擁護や支援体制の整備、精神障害者雇用や就労定着に関わってきました。今回の調査結果は、私たちの予想を超えており、驚きと憤りを禁じえません。障害者雇用に真摯に取り組んできた民間企業としても到底容認できることではないでしょう。

また、障害者の立場からすれば、人事担当者によって障害の有無を一方的に判断されてきたということでもあり、プライバシーや人権侵害行為として糾弾されなければならないと考えます。

平成18年4月に精神障害者が雇用率の算定対象とされた際に、このようなプライバシー侵害の事案が予想されたため、厚労省では「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」を制定して、障害者を守る方策を示してきました。

障害者手帳を所持していることは「原則」であると理解していたとか、理解が足りなかったとか、認識不足だったということでは到底納得できるものではありません。

本年8月28日の障害者雇用に関する関係閣僚会議では、弁護士など第三者が加わる検証チームを設置して原因を究明するとともに、10月中に再発防止策をとりまとめるという方針が示されたとのことです。この検証チームに当事者である障害者・障害者団体を主要種別毎に複数構成員とすること、併せて障害者雇用実績を持つ一般民間企業とりわけ中小企業の経営者の参加を要請したいと思います。

また、各省庁や地方自治体などにおける雇用率の未達成状況をどのように解消するかも合わせて計画を制定すべきですし、民間企業同様罰則規定も盛り込むべきと考えます。

 今回の事態は、民間企業に対する信用失墜行為であり、障害者に対する偏見や蔑視の表れともいえるでしょう。政府・行政機関は、虚偽報告の対象とされた職員をはじめ、民間企業や障害者、国民に謝罪し、早急に信頼回復と再発防止策を取りまとめて、改善策を講じるよう要望します。

 以上

  1. 今回の虚偽報告の原因と責任を明らかにしてください
  2. 原因究明検証チームには障害当事者・団体と雇用実績のある中小企業経営者が構成員の半数以上となるように配置してください
  3. 今後の再発防止策を制定してください
  4. 各省庁や地方自治体などの雇用率未達成状況の解消計画と罰則規定を講じてください

 以上

 

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