「こころの元気+」2013年9月号(79号)より
Q
人生の起伏がなくなってつまらない
私は48歳の専業主婦で、夫と中3の娘との3人暮らしです。
私は双極Ⅱ型障害をかかえています。
初めて精神科を受診したのは10年前でした。
そのときは、うつ病と診断されましたが、いつまでたっても治りませんでした。
2年前に医者を変えて、しっかりとこれまでの自分のライフストーリーを聞いてもらい、双極Ⅱ型障害の診断となりました。
薬が変わったおかげかわかりませんが、感情の波はあまりはげしくなりません。低めでわりと安定しています。もともと双極Ⅱ型障害なので、躁状態といっても、そんなにはげしくハイテンションにはなりませんでした。
そんな私を気づかって、夫も娘も家事を手伝ったりしてくれて、まあそれで家のことはまわっていくパターンがだんだんできていきました。
私の悩みは、この低め安定状態というのは、何だか人生の起伏がなくなってしまって、正直に言えば、つまらないのです。
軽躁状態のときは、ちょっと行動的になって家族も喜びます。
その後、突然どっと寝こむことは、夫も娘も想定内で、家のことを手伝ったりしてくれます。案外そのパターンがちょうどよかったのかもしれません。
診断名と薬が変わってからは低め安定状態になって、家族も前のパターンと変わって戸惑っています。
病気の症状とはいえ、起伏のある人生と、症状がおさえられて起伏のない人生
―妙な悩みだとは思いますが皆さまはどのように思いますか。
A 過度でなければわがままではない
/まおさん(大阪府)
感情の起伏をコントロールする薬剤を処方されておられるようですね。
その薬剤になるまでの問題は、エネルギー切れで寝こんでしまうときのつらさだったんでしょうから、そのつらさを感じないで、思いっきり笑ったり、感動して涙を流したいですよね。
一番いいのは薬の種類を医師に相談して変えてもらうことだと思います。
以前のような楽しいことを思いっきり楽しいと感じるような体験を得られて、エネルギーが切れたときのきつい状態をあまり感じることのない薬物を探してみるのです。
抗うつ剤ではそういう薬物の種類は少ないでしょうが、そんなあなたに合う第三の薬剤があるなら、そのほうが毎日を楽しく感じて幸せに暮らせるのではないかと思います。
人生を楽しく過ごしたいということは幸福追求権という基本的人権なのですから、過度に求めなければ、わがままなことではないと思いますよ。
おもしろい映画や楽しい話に思いっきり笑って感動して涙する生活のほうがいいに決まっていますよ。
A 起伏は長い目で
/山崎和子さん(岐阜県)
私も双極Ⅱ型の57歳の主婦で、夫と28歳の次女と3人暮らしです。
質問者の方と環境がとってもよく似てるので共感を持てました。
私も軽躁と、うつをくり返し、家族もそれを想定し、よく面倒をみてくれます。
低め安定で人生の起伏がないというのは〝家事はそこそこできるが生き甲斐を持つことができない。人生が楽しくない? ということでしょうか?
私は、かつて作業所やデイケアなどで家庭以外に居場所を持ち、生き甲斐を持ってきました。
デイケアは続けていますが作業所は人間関係のトラブルから辞めてしまいました。
今は風邪をひき、デイケアも行けず、質問者の方と同じような低め安定でも不安な状態です。
でも、またデイケアの仲間と楽しく暮らせると思ってます。
それに、こんな私を見守ってくれる家族に感謝です。
人生の起伏は長い目を持って考えましょう。
『こころの元気+』を読み返し、自分に取り入れられることを実践するとよいのではないでしょうか。
A 時間の流れにも変化が
/ケルトの霜さん(神奈川県)
24歳の統合失調症と身体障害をかかえる者です。
お気持ちよくわかります。薬で体調は抑えられている、でも起伏がない人生が余りにも平凡すぎる。
私も、ひとり暮らしをする前まで、そんな生活でした。
薬で躁うつを抑えているので、楽しいことも、悲しいことも、常に平坦でした。
都会に出てきて、一人でなかなか病院へ行ったり薬をのんだりすることができず、症状に波が現われ始めると、何だか時間の流れが速く感じるようになりました。
以前は、1か月も1年もさほど変わらなかったように思います。
しかし、感情に起伏が現われると「何だか時間が過ぎるのが早いなぁ」と感じるようになったのです。
それがよいことか、悪いことかはわかりませんが、それでプラスになっているんじゃないかと思います。
一度、薬を見直してみるのもいいかもしれません。
ある方が言っていました。
「うつが悪いものだと決めつけることが悪い、うつの状態を楽しみなさい」と。
うつという言葉に、私たちは少しマイナスなイメージを持ちすぎなのかもしれません。
海でたとえたら「うつは海底、躁は水面だと」。そんなふうに、まったりと生きていけたらいいですね。
A 操り人形にならない
/倉田真奈美さん(千葉県)
私は統合失調感情障害です。
感情のアップダウンがたいへんはげしく、泣いたり笑ったりにぎやかに? 暮らしています。
夫や主治医は、もう少し薬を増やして落ち着かせたいようです。
でも、私は自分で考えたり、行動したり、感じたりする力があるほうを選んでいるので、最低限の薬をのむだけで、後は自分で努力して、毎日をコントロールして生活しています。
WRAP(ラップ)やIPS、認知行動療法などが役に立っています。
うまくいかないときもありますが、毎日がドラマチックで、喜びや悲しみ、あふ精彩に溢れた日々です。
ある心理学の本に、チック(手足などが不随意に動く病気)のドラマーの話が載っていました。
彼はチックのおかげで、とても独特な叩き方をする芸術的な音楽家でしたが、薬を投与されたら、チックが治ったのはいいが、ドラマーとして、つまらなくなりました。
その後、ドラマーとして活躍する週末だけ薬をやめて、音楽も楽しむ生活をとり戻したそうです。
このように、薬をのむことにも主体性を持って医師と相談し、どんな自分になりたいか明確にビジョンを持たないと薬の操り人形になってしまいます。
自分のためにのむのだから、自分に合ったのみ方を先生や家族とよく話し合うことをオススメします。
A 外には変化がいっぱいです
/スピノザさん(千葉県)
私は40歳、男性です。双極Ⅱ型気分障害という診断です。
私も起伏というか、波というか、それがなくなって違和感を感じたことがあります。
うまく説明できないのですが、むなしいというか、生きがいがないというか、死なないでいるだけ、という感じになったことがあります。
人間は、食べて、寝て、排泄していれば満足するというわけではないと思います。
食べるのに精一杯の方は、そう感じないかもしれませんが…。
誤解しないでいただきたいのですが、だから、甘えていると言いたいのではありません。それぞれの立場でいろいろな問題があると思うのです。
私の場合、つきなみなのですが、外に出てみることにしました。
家の近所でも、道路の割れ目から、名前のわからない雑草が花を咲かせているのを見つけたり、風や空気の違いを感じたり、日の光も季節によって違います。
電車に乗れば、いろいろな年代、いろいろな雰囲気の人がいます。自分の中では変化を感じないかもしれませんが、自分の家の外は変化がいっぱいです。
私は、そういうところで何かが変わっていきました。