「こころの元気+」2017年3月号への投稿より →「こころの元気+」とは
いいところもそうでないところも、自分 / 川北誠さん 三重県
ウチの本棚には「こころの元気+」が創刊号から並び、宝物です。投稿が採用され、自分の文章を読んでも、十年でいろいろ変わったと感じます。
十年前は、「病気の経験を生かせないか?」と漠然と思っていました。ピアが一般的でなかった頃です。そんな時に「こころの元気+」に出会い、書くことに目覚めました。読んでもらう前提なので、分かりやすく、気持ちが伝わるように書くことが自然と身につきました。
「こころの元気+」がきっかけで、いろんな雑誌があることを知り、投稿が掲載されました。自分の文章が活字になる喜びは、ひとしおです。
大学での講義も依頼されるようになり、今も続けています。看護師やワーカーの卵の前で、経験に基づいてお話しています。講義をする大学も増えました。
始めは「気持ちを分かって」に終始しましたが、今は、学生さんや支援者も様々な事情を抱えていることを理解して、相手の立場も考えて話をしています。
今年は、ある大学の学生さんが、「病気になって良かった・病気になったときより元気で楽しいとのセリフをよく聞くので、私もそう思わなければならないのかと思ってしまうけど、川北さんはそれだけの内容ではなかったのでよかった」とか「楽しいだけ、苦しいだけの人生などないと思います」と書いてくれました。
そうですよね。前を向けない時は向けないし、元気を出せない時は出せないです。
僕は「病気になる前よりも元気」と伝えてきましたが、今はしがらみに巻き込まれ、元気ではないです。それを包み隠さず、丁寧に話しているので、学生さんもちゃんと受け取ってくれます。
いいところも自分ですが、前を向けないところも自分ですよね。どちらか一方だけなんてことはあり得なくて、その両方が自分ですよね。それが本当の“ありのまま”ですよね。その気づきがリカバリーだと感じます。
僕は、今は人間関係が行き詰まっていますが、そんな時だからこそ、違う立場の友人ができました。その方は家族の立場ですが、辛い時に「生きていてくれて、ありがとう」と言ってくれ、こんな友人ができたこともリカバリーだと感じます。
それでも楽しいことはあって、音楽を聴いたり、本を読んだり、映画を見たりしています。趣味がどんどん若返っています。好きな歌手のMVを見ると穏やかになります。リトグリにハマりました。
遠回りでも自分を曲げずに、置かれた場所で咲き、咲けない時は下へ下へと根を伸ばしたいです。