よい医師と人との出逢いで


「こころの元気+」2017年3月号への投稿より →「こころの元気+」とは

よい医師と人との出逢いで / 天才薄伽梵パパさん 佐賀県

私のリカバリーは、ある医師との話なしでは語れません。その医師は、入院時面接の代わりに、インフォームド・コンセントを行ってくれました。

春の晴れた日に、病院の玄関前にある、木陰の芝生上で、私はこれまでの体験と症状、育った家庭環境などを、細かく2時間かけて医師に話しました。
医師は、カルテなど持たず白衣も着ずに私服のままで、私の話を傾聴していました。そして、私が話し終わった後に、時間をかけてこれからの診療方法などを分かり易く、丁寧に話してくれました。

最初、この医師の話で始まりました。
元小児科の医師で、ここに来る前まで、東京の大学で講師をしていて、医師の里で、親戚が開いているこの病院に招かれて来たということでした。
最初、そういう話から始まり、少しずつ治療法へと進んでいきました。そして、「幻聴が止まらないようだから、薬を少し変えて、様子を見ながら診察していきます」と話されました。
そういうことで一時間程たち、最後に「私に任せてもらいますか」と言われたので、「よろしくお願いします」と私は言いました。

インフォームド・コンセントが成立して、私は十年間この医師にお世話になりました。入院中も、退院中も治療時間が三十分~一時間で、これは毎回繰り返されました。
私は幻聴に入院中も悩まされていましたが、最初の一年間の入院で、少しは聞こえなくなりました。

そして、退院して、すぐに職に就きました。
その後は、半年入院の半年は退院して仕事に就き給料を貰い、入院費と生活費(相当切り詰めた生活でした)と分けて少ないお金を遣り繰りしながら、野菜はすべて食べられる野草を摘みながら生活しました。高校時代生物部でその時の知識が役に立ちました。

入院中に仲良くなった女性とは入院中交際が続きました。そして、ある日、主治医から、「今君と付き合っている女性患者を外で生活出来るようにして欲しい」と頼まれ、十年かけて普通に社会生活出来るように教えました。彼女の努力があったからできた話です。

来年で結婚二十年になりますが、私の妻は料理が全くできない人でした。
しかし、少しずつ料理を覚え、今ではフランス料理やチーズケーキ、アップルパイなどのお菓子まで作ります。私がキッチンに一緒に立つことを嫌い、パソコンで料理の作り方を調べるうちに好きになった様です。

私のリカバリーは、良い医師との出逢いと、二人の女性との出逢いがなかったら、到底出来なかったろうと思います。