生死の境から


「こころの元気+」2017年3月号への投稿より →「こころの元気+」とは

生死の境から/キナコモチコさん 大阪府

統合失調症30代女性です。私のリカバリーストーリーは、「生死の境からの…」です。

「生死の境ってオーバーじゃないの?」と、思われるかもしれませんが、決してオーバーなことではありません。ちょうど10年前の12月1日のこと。私は、人間関係のもつれから公衆トイレで服毒自殺を図りました。膨大な量(確か300錠近く)の睡眠剤と鎮静剤をアルコールで飲んだのです。

もちろん意識を無くし、救急車で近くの病院まで搬送されました。

OD(オーバードーズ)をしたことのある方ならご存知の方もいらっしゃると思いますが、大体のODの場合、胃洗浄して終わりですが、その時の私は胃洗浄しても全く意識を取り戻すことなく、昏睡状態のままICUで3週間過ごしました。

このとき、医者から家族には『このまま意識が戻らないかもしれません。覚悟して下さい』と告げられたそうです。

今考えると「馬鹿な事をした」と反省していますが、当時の私からしてみたら「私の命なんて紙きれより軽いモノ、いっそのこと消えた方が周りは喜ぶ」とずっと思っていました。若かったのです。

時は過ぎ、街中はクリスマスムード一色に染まった12月末のある日、奇跡的にICUの中で意識を取り戻しました。

意識が混濁している前に現れたのは、いつもの様子のお母さんでした。

怒るわけでもなく、叱るわけでもなく、微笑みながら「おはよう。大丈夫?」と言われた時の事は多分、一生覚えていると思います。その時初めて、「私は生かされたのか…」「生きたい」と涙が出ました。

その後の回復力はめざましく、目が覚めてすぐに一般病棟にうつり、正月前には無事退院することが出来ました。担当医からは『あれだけ薬を飲んだのにも関わらず臓器に何の障害も出ないのは奇跡に等しい』と、まで言われました。

それからの十年、私は病気から逃げることをやめ、向き合うことを始めました。

学校を辞め、毎日定量の薬を飲み、無理はせず、もちろん、苦しいと感じる時は未だにありますが、泣くのを我慢せず、心のあるままに生きてきました。その間、障害認定があったり、支えてくれる大切な人に巡り合えたり、さまざまな出来事がありましたが、全て、今の自分につながることです。そう思えることが、私の大切なリカバリーなんだと思います。

これからどうしたらいいか、迷うときは、この十年を振り返り、次の十年につなげていきます。それが、私のリカバリーストーリーです。