特集1
オーバードーズを検索する人々(217号)
○「こころの元気+」2025年3月号より
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筆者:宇田川健(コンボ代表理事)
私はコンボのホームページのアクセス解析の仕事をしています。
解析の手法によりさまざまな気づきがあります。
たとえば検索キーワードの変化です。
▼突然増えたもの
2024年の7月後半から8月に入り、それまではほとんど見られなかった、
『オーバードーズ+自傷』
『オーバードーズ+自殺』
『オーバードーズ+処方薬』
『オーバードーズ+中学生』
『オーバードーズ+高校生』
など『オーバードーズ(過量服薬)+○○』という検索キーワードでアクセスしてくる人が増えました。
ウェブ解析をしていると、それまで見えなかった世の中のことが浮かび上がってくるときがあるのです。
この検索キーワードの「オーバードーズ」に関する変化を見て私は、
「この人達に何か手を差し伸べられないものだろうか。どのような思いなんだろうか。大丈夫なんだろうか」と心配し、いったん手が止まります。
▼アクセスから
でも、そこからさらに解析をしてわかってくることもあります。
何時頃に、どのページにアクセスしているのかなどです。
その人達がアクセスした時間帯を見てみると、たとえば、毎日のように午後9時から午前1時にアクセスしている人がいました。
また別の人は、昼の12時にアクセスし、夜10時にまたアクセスしていました。
この人達はコンボのウェブサイトに何度かアクセスしています。
つまりオーバードーズを検索してコンボのホームページに来たとしても、その人はまだ生きているのだということがわかり、ホッとするのです。
▼見ているもの
そして「これが大切なのだ」と思うのは、オーバードーズで検索してくる人達が見ているページのタイトルです。
その人達の多くが見ているページのタイトルは以下の3つです。
①『生き方 未来の自分に絶望しています』
②『ベンゾ系薬剤で困っていること』
③『自傷行為とどう付き合うか』
▼そこから感じること
これを見て、私はとてつもない絶望感を感じるとともに、アクセスしてきた人は、スマホで検索することで助けがないか求め、何とか自分で解決しようとしているのではないかと、人間の生きる力を感じます。
その理由はページの滞在時間とページの内容です。
◆回答を求めて
①の『生き方 未来の自分に絶望しています』のページは
「おこまりですか? では他の人に聞いてみましょう!」という『こころの元気+』の連載記事の困りごとの1つでした。
この連載には、困りごとに対して、似た体験をした人からの回答や応援が書かれています。
「どうすればよいのだろう? もうどうしようもない」という困りごとに、その経験をした人達は、いくつかの答えを持っているのです。
そのページには、オーバードーズをしてしまうことについての回答がいくつか書かれていました。
その回答の1つには、
「私もオーバードーズをしていたが、日記を書くことで、その日のできごとを自分にとって小さなことでもよいので頭の中を絞って絞って思い浮かべて書き出すことで生きてきた」のように書かれていました。(注:この回答は賛助会員のみ全文が読める限定ページです)
◆納得
そして、オーバードーズを検索してくる人がたどりつく読者の投稿の別ページ、
③『自傷行為とどう付き合うか』にはこうありました。
「私は何かトラブルがあったときや、自分の気分が害されたとき、自分を傷つけることで納得し日々の生活を送っています」
(注:投稿は賛助会員のみ全文が読める限定ページです)
▼生き残るために
オーバードーズや自傷行為は、まわりからはとても驚かれ、やめてほしいと思われることです。
私だって、できればしないでほしいと思います。
ただオーバードーズを検索し、この記事にたどりついて読んでくれた人は、生き残るために行っているのだろうと私は思っています。
そして、生き延びてくれていることを確認するためのウェブ解析を続けるのです。