ちょっと知りたい! ハウジングファースト(211号)


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第114
ハウジングファースト(211号)

○「こころの元気+2024年9月号より
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筆者
熊倉陽介
東京大学医学部附属病院 精神神経科 助教


ハウジングファーストとは?

「まず安定した住まいを確保したうえで、本人のニーズに応じて支援を行う」という非常にシンプルな考え方です。

住まいを持つ権利

ハウジングファーストでは、人が安定した住まいを持つことの権利が重要視されています。
自分で管理できる空間の鍵を持つということは、その人の尊厳そのものです。

住まいを持つことは人権であり、人は誰も、安全な住まいで暮らす権利があると考えます。

住まいと支援の関係

ハウジングファーストでは、「住まいと支援の分離・独立」を重要視します。

住まいはけっして、精神科医療にかかることや酒や薬物を断つことの引き換えに提供されるものではありません。
医療をはじめとした支援サービスを受けることは、本人の意思にもとづいており、住まいを得るための条件ではありません。

アパートで暮らすことができるか、
金銭管理が可能か、
継続的に病院に通えるか
などを評価することからも距離を置きます。

あるがままを受け入れ、まず安定した住まいを提供します。

不必要に介入しない

ハウジングファーストでは、精神疾患や依存症から回復することを利用者に求めません。
個室の中で本人がどう過ごすかは、本人の自由であると考えます。

本人の日々の暮らしや自由な生き方に不必要に介入しないことによって、基本的な人権としての住まいを守ります。

安定した住まいと地域での暮らしで

ハウジングファーストは、精神科病院への長期入院をはじめとした施設化の問題と深く結びついています。

精神科病院や刑務所に入っては出ることをくり返している間に、帰る家や頼ることのできる人のつながりを失い自信を喪失してしまった人でさえも、
安定した住まいを得て、地域で暮らすことから得られる経験を重ねていくことで、実現したい生活を取り戻すことが十分にできます。

ハウジングファーストの実現

ハウジングファーストを実現しようとすることは、
人権がより重要視される時代に、皆が安心して地域で暮らせるための精神保健医療福祉のあり方を構想することでもあります。

 

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