特集1 当事者から伝え続けてきた言葉達(200号)


特集1
当事者からけてきた言葉達
(200号)
○「こころの元気+2023年10月号より
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筆者:宇田川健 コンボ代表理事)

 

私が初めて精神科にかかってから、もう30年経ちました。
何度も再発を経験して、紆余曲折ありました。

 

再発防止のメッセージ

受診のとき主治医に症状を言うたび、主治医から受けるのは、再発防止を考える医療やメッセージばかりでした。
まわりの人からは、いろいろなことを止められました。

そんな中では再発をするたびに「私はだめな人間なんだろうか」と自分のことを考えてしまいがちになりました。
同じことを他の当事者から聞くこともあり、自分でも、「自分がだめな人間じゃないか」とつらくなっていました。

 

チャレンジの責任

しかし、当事者になってからの私の人生は、自分で決めたチャレンジの連続でした。
リカバリーの道は決して平坦なものではありませんでした。その中で症状が悪くなって、小さな再発をしたり、長期間の大きな再発もしました。
再発のたびに、
「なんでリカバリーなんて言っていたのだろうか」と考えてしまいました。

しかし、「そんな過程もリカバリーの旅の1つなんじゃないか」と、考えられるときもきました。
「自分が決めたリカバリーの人生の責任は、自分でとらないといけない」と考えられるときがくるのです。

 

たくさんの当事者の言葉


『これまでは誰かが運転してくれる高級車の後部座席に座っていたけれど、これからは自分でポンコツ軽自動車のハンドルを握って、どこに行くのかは、自分で決められる」と
リカバリーについて78号の『こころの元気+』に書いてありました。
それを読んだとき、すごく納得しました。

今回200号を迎えた『こころの元気+』では、これまでずっと、たくさんの当事者の言葉を伝え、また当事者からの見え方、またリカバリーについて、いろいろな当事者がさまざま言葉で伝えてきました。

 

よかれと思って、まだ?

そういった当事者からのさまざまな発信を読むたび、自分で自分の人生を生きていく中では、まわりの人達の再発を防止しようという動きと、リカバリーの人生は相性がよくないのではないだろうか、と考えるようになりました。

特によかれと思って前もって再発を防止しようとしたり、よかれと思って私達の人生をガイドしようとしたりするような動きです。
「今はあせらないで、ゆっくりしていればいい」
「今はチャレンジなんかしないで、何ごともなく過ごすのがいい」
「私達にまかせて、今はのんびりいきましょう」
のようなメッセージは、私達のリカバリーの人生からは、かけ離れています。

そんなメッセージを受け続け、受け身の生活になり、のんびりしている間にその生活に慣れてしまい、長い時間が過ぎてしまいます。
そうしているうちに、自分の人生をコントロールすることを自ら放棄してしまう私達がいます。
かくいう私も、再発をするたびに自分のこれまでのすべてを否定する感情に支配されてしまいます。

 

おおごとばかりじゃない

自分のことを自分で考えて決める、人生や生き方なんておおごとじゃなくて、ただ目の前のことを自分で考えて、行動するということだけです。
私は当事者としては、そんなことばかりずっと言い張ってきたと思います。

 

当事者の時代がくる

私達当事者の時代は、そんな中にくるのだと思います。
また、きつつあるのではないかと思います。

そんな時代がくるためにコンボでは『こころの元気+』について、創刊第1号から「手にとってすぐに役に立つ」メンタルヘルスマガジンをめざしてきました。
長年かけて、当事者の時代に少し近づいてきたのかもしれないと思います。

そんな中では、「よかれと思って」とか「今は」とか「私達にまかせて」という再発を防止するメッセージは、時代から遅れているのではないかと思ってしまいます。
医療や福祉、それらに影響を受けた家族、また私をよく知る当事者からもそのメッセージを受けます。

そんな環境の中で、私はリカバリーの道、苦労を買って出るような生き方を「つらいなあ」と思いながらも、したいと思っています。

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