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第100回 当事者研究(196号)
筆者:伊藤知之(浦河べてるの家)
最近『こころの元気+』をお読みの皆さんの間でも「当事者研究」という言葉をあちこちで目や耳にする機会が多いかと思います
(当事者研究の連載については⇨コチラ)。
▼当事者研究とは
当事者研究とは、精神疾患をもっている人だけでなく、苦労やうまくいっていることの経験などを持つ「当事者」が、それを他の人に丸投げせず、自分自身や他の人とつながりながらそのメカニズムを研究するものです。
よく紹介されていますが、20年ほど前に精神科病棟で爆発をくり返していた私達の仲間に、当時、浦河赤十字病院のソーシャルワーカーをしていた向谷地生良(むかいやちいくよし)さんが困り果て、「一緒に研究しよう」と言ったことが始まりです。
最初は「自己研究」という名称でしたが、㈱医学書院から『べてるの家の「当事者研究」』という本が出版されてから「当事者研究」という言葉が一般的になりました。
▼研究のお題や方法
研究のお題の例は、爆発の研究、仲間とのコミュニケーションの研究、幻聴とのつきあいの研究、就労の研究、恋愛の研究などです。
当事者研究には、
1人でノートなどに書いて行う1人研究、
2人で対話をしつつ行う2人研究、
グループでワイワイと行うグループ研究
があります。
▼最近の当事者研究
最近では、当事者研究が私達の自助的な活動の領域を飛び出し、学問の分野として確立しつつあります。
東京大学と、向谷地生良さんが特任教授をつとめる北海道医療大学には、当事者研究のラボがあります。
ごく最近では、子ども、子育ての分野での当事者研究の導入が著しいです。
毎月Zoomで(インターネット上で)、子育てミーティング・里親ミーティングを行っています。
里親ミーティングには向谷地家も里親になっているので、向谷地生良さんの奥さんの悦子さんも毎回参加しています。
また、年1回「子ども・子育て当事者研究交流集会」をオンラインで開催しています。
毎回子どもや親御さんが当事者研究発表をするのですが、子どもの研究は、絵本や漫画・アニメのような柔軟な発想があり、おもしろいです。
これからも多様な分野に当事者研究が広がることを願います。
※当事者研究がコンボ発行の3冊の本になっています。
『レッツ! 当事者研究』1、2,3は、電話047-320-3870や下記の表紙をクリックしてご注文ください。